報酬制度の論点(選択肢付き)

等級制度に続き、報酬制度でも論点と選択肢を整理。

 

(1) 報酬レンジの形

  • 階差型(レンジが離れている)
  • 接続型(レンジがくっついている)
  • 重複型(レンジが重なっている)

補足)中途採用中心のスタートアップでは、重複型レンジを有効活用することが大事。

 

(2) 報酬レンジの種類

  • 全社員共通
  • 職種別
  • 役職別

補足)基本は、人材の希少性を反映した職種別の報酬レンジとする。

 

(3) 定期昇給の有無

  • 定期昇給有り
  • 定期昇給無し

補足)例えば、6ヶ月毎に昇給の機会を設定するか否か。

 

(4) 昇給のロジック

  • 人事制度(等級制度と評価制度)に連動
  • 会社の業績や成果に連動(成果連動昇給)
  • 個別に対応(鉛筆をなめる)

補足)等級制度と評価制度に連動させるのがスタンダードだが、人事制度の運用負担を下げるために成果連動昇給を採用するケース有り。

 

(5) 人事制度に連動させた場合の昇給の種類

  • 評価昇給
  • 昇格昇給
  • 特別昇給(特別調整)

補足)人事評価の結果に応じた評価昇給、等級が上がった場合の昇格昇給、人事評価や昇格に関係なく特別に調整するための特別昇給(特別調整)。

 

(6) 昇給の方法

  • 積み上げ方式
  • 洗い替え方式

補足)多くのケースでは積み上げ方式で昇給するが、インセンティブ機能を強化する場合に洗い替え方式を採用するケースも有り。

 

(7) 評価昇給のテーブル設計

  • 昇給率で設計(例:A評価の場合、3%昇給する)
  • 昇給額で設計(例:A評価の場合、3万円昇給する)

補足)昇給に関する統計は基本的に「率」で表示されるため、世間との比較の観点では「率」が好ましいが、直感的に昇給額がわからないのは難義。

 

(8) 昇格昇給のガイドライン

  • ガイドライン無し(自由に昇給率 or 昇給額を設定する)
  • ガイドライン有り(例えば、昇給の上限を「5%」や「10%」と設定する)

補足)ガイドラインがないことで運用の難易度は上がる一方、ガイドラインを作ると盲目的のその上限の昇給額を適用するケースも増える。

 

(9) 特別昇給のガイドライン

  • ガイドライン無し
  • ガイドライン有り

補足)昇給率や昇給額のガイドラインではなく、「どういう場合に調整するか?」のガイドラインを設定する。社内観点で「他者との比較」、社外観点で「市場価値との比較(採用市場との比較)」を考慮して、「改めて、今オファーするなら年収水準は?」と問う。

 

(10) インセンティブ

  • 賞与
  • 営業インセンティブ
  • ストックオプション(SO)

補足)スタートアップでは、「利益が出ていない&月給が下がってしまう」の2点から賞与を導入していないケースが多く、インセンティブは「SO」を採用するケースが多い。営業インセンティブも製品・サービスが確立しておらず、運用が難しく導入は推奨していない。(チームワークを阻害する点も考慮)

 

(11) 役職者へのアドオン報酬

  • 役職手当
  • インセンティブで、成果に応じて優遇
  • なし(役職者としての成果・貢献を見て、基本給の昇給で対応する)

補足)役職手当は、役職者の固定化(硬直化)は招く懸念があるため、避けている。賞与がない場合、SOで優遇されたり、「なし」として「役職者としての成果・貢献を見て、基本給の昇給で対応する」ことを推奨。

 

(12) 調整給の水準

  • 降給した場合、降給部分を100%を保障する
  • 降給した場合、一定の水準以上を保障する(例:5%以上の降給部分を保障する)
  • 調整給は無し(保障しない)

補足)人事評価といった降給までのプロセスが制度として運用できていたとしてもリスクヘッジとして調整給を導入するのは有り。そもそも対象者は少ないとの前提。

 

(13) 調整給の期間

  • 6ヶ月
  • 12ヶ月(1年)
  • 1年半以上

補足)管理の観点で6ヶ月を推奨。12ヶ月以上の調整給期間を設けると取扱いでミスが生じることもある。

 

(14) 処遇条件通知書

  • 配布しない
  • 配布する
  • 配布して、上長が面談で説明する

補足)運用コストを嵩むが、昇格昇給や特別昇給などのイレギュラーケースでは面談での口頭説明と質疑を行った方が理解と納得感・満足感は高まる。

 

(15) 報酬改定の提案者と報酬情報の共有範囲

  • 直属の上長が提案する
  • 一定の階層以上の上長が提案する(直属の上長でない場合有り)
  • 経営陣が提案する

補足)評価昇給はテーブルで昇給率や昇給額が決まっているため、報酬改定の提案の必要性は無いが、昇格昇給や特別調整では社内・社外の観点を踏まえて報酬を提案する必要がある。その役割を誰が担うか。直属の上長が担う場合、直属の上長に対象者の報酬情報を共有することになる。上長が変わる可能性があったり、上長よりもメンバーの年収水準が高いなど報酬情報の共有にためらう場合、直属の上長とはいかないケースはある。

 

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