シリーズBの資金調達は、採用を加速させ、組織を拡張させます。
そのタイミングで起きやすい組織課題をまとめました。
(1) マネージャー問題
マネージャーが不足します。また、マネージャー任命でうまくいかないことが起こります。
計画的に育成している時間は、成長スピードが早いスタートアップほどありません。マネージャーは育成ではなく、主に採用で充足させていきます。
また、元々マネージャーに配置していたケースで、マネージャーに向いていないと判断される場合、早めに配置転換することも検討が必要です。「良い悪い」ではなく、「得手不得手」と考えます。
配置転換は、やった方が良さそうと判断しても、必ず先送りされます。先送りすると問題が根深くなります。(こちらも参考に。「マネージャーへの違和感を先送りしてはいけない」)
(2) セクショナリズム
組織が拡張し、細分化が進むと、セクショナリズムが自然と発生します。「自然と」がポイントです。
各メンバーがミッションに当事者意識を持つほど、セクショナリズムが発生しやすくなります。
当人に「悪い」という意識はなく、進むところが厄介です。
経営チームに悪い情報が上がらなくなってくるため、意図的なコミュニケーション(1on1や定例Mtgなど)、組織サーベイを通じて、現場の情報(異変)を取りに行くようにします。
社内にいる人ほど気付きにくいため、社外(株主・アドバイザー等)を活用して、客観的・率直に振り返ることができるようにしておくことも有効です。
(3) トップダウン
組織は、(シリーズA後のときよりも) トップダウンで運営されます。
トップダウンは悪いことではありません。スピード勝負のスタートアップは、トップダウンで組織が自律的に動く状態を目指します。そのために仕組みとカルチャーフィットな採用で重要視されます。
このスピードについていくことは大変で、様々な意見(不満・不安)が出ます。こうした意見を無視せず、きちんと吸い上げて対応しながらも、スピードは緩めずに前進していきます。
このタイミングで経営チームが組成されていないと、ワンマンの中小企業に陥り、低成長を正当化させる慣性が働きます。
経営チームで、遠慮なく喧々諤々と議論されている風景を目指します。経営チームには、トップダウンによりアクセルをかけたり、逆にブレーキをかけてくれる存在が現れます。
(4) オンボーディング不足
大量の新入社員に対して、オンボーディングの質・量とも不足します。
オンボーディングの企画、開発、運営、振り返りを任せられる「担当者」がいないと改善が進みません。
「教育」「人材」の専門性より、課題設定と課題解決が得意であれば担える領域です。担当者を設置しましょう。
また経営チームやマネージャーもオンボーディングに主要な役割を担います。
リモート環境の昨今こそ、オンボーディングのタイミングで経営チームやマネージャーと一度でもコミュニケーションを取っておくと、その後の仕事のやりやすさが変わります。こうしたキッカケを仕組み化することは大切です。担当者や現場任せにしないようコミットします。
(5) 問題化するメンバー
マネージャーの手に負えないメンバーが現れます。1-2名のイメージです。
試用期間で、初期対応できるように事前に仕組みを整備しておきます。
そこで解消できない場合、労務のホットラインをつくっておくと安心です。思っている以上に重い案件になるので、専門家(労務に強い弁護士)に相談できる環境を早めにつくっておきます。
なお、問題化するメンバーは、たまたま自社のやり方に合わなかっただけで、その人が優秀でない、ということではありません。相性の問題です。
なので、早めに手を打つことがお互いにとって有益です。
(6) ハラスメント
これも人が増えると、自然と発生します。
初期対応がすべてです。初期対応に遅れないこと、会社としてポリシー/スタンスを発信すること。これで信頼関係をより強固にします。
難しいのは、課題に先んじて対策を講じても効果が薄いこと。教育研修など手を打っても一定範囲で出てきます。後手になることを後悔する時間は無くし、顕在化してからすぐに本格的な対策を打ちます。
外部窓口や外部専門家の活用も検討しましょう。
(7) カルチャーの揺らぎ
「昔は~」「前職は~」「一般的には~」「●●社(有名なスタートアップ)は~」の声が多くなり、経営チーム、特に経営者はストレスを感じやすくなります。
自分たちが大事にしたいことは何か、を改めて経営チームで話し合いましょう。
「カルチャーを言語化しましょう」とは言いません。おそらくバリューがあると思いますので、バリューに立ち返るイメージです。
バリュー以外にカルチャーを定義したりすると、バリューの存在感が薄れたり、判断基準が複雑になります。判断基準は、シンプルであるべきです。
様々な声が出ますが、迎合する必要はありません。自分たちがやりたいようにやるべきです。
ミッションは成長することです。カルチャーをつくることではありません。