「S評価を2回取得したら昇格」とは、つまり高評価を2回取れば昇格できるということ。
「S評価を2回取得したら昇格の候補者に上げる」というパターンもあります。
評価制度と等級制度を連結させた制度です。
大企業では一般的な制度かもしれません。
自分は、こうしたルールをスタートアップで実践することはありません。
要するに、「相応しくない」と考えています。
新卒一括採用ではない
主要な理由は、スタートアップの組織づくりは新卒一括採用ではなく、中途採用だから。
新卒一括採用とは、入社する人材の質と時期(タイミング)が比較的似ており、同じような条件だということ。
新卒1年目からスタートして、同じような条件のもとで高評価を取得すれば相対的に他者よりも秀でていると解釈できるかもしれません。
もちろん配属先が違ったり、そもそもの実力が違うため、同じような条件と括るのは乱暴かもしれませんが、中途採用と比較すれば、条件は「同じ」に近いと言えるかもしれません。
中途採用では、これまでの経験が異なり、社会人3年目の方もいれば10年目の方もいます。
その実力に応じて、入社時に等級と年収が提示されますが、入ってみてからでないと正確な実力はわかりません。
「想像以上にデキル」ケースもあれば、「期待を下回る」ケースもあります。
前者の場合、評価結果を2回待たずとも早く昇格させて、高い期待のもとで活躍を促すことが合理的です。
評価期間が6ヶ月であれば、6ヶ月×2回の1年が昇格に必要な期間となりますが、中途採用ではこの期間が長い場合があります。
なので、評価結果を昇格に紐づけることはせず、人事評価と等級判定を切り分けることが大切だと思っています。
等級と評価は別もの
以前も書きましたが、大事なことなので何度もメッセージングします。
等級と評価は別ものです。
評価は過去の結果、等級は(過去の結果を踏まえて)未来への期待で判断します。
評価は、まぐれであっても成果を出せば高く評価します。
環境要因であったとしても、出した成果に対してピュアに評価します。
極論を言えば、サボっていようが、無能であろうが、目標を達成すれば人事評価では報われます。
一方、等級はそうではありません。
まぐれだったら、再現性がないものとして昇格することはありません。
どんなに評価が高かろうが、等級別に定義されている要件(等級要件)を再現性高く実行できると判定されなければ、等級が上がることはないのです。
よって、評価結果を使って昇格判定することは筋が通っていません。
また昇格判定に評価結果を使うと、「昇格させたいから、評価を高くしよう」というバイアスも働きます。
過去の評価会議で、悪気なくこういった発言をされるマネージャーを見てきました。
制度は人を悪者にしてしまうので、注意が必要です。
降格に評価結果を使うのは有り
矛盾したようなことを話すので混乱させてしまうかもしれません(謝罪)。
昇格に評価結果を連動させることはしませんが、降格に評価結果を連動させることはあります。
「S評価を2回取得したら昇格」は無しですが、「D評価を2回取得したら降格候補とする」は有りです。
(SABCDの5段階評価、Bを「標準評価」とする)
理由は、降格は当人と揉める可能性があり、きちんとエビデンスを残さないといけないからです。
なぜ、降格するのか、については評価も2回悪かったし、「且つ」等級要件に照らしても要件を満たしていない、と判定される場合に降格となります。
重要なのは「且つ」のところで、最低評価2回だけで降格させることはありません。
これは、昇格と同じ論理です。
ただし、降格の場合、相手に対して説明責任を果たすことを重視し、等級要件にプラスアルファの形で評価結果を活用します。
昇格よりも降格は丁寧かつ慎重に進めなければなりません。
そういう意味では、降格は評価結果を1つの判断材料として活用することは有りですし、評価者や被評価者にも制度の趣旨は伝わりやすいという経験があります。
もちろん、2回の低評価で降格しないことも多々ありますが、2回の低評価の期間が終わり、フィードバックする際、3回目も低評価だったら降格の可能性が高いことを伝えることはあります。
6ヶ月の評価期間であれば、1年半。
コミュニケーションを通じて、認識合わせするには十分な時間でしょう。
これぐらい、丁寧かつ慎重に進めるのが降格です。