自分の中で”最高”の本のタイトルです。
久しぶりに読み返し、線を引き、読書メモを取りました。
引用が30箇所になってしまい、大変でしたが、改めて学びの広さ・深さを感じます。
橘さんの本は、ほぼ読んできましたが、「なるほど」「だよなー」「そういうことか」「そんな研究があるんだ」と納得が続くので、初読の際に線を引きことを忘れてしまい、全体的に満足して、やっぱり良かったーという読後感で終わってしまっていた感があります。
読書メモまで残すと、じっくりと味わうことができました。
きれいごとでないお金の話
橘さんの本・メッセージに共感するのは、お金に対してきれいごとでなく、現実(リアル)を自らの経験と思考を通じて発信してくださっている点です。
例えば、このメッセージ。
(P73)もっとも効果的に幸福になる方法は、お金持ちになること
一定の閾値(独身なら年収800万円、家族なら世帯年収1500万円、世帯の金融資産なら1億円)を超えるまでは、どの金額でも、実際に感じる幸福度は理論的な幸福度を上回っている。年収800万円(独身)や世帯年収1500万円(家族)、あるいは預金通帳や証券会社の報告書の残高が1億円に向けて増えていくときは、幸福度や安心感は合理的な想定よりもずっと大きくなる。
一定に年収までは、わかりやすく幸福度は高まっていくわけで、素直にそこを目指すの意味をわかりやすく説明しています。
もちろん、お金のために何もかも犠牲にするなんていう話ではない、と文中で語られている通り、幸福を考える際の1つの視点と認識しています。
ちなみに、この「800万」との閾値について、過去に「900万」だったり、「1,100万」との研究論文を読んだことがあります。
お金で幸せは買えないみたいな話ではなく、大富豪になっても幸せになれないみたいな話でもなく、とてもリアルな話だと思います。
現実から逃げるスタンスでなく、かといって胡散臭い演技もなく、シンプルに相手を応援する姿勢に共感を覚えます。
(P161)使わないお金は、じつは「無意味」ではない。それは急速に変わりつつある未来への安心感をもたらしてくれるのだ。
未来が不確実になればなるほど、理論的には、「無意味」なお金はますます大きな意味を持つようになるのだ。
投資が一般化した中で、冷静にお金のもつ力を解説してくれている点も有難いです。
自分の経験からも「未来への安心感」は、まさにその通りで、Cash is King の本質を表していると思います。
個別株、インデックス投資、EFT、REIT、不動産投資、未上場株・エンジェル投資、FX、預金、等々。
たくさんの選択肢がある中、軸となる考え方がないと、このインフレ環境下においては納得した資産運用、ポートフォリオ設計はできません。
自分のポジションゆえ、偏ったポジショントークに聞こえないからこそ、心地よくなってしまっているリスクはありますが、そこは承知の上で取り入れているつもりです。
(P205)大きな人的資本が自尊心を生む
大きな人的資本をもつ者は、心理的な優位性があるので、他者の正当な反論を受け入れ、より正しい判断ができる。それに対して小さな人的資本しかもたない者は、なんとかして自分を守ろうとして、もともとの誤った主張に固執し、結果として厄災を招いてしまうのだ。
また、お金だけでなく、生き方についても(おそらく)自身の経験や一次情報をもとに語られており、指針を示してもらっている気がします。
自信とは何か。
専門性のような人的資本があるからこそ、自信が生まれ、自尊心となり、結果として他人に対しても優しくなれる。
人としての余裕というか、余白を、人的資本の文脈で整理している点は、自分がうまく言語化できていないテーマだったので、とても参考になりました。
独立のバイブル

橘さんの本をほぼ読んだと記憶しているが、特に独立時に読んだ『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』は、独立のバイブルになっています。
マイクロ法人と税金の話。
読んだ当時は、よくわかりませんでしたが、自分が独立してマイクロ法人を運営する過程で「そういうことか」と何度も読み返しました。
合理的に遊び心をもってHACKする姿勢が、自分の表にはあまり出さない本質に近い印象を持っています。
独立して12年が経ちますが、12年間、橘さんの本を教科書にして色々と実践してきました。
著者の応援によって、本当に助けられてきたと思います。
他にも、『新・臆病者のための株入門』でインデックス投資を学び、実践。
『幸福の「資本論」』で、金融資本・人的資本・社会資本の構造を知り、自分を客観視することができるようになりました。
アカデミックな研究成果を、リアルの世界に落とし込む技術に驚嘆する限りです。
世の中の様々な事象、新しく起きるブーム・トレンドについて、表面的な知識を点から線、線から面に広げて理解・解釈する技術を味わうことができます。
昔読んだ本を捨ててしまい、今手元にある本は買い戻したものですが、後悔しかありません。
読んだ当時、どこに共感し、アンダーラインを引き、メモを残していたのか。
過去の自分と対話する機会を自ら破棄してしまったことを取り戻すことは、もうできません。
新たに買い戻し、今(43歳)の自分と10年後にも対話できるような環境づくりをしていこうと考えています。
ダンバー数

『シンプルで合理的な人生設計』では、「組織」についても学ぶことができました。
ダンバー数です。
▼関連書籍
- ロビン・ダンバー (著) 『なぜ私たちは友だちをつくるのか: 進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係』
- トレイシー・カミレッリ、サマンサ・ロッキー、ロビン・ダンバー (著) 『「組織と人数」の絶対法則: 人間関係を支配する「ダンバー数」のすごい力』
(P253)ロビン・ダンバーはイギリスの進化人類学者で、「人間の認知的上限は150人」というダンバー数で知られる
顔と名前が一致する数が、150人というわけです。
そして、組織論への展開は以下の通り。
(P253)この人数を超えると、顔を見ても名前がわからない(名前を聞いても顔が思い浮かばない)相手が増えて、集団としての一体感をつくるのが難しくなる。そのため企業は、社員数がこのマジックナンバーを超えると事業部制に移行する
スタートアップを経営している方には、知っておいてもらいたい数字です。
1000人の組織が1つの組織体として機能しているわけではありません。
大きな組織に入ると、そんなことも考えず、自分たちの縄張りの中で仕事を進めているわけですが、小さな組織(スタートアップやベンチャー企業のような中小企業)を見ていると、この「150」という数字に納得してしまいます。
100人の壁は、感覚的な数字であり、商業的なシンボルです。
経営者が人への興味が強く、いわゆるマイクロマネージで組織を拡張していくと、だいたい120や130ぐらいでブレーキがかかってきます。
なかなか150を超えることができず、組織を変えたり、制度を変えたり、役職を変えたり、役員を変えたり、と試行錯誤していきます。
昔は顔と名前が一致し、それぞれが何を考えているのかが手に取るようにわかっていたところから、顔と名前が一致しなくなってくるフェーズです。
しかし、以前のように「自分はできる」という自信が筋の悪い提案に繋がり、組織の停滞を引き起こします。
ここで第2の経営者が150人をマネジメントできるか。
その人がいるか、権限移譲されずともオーナーシップをもって、報連相を怠らずに影の経営者として振舞えるか、が更なる成長に求められます。
逆をいえば、150人までは一人でもやっていけるといえます。
お金から自尊心、そして組織論。
知的好奇心を揺らがせるテーマ設計です。