人事制度の運用でつまづくケースで共通していることがあります。
等級判定シートがないということ。
等級判定について、評価者がドキュメンテーションしていないという意味です。
一方、評価シートはあります。
6ヶ月ごとに成果や行動を評価する簡易的なシートだったりしますが、ときにこの評価シートに等級判定の内容が一緒に記載されている場合もあります。
等級判定と人事評価は別もの
等級判定(等級制度)と人事評価(評価制度)は、異なる制度です。
分かれているには意味・理由があります。
以下の記事に詳しく書きましたので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
別ものの制度を同じ枠組みで運用すると問題が起きます。
例えば、等級判定では自己評価を推奨していませんが、評価シート上で等級判定してしまうと自然と自己評価を実施してしまいます。
人事評価よりも一層抽象度の高い等級判定の基準では、自己評価と評価者の評価がズレがちで、摩擦が起きやすい。
そして、本人は報酬を上げたいがために自己評価を高めに提案しますが、等級はそうそう上がる(昇格する)わけではないので、常に評価者からは抑える動きになります。
このプロセスを100人の会社でやると、評価者(マネージャー)の精神的な疲労が大きく、毎期毎期蓄積されていきます。
そして、現場の被評価者側も話をさせられているだけで全然昇格しない、と人事制度の不満になっていきます。
これは構造上の問題です。
等級判定における自己評価をやめてしまえば、解決できる問題がたくさんあります。
口頭の擦り合わせだけで等級判定を進めると、どうなるか?
等級判定シートがない場合、評価シート上でログを残す場合もありますが、その評価シート上には等級要件は記載されていません。
つまり、「何となく」といった等級に対する感覚値で判断がなされていきます。
口頭の擦り合わせでも同じです。
Aさんについて、はじめは等級要件を見ながら「あーだ、こーだ」話していても、いつの間にかそれぞれの感覚値で議論が進んでいきます。
経営者の発言力が強いケースだと、その方の意見がモノゴトが決まっていきます。
最悪のケースは、経営者の考え方と等級要件にズレが起きているケース。
こうなると、人事制度が形骸化していきます。
等級判定は、等級要件に基づいて行う。
ポイントは、ただこれだけです。
抽象度が高い部分を擦り合わせ、意見の違いを調整していき、目線を揃えていきます。
その議事録は必ず残し、等級要件の微細な更新に役立てることが大切です。
また、議事録を取ると、何を言っているのかわからない発言も、まま見受けられるようになるので議事録情報を使って議論の質を上げていくことも可能です。
等級判定シートでわかること
スタートアップは「職種」の概念が人事制度に反映させるため、専門性の高い職種について等級判定の結果が妥当か否かは、当該職種でないとわかりにくいのは事実です。
よって、信頼できる評価者を配置することが肝です。
ただし、ノールックで昇格を認めることも不安であることは事実。
そこで、等級判定シートに記載される昇格理由をきちんと読み込み、意思決定をサポートできるようにします。
技術面の話はわかりませんが、バリュー体現やリーダーシップ、人材育成などの観点については、評価者がどれだけ相手(被評価者)のことを見ているかがわかります。
この目線の高さを感じ取り、評価者がどれだけ真摯に等級判定に向き合っているか、は経営・人事で確認できます。
もし、この観点で不安があるようであればフィードバックし、コメント修正を求めたり、ときには昇格見送りも選択肢に入ってきます。
このプロセスをお互いの感覚だけで実行すると、それこそ抽象度が倍々に高まっていき、感情論のぶつかりになるので注意が必要です。
等級判定は、メンバー自身にとって語り継がれる大きな人事イベントです。
人事が評価者に「考える枠組み」を提供し、継続的な品質向上を目指せるよう、制度設計することが大事になってきます。