等級制度・評価制度・報酬制度で構成される人事制度。
個人の報酬を決定し、報酬リソースの最適化を実現することが主な目的。
もう1つの目的は、成長の指針に活用すること。
設計も大変ですが、運用はもっと大変です。
スタートアップで人事制度の導入に悩んでいる方に向けて、人事制度の簡易版、つまり軽量級の人事制度について説明します。
評価制度は導入しない。6ヶ月間の目標設定も人事評価も実施しない
人事制度で最も負担が大きいのは、評価制度です。
スタートアップで一般的な評価制度は、目標を設定して達成度を評価する成果評価と、自社のバリューを反映した評価基準を使って定性的に評価する行動評価の2つ。
6ヶ月の評価期間であれば、年2回の目標設定・人事評価のオペレーションが走ります。
基本的に、全社員が対象となるこの評価制度を回すには、人事担当が必要です。
スケジュールを決めて、現場の方々に目標を設定してもらったり、評価を行ってもらったり。
それ以外にも評価面談、評価会議、リマインド、評価結果の集計・分析、報酬シミュレーションなど連続的なタスクによって繁忙期が生まれます。
時間コストをかけてでも、それに見合った効果は期待できる一方で、事業に集中したいスタートアップにとっては負担が大きいのも事実です。
そのような課題意識がある場合、評価制度を導入しない人事制度もあります。
評価制度は、組織規模がもう少し大きくなってから、と先送りも有りです。
人事制度として目標設定や人事評価・フィードバックはしない、と決める話であり、人事制度とは関係なく、目標設定を非公式にやったり、日ごろの働きぶりや成果について判断(評価)し、フィードバックすることはOKです。
実際に評価制度を導入しない場合、運用をリードする人事担当の立場からすると、とてつもなく負担が下がります。
この後に説明する等級制度や報酬制度の運用があるので、負担ゼロではありませんが、対象者や検討事項が限られているため、3本柱の1つがないことで単純に3分の1の負担軽減というわけではなく、50%もしくはそれ以上の負担軽減になります。
評価制度のない人事制度を運用することで、いかに評価制度単体に負担(重さ)があるかを理解できるようになります。
個人的には、評価制度がない人事制度は「有り」だと考えています。
もちろん運用の難しさはありますが、それ以上の負担軽減を十分に得ることができます。
評価制度がない代わりに等級制度でヒトを総合的に評価する
人事制度の主な目的は報酬リソースの最適分配であり、個人の報酬決定です。
評価制度で個人の評価を決めて(例えばS評価やA評価)、その評価に見合った昇給を行うことが一般的な人事制度です。
しかし、評価制度がない場合、どうするか。
まず、等級制度の等級要件を通じて個人を評価し、その方に求める期待を判断します。
その結果が、個人の等級に現れます。
等級には、報酬制度上の報酬レンジが紐づき、各等級には報酬の上限と下限値が設定されます。
例えば、自律的に課題設定をして業務を遂行できる人材を3等級とした場合、この方の報酬水準を下限400万、上限600万と設定するようなイメージです。
3等級の方の報酬は、原則、この400-600万の間に位置づきます。
この等級判定(等級制度)は、人事評価(評価制度)とまったく異なる制度です。
人事評価は、過去6ヶ月間の成果や行動を評価対象とします。
偶然であっても、環境要因であっても、チームメンバーの協力であっても、設定された目標に対して成果を残せれば高評価となります。
つまり、再現性は評価の対象ではなく、成果の有無が見られます。
一方、等級判定は、基準となる等級要件に照らして今後も同じような期待を果たせるか、つまり将来に向けての再現性を判定(評価)することになります。
偶然の成果・行動の積み重ねであれば、それは等級判定にプラスの材料とはなり得ません。
話がやや逸れましたが、評価制度がなくても、等級制度上の等級判定のみを運用し、個人を判定(評価)することは可能です。
なお、評価制度は6ヶ月おきに全社員を対象に、目標設定と人事評価を行うことになりますが、等級判定は6ヶ月おきに判定タイミングを設置したとしても、全社員を事細かく評価することは実際にところありません。
等級制度を既に運用している会社であれば想像できると思いますが、等級の変更(等級が上がる場合は昇格、下がる場合は降格)は、6ヶ月おきに頻繁に起きるものではありません。
等級制度の設計次第ではありますが、昇格するには2-3年程度かかることは普通です。
とした場合、2-3年に一度の頻度で等級を判定すれば、制度自体は運用できますし、本人と評価者の間でも認識が大きくズレることはありません。
等級要件は、設定される目標や行動評価基準に比べて抽象度が高いため、運用の難易度も高くなりますが、等級判定の負担は、目標設定・人事評価に比べて圧倒的に低くなります。
まずは等級制度のみを導入することも一案かと思います。
で、報酬制度はどうするの?個人の報酬はどうやって決めるの?
最終的に個人の報酬はどのように決めるのか。
ここが論点となります。
結論、経営もしくは上長の判断において、労働市場に合わせて決めることになります。
等級が決まれば、等級に応じた報酬レンジ(報酬の上限値と下限値)は決まります。
その中で、相手の報酬水準を決める流れです。
入社時は、社内における他メンバーとのバランスを考慮して比較して決めます。
本人の希望年収や現職・前職での年収水準も影響を及ぼすかもしれません。
入社後は、新たに入社する方々の報酬水準や労働市場を踏まえて必要に応じて調整をかけます。
もし、昇格する場合、改めてこの方にオファーするなら、いくらが妥当か、を経営と上長で議論しましょう。
再オファーです。
その水準が、現年収よりも100万や200万高ければ、その水準に昇給させます。
定性的な判断になりますが、同じ方法で決定すれば、大きく水準がズレる・ぶれることはありません。
デジタルに決めきれない気持ち悪さを感じるかもしれませんが、一定数を捌けば慣れも出てきます。
新規採用の場面では同じことをやっていますので、自信をもって運用しても問題ないと考えています。