人事制度として降格のルールがあったとしても、それだけでは現場では実行されません。
下記で示した通り、降格はカルチャーであるため、トップ・経営陣が必要に応じて決断した実績を積み重ねないと、組織で現実的に運用できるようにはなりません。
さらに降格を現実的に運用するためには、以下の工夫を制度に施すことも大事です。
降格アラート
等級判定を6ヶ月ごとに実施している場合、等級判定として降格を決断する6ヶ月前に、本人へ「降格の可能性」を伝えます。
これが「降格アラート」の仕組みです。
降格を回避するために必要なこと(降格回避要件)も言語化し、ドキュメントに残します。
本人の言い分も聞き取り、その意見も考慮します。
それから6ヶ月間、降格を見極めます。
日々の1on1やコミュニケーションの中で、意識的に情報を吸い上げ、記録し、本人と認識を擦り合わせます。
降格させることが目的ではなく、降格を回避できるようにマネジメントすることが大事です。
調整給
降格に伴い、降給が発生する場合、激変緩和措置として調整給を設けます。
調整する「水準」と「期間」を設計します。
一例として、「5%以上」の降給に対して「6ヶ月」間の調整給を支給します。
もし、5%以上の降給がなければ調整給は発動されません。
降格アラートが6ヶ月前に伝えられ、もし調整給が支給されると6ヶ月の補填期間となり、合計1年のプランとなります。
1年間は実質的に5%以上の降格はない、と約束することができる制度です。
評価者が、降給に意識を持っていかれ過ぎて降格の意思決定がブレることがないように制度面でサポートすることが大事です。
中間評価
意外にも中間評価は、降格を運用する仕組みとして役立ちます。
公式な評価・FBタイミングとして、ただし決定事項ではない評価・フィードバックとして降格に対する意見交換を行い、認識を擦り合わせます。
ここで認識がズレていれば、残りの2ヶ月でチェックすることを評価者から明確に伝えます。
このとき、評価者は感じるはずです。
「なぜ、自分にとって全くもって得(インセンティブ)がない降格を、ここまでして実行しなければいけないのか?」「もっと、事業に集中したい」「他の仕事に、より時間を使いたい」と。
しかし、カルチャーがそんな迷いを弱化させていくのです。
「でも、うち(自社)は、これをやらないといけないんだ」と。
このとき、経営陣や上長に見られているわけでもなく、指摘されているわけでもない中、経営陣の強い思いに沿った行動や判断が、現場のマネージャーで体現されることになります。
これがカルチャーです。
こうした3つの仕組み(降格アラート、調整給、中間評価)が降格を、まずは前に進めてくれます。
目的は、降格をバンバンやって、恐怖政治で組織運営することではありません。
そのような不誠実な組織は早晩廃れるし、事業も含めて世の中に存続する価値はありません。
企業が成長するために、周囲が納得する正しいことを組織として実行するまでです。
そもそも、降格の必要性を生んでしまう入社時の等級判定や入社後の昇格判定には重々気を付けなければいけない、というのは当然の話です。