兼務するなら、「やり切る」ことを宣言しなければならない

過去、兼務について書いた記事についてコメントをいただくことが多くあります。

わりに兼務が問題化していることに気づきました。

 

 

兼務は、問題を解決はしない

スタートアップは、常にリソース不足。

不足するリソースを集中させて、一点突破で先を開拓していくことが重要です。

しかし、やりたいことをやりたいようにやってしまうケースも。

組織図を運用している場合、「兼務」を魔法のカードのように使って解決した気になってしまうことがあります。

兼務を決めたタイミングは、気持ち的に問題が解決されていますが、何も解決されたことはなく、その後、苦しい局面がやってきます。

 

(立場上、)兼務は避けるべきとポジションを取りますが、とはいえ、兼務は現実的に発生します。

この矛盾を受け入れて組織設計・配置を行っていくことが大切です。

 

ただ、兼務で問題解決した気にせず、できる範囲での工夫を日々考え、実践しています。

 

配下のメンバーの「数」と「質」を確認する

兼務は、多様性に満ちています。

兼務するマネージャーの能力や経験、マインド、そして配下のメンバーが変数として影響します。

もちろんそれ以外のフェーズや環境、役割・権限・責任なども影響しますが、インパクトの大きい配下のメンバーの「数」と「質」を確認します。

 

兼務した結果、マネージャーの配下のメンバー数が何人になっているでしょうか。

6人であれば、何とかできそうかもしれませんが、20人であれば難しいかもしれません。

兼務する際、このメンバー数の議論が(意外にも)始まりません。

「そうするしかないよね」といった空気に流されます。

 

このメンバー数、別の言葉でいえばスパンオブコントロールですが、この数字はしっかりと把握しましょう。

このメンバーの数に対して、目標設定、1on1、メンタルケア、人事評価、フィードバック、雑談を含んだコミュニケーションを取る「時間」と「気持ちの余裕」があるか。

ないと判断されたら、その兼務の先行きは怪しいでしょう。

 

また、「数」だけでなく「質」も重要です。

メンバーの人材レベル(等級)が高く、自律的に業務遂行や目標設定・振り返りができるのであれば、兼務するマネージャーの負担は下がるかもしれません。

しかし、ゼロにはなりません。

ゼロは、放置ということです。

 

得てして兼務で失敗するケースは、メンバーの等級が3等級相当で自分で業務を進めることは可能である一方、期待以上のパフォーマンスは見込めず、無難に目標未達ぐらいで終わっていきます。

兼務なのでしょうがないよね、と言わざるをえない状況です。

4対6、もしくは3対7で負け戦になると臨んだ試合は、ほぼ負けます。

これが「人事」です。

 

兼務するなら、「やり切る」ことを宣言する

兼務は、都合の良い言い訳になります。

「兼務だから、、、」と言えば、一定のやさしさのある方々であれば、「しょうがないよね」という雰囲気を醸し出してくれます。

 

しかし、配下のメンバーは入社時に「兼務のマネージャーの元で仕事をしてください。目標未達でもしょうがないよね、という空気があるので安心してください」という契約をしているわけではありません。

後だしじゃんけんで兼務の配下に入ると、信頼関係が崩れます。

 

兼務問題の本質を考えると、「やろうとしていること」を、結局は実現できないということです。

要するに、目標達成できないことを頑張ってやろうとしている。

負け試合に勤しみ、負けるということです。

だからやめた方がいい。

「やってみないと分からない」というのは、兼務がない状態で言える発言であり、兼務でこの発言をするのは、経営やスタートアップの難しさを理解していないのかもしれません。

 

なので、現実的に兼務せざるを得ない状況に遭遇したら、「やり切る」ことをコミュニケーションして、「兼務だから、しょうがない」という甘えを排除することが必要です。

いくら効率化しても、残業が発生するかもしれません。

自分の時間が取れないかもしれません。

家族の時間を(一時的に)犠牲にするかもしれません。

チームの空気が悪くなるかもしれません。

人が辞めていくかもしれません。

しかし、成果を残すことに挑戦することを「やり切る」と宣言してもらいます。

 

この強い気持ちがない限り、兼務しても「やろうとしていること」を実現することは難しく、中途半端なゾンビプロジェクト、ゾンビ事業になってしまいます。

 

マネージャーが疲弊し、長期休暇が取れなかったり、ガバナンスが弱くなり、コンプライアンス不備に陥るかもしれません。

事前に対策を講じながらも、実際に問題が起きるかもしれません。

しかし、その覚悟を持ってでも「やり切る」というコミュニケーションが取れるかどうか。

 

Yesとは言い切れないのであれば、採用活動にシフトします。

これは「できない」ことの理由を述べた結果ではありません。

最適解を検討した結果です。

意思決定に根性を取り繕うのではなく、実行に根性が根付かせないといけません。

兼務するなら、やり切るまでです。

 

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