等級制度は、評価制度に比べて抽象度が高いゆえ、認識ズレが起きがち。
特に等級を上げる「昇格」のルールについて様々な質問が出てきます。
質問を受けて回答するのと、質問を受ける前に伝えておくのでは、相手の印象がガラッと変わります。
事前に伝えておけば設計の意図になりますが、事後の回答だと相手の意見を否定して説得しようと受け取られてしまい、対立構造を引き起こすリスクが生じます。
事前に伝えておくことに越したことはありません。
現場から質問を受ける前に、細かい点も含めてルールを言語化しておくことをおすすめします。
卒業要件と入学要件
例えば、3等級の人材が4等級に昇格する場合、
- 3等級の等級定義を満たしたら昇格する?
- 4等級の等級定義を満たしたら昇格する?
のどちら?と質問を受けます。
前者は「卒業要件」、後者は「入学要件」と呼びます。
自分は後者で設計します。
つまり、上位等級の人材として求められる要件を満たしている場合に昇格する、ということ。
暗黙的に入学要件で考えていたとしても、言語化されていないとこういった質問が飛んできます。
メリット・デメリットの観点というよりは、キメの問題です。
入学要件の考え方を昇格ルールとして明記しておきましょう。
ちなみに「上位等級の人材として求められる要件を満たしている場合に昇格する」の「満たしている」という表現も、厳密に意味を定義しておくと意思疎通がしやすくなります。
自分は「再現性があること、敢えて数値化すると8割は再現できること」と定義します。
等級定義に記載されている内容を8割ぐらいの確率で再現できるようであれば「満たしている」と判断してください、と評価者へガイドラインを示します。
「再現性」と「8割」がキーワードですね。
等級定義は、すべて満たすことを求める
等級定義を設計する際、定義の項目を複数に分けたり、1つの項目に複数の定義を設計したりします。
例えば、等級定義を「発揮能力」「バリュー体現」「リーダーシップ」の3つの項目で定義したり、「発揮能力」の中に「自律的に課題を設定できること」と「他チームと協働できること」といった複数の定義を設定したりすることを意味します。
この複数の定義に対して質問が出ます。
- すべてを満たさないと昇格できない?
これも認識ズレを起こさないために言語化が必要です。
自分の意見は「Yes、すべてを満たしたら昇格します」。
ときに「すべてを満たすというのは、ハードルが高いのでは?弱みがあると昇格できないように感じる。強みを伸ばして成長していく人が評価されないのでは?」と意見を頂きます。
考え方には賛成です。
ただし、等級定義は本質的に必要な要素を選び抜いた内容になっており、どれ一つ弱みとして見逃すことはできないものと考えています。
「必要かもしれない」というニュアンスで等級定義を設計することはありません。
なので、すべてを求めます。
飛び級はない
これまで「飛び級をさせたい」というニーズは、ほぼありません。
(飛び級 is 1つ上の等級ではなく2つ上の等級に昇格させること)
なので「飛び級はない」という昇格ルールで問題ないです。
そもそも飛び級が必要ということは入社時の等級判定が明らかに違っている、もしくは等級定義の連続性が適切でないという別の問題がありそうです。
「新卒採用 × 等級数が多い」場合は飛び級のニーズが発生するかもしれませんが、スタートアップには関係ありません。
一言、飛び級はない、と伝えておけば問題なしです。
昇格は、報酬決定や目標設定に影響を与える大切な人事イベントであり、慎重な判断が求められます。