目標設定概論

これまで目標設定について、議論してきた内容をまとめてみました。

 

シークエンス大事

「目標をブレイクダウンしよう」ということを聞きます。

要するに全社の目標から組織の目標へ分解し、さらに個人の目標へ接続させること。

個人目標を実現したら、会社目標も実現できるようにすることです。

当然なのですが、具体的な How についての言及があまりなされません。

自分は、初手としてシークエンスから検討します。

順番です。

まず、全社の目標を設定し、その目標の背景・意義・戦略を経営陣が説明します。

その全社目標の説明の後に組織(チーム)単位の目標を設定し、同じく説明を繰り返します。

メンバーがしっかりと会社と組織の目標を理解した上で、自分自身の目標を考えられるようにするということです。

プロセスとして当然過ぎるルールなのですが、意外にも徹底していない会社が多い一方、勢いのあるスタートアップや目標をやり切る文化が醸成されているスタートアップは、徹底できています。

 

目標は本人が考え、上長が決める

全社・組織の目標を理解したら、まずは本人(被評価者)と上長(メイン評価者)で1on1を実施し、今期の目標について擦り合わせます。

A4・1枚で箇条書き程度の簡単なドキュメントを用意して、議事録にも活用します。

お互いに目標の仮説を話し合い、方向性を擦り合わせます。

 

その後、本人が会社・組織の目標を意識しながら、自身で目標設定を進めます。

必ずしも会社や組織の目標設定と明確に、わかりやすく接続されるわけではありませんが、会社が何を目指しているのか、を理解して目標設定することが大切です。

そして、自分自身で目標を考えることも大事です。

「なぜ?」を考えながら目標が言語化されてくることで、自分の仕事の意義やより上位で目指していることを理解できるようになったり、設定過程で実現方法まで考えることができます。

シンプルに言われたことを単に捌くよりも、オーナーシップをもって取り組める目標の方がやる気が高まります。

 

目標の水準は、等級と等級要件に基づく

目標の水準がテーマになると、ストレッチ目標やムーンショットといったキーワードが出てきますが、人事制度的に大事なポイントは「等級」です。

被評価者本人の等級を確認し、その等級に求められること(等級要件)に基づいて、目標の水準を決めていきます。

目標の内容は、会社・組織の目標と本人の業務内容(Job)に基づきますが、難易度や影響度といった目標の水準は「等級」に基づきます。

目標の目線が揃わないという声が出ますが、多くの場合で「等級」が意識されていません。

もちろん等級に基づけば、全員の目標がミリ単位で揃うわけではありませんが、意識しないよりは十分に目線合わせができた目標設定になります。

 

期初に設定し、期中に変更(修正・追加・削除)する

目標は、ときに流動的です。

6ヶ月や1年の評価期間の中で変わらないとは言えません。

上長や部門長の責任の元、目標は柔軟に変更できるようにしていきます。

硬直的な目標設定のルールだと、被評価者側も保守的になったり、評価者側も無理に目線を引き上げようとしたり、目標の範囲を広げようとしたり、ネガティブな摩擦が生じます。

「やりながら考え続ける」というスタンスが、スタートアップとは相性が良いと思います。

 

一方、期中に変更可能だからという理由で期初の目標設定を疎かにしてはいけません。

適当に目標設定してしまうと「自分の頭で考える」というプロセスが形骸化してしまいます。

徹底的に考え、仮説や作戦を練り、想定と違っている部分があれば臨機応変に対応していく、というのが目標変更の本質です。

 

無理に定量化しない(定性的な表現で目標を設定することは可)

定量化(数値化)することの目的は、振り返りや評価をしやすくすること。

10という水準に対して、今5であれば半分までは実現できたことを被評価者と評価者の間でズレなく認識することができます。

定量化することのメリットはある一方で、副作用もあります。

避けたいのは、目的や本質を見失ってしまうことと本人のやる気が下がってしまうこと。

無理に定量化してしまい、そもそもその数値を追っていた理由を見失ってしまうことが起きます。

定量目標を達成したけど、結局、目指していたところと違っていたということも現実的に起き得ます。

 

また、人の性格や仕事内容(職種)、人材レベル(等級)によっては数値によって気持ちがドライブされるケースもあれば、そうでないケースもあります。

意義やストーリーに触発されてやる気が上がるケースもあれば、数値を積み上げてゲーム的にクリアしていくことに快感を得るケースもあります。

パーソナライズして目標設定すべき、とは主張しませんが、何でもかんでも無理に定量化することは推奨しません。

定量的な目標設定を可として、振り返りや評価をできるよう評価尺度を設計することで対応します。

目標に対する達成度だけで制度設計してしまうと、なかなか納得を得られない問題が起きてしまうので注意が必要です。

 

過去に書いた目標設定の記事も被る部分はありますが、参考になると思うので、こちらに貼っておきます。

 

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