組織サーベイでは、組織と個人の状態を定期的に診断し、異変を察知できるようにします。
▼参考
今回は、個人の異変を察知した際、個別に実施するフォローヒアリングについて考えます。
経験上、サーベイで個人の異変が出る場合、退職リスクが潜んでいます。
ここできちんと対応できることで、メンバーの退職を防ぐことに貢献できます。
一方、このフォローヒアリングが「雑」な対応になってしまうと、退職リスクを助長してしまいます。
フォローヒアリング 10 のTips
時系列に沿って整理していきましょう。
1. 対応する人を決める
HRマネージャーが対応するか、組織サーベイ担当者が対応するか、で相手の受け取り方が変わります。
会社の本気度を示す場合、HRマネージャーが対応します。
何度かフォローヒアリングを重ねており、問題の全体像が見えている場合は、組織サーベイ担当者でも構いません。
対応する人を決めたら、1on1(30分)を設定します。
2. 感謝からスタートする
1on1の冒頭で感謝を伝えます。組織サーベイで本音で回答してくれてありがとう、と。
愚痴っぽくなっても構わないので、そこから課題や改善のキッカケを一緒に探していくことも伝えます。
相手が少しでも話しやすい雰囲気を、ヒアリングする側がつくっていきます。
3. 情報共有の範囲を確認する
冒頭で感謝を伝えた後、組織サーベイの回答結果と1on1で話した内容について、今後の問題解決のために関係者に共有する可否を確認します。
情報共有できない、つまりヒアリング対象者(本人)とHRだけで問題解決することは難しいため、基本的に共有を依頼する形になります。
たいていの場合、「OK」となりますが、「No」となった場合は解決の手段が限られることを本人に伝えます。
4. 現状を確認する
フォローヒアリングは、組織サーベイを実施してから1-2週間ほど過ぎていることが多いです。
そのため、既に問題が解決していることもあれば、問題が深刻化していることもあります。
なので、組織サーベイの回答結果について「現状」を、改めてヒアリングします。
既に解決していれば、そこから特に話すことはないというわけではなく、解決できた糸口、そもそもの問題の原因、再発防止に向けた取り組み、など今後について話し合います。
5. 解決に向けた行動を話し合う
問題が継続している場合、1on1を通じて「ガス抜き」だけで終わらせてはいけません。
不満や愚痴を言って(聞いてもらって)スッキリした、ではフォローヒアリングの役目を果たせてはいません。
問題の原因を考え、解決に向けた具体的な行動(ネクストアクション)までアイデアを出すことが求められます。
誰を巻き込んで、どういう取り組みで解決していくか、その場で考える能力と心構えがないと、次の組織サーベイでも同じことが起きてしまいます。
6. 相手にフィードバックしてはいけない
組織サーベイの回答者の言い分に違和感を感じるケースがあります。
心の中で、つい「それは、あなたにも問題があるのでは?」と言ってしまうケースです。
しかし、この場では、これを口にしてはいけません。
あくまでもフォローヒアリングは、回答者の立場で問題解決しようとするスタンスは崩さず、全面的に相手の言い分・意向を受け取ります。
相手からすれば、組織サーベイに答えて、フォローヒアリングまで受けて「あなたが間違っているのでは?」と言われれば、二度と組織サーベイで本音を語ろうとはしなくなります。
回答者自身がフィードバックを受けるために、組織サーベイに答えているわけではありません。
相手へのフィードバックは、この場ではなく、別の場を通じて実施することが、フォローヒアリングの前提条件です。
7. 改めて情報共有の範囲を確認する
1on1で話した内容とネクストアクションを踏まえて、はじめに確認した情報共有範囲について、再度検討します。
- 解決しようとすると、やはり直属の上長にも共有が必要
- これは自部門だけでなく、他部門も巻き込んだ方が良さそう
- 直属上長というよりは、マネージャー全員に意識してもらいたい
こうした考えが出てくれば、ヒアリング対象者に背景・意図を伝え、共有範囲の変更を提案します。
あくまでもヒアリング対象者の意向優先なので「No」であれば、その気持ちを尊重します。
8. 感謝でクロージングする
冒頭だけでなく、クロージングの感謝も意識的に実践しましょう。
組織やマネジメントの問題を共有してくれてありがとう、と。
そして、HR側でボールを持ったことをお互いに認識して、1on1を終了します。
9. 関係者を集めて対策を検討する
面談後、なるべく早く関係者を招集し、対策を検討します。
スピードが大事です。
すぐにできることもあれば、実行するのに時間がかかることもあるかもしれません。
できれば、問題解決には小さなことかもしれませんが、すぐにできることを探します。話し合って、意識しましょう、で終わりでなく、何か1つでも行動ベースで実践できることがあれば、変化を感じることができます。
10. 本人に検討結果を伝える
関係者で話し合ったことを、ヒアリング対象者に伝えます。
フォローヒアリングしたHRもしくは情報共有でOKが出た関係者から伝えます。
できれば、フォローヒアリングから2-3日、遅くとも1週間以内では本人に結果を伝えることが望ましいです。
このプロセスは、HRやマネジメント、会社全体に対する信頼醸成の役目も担っています。
「聞いたけど何もやってくれない」では、退職を慰留することはできません。
「聞いたら何かやらなくちゃいけない」
組織サーベイについて議論すると「(組織サーベイで)聞いたら何かやらなくちゃいけない」という意見が出ます。
その通りです。
聞いて終わり、ではありません。組織をより良くしていこうと始めた取り組みが、「聞いたけど何もやってくれない」だと、逆に組織との信頼関係にひびを入れかねない取り組みに変わります。
組織サーベイは、諸刃の剣。
施策として走らせる場合、ここまでリソースを割いて対応することをおすすめします。
リソースを充てることができない中で、安易に施策を走らせるとしっぺ返しをくらうので注意したいところです。