「人と比べてはいけない」といった話は、子育ての中でもよく聞く話ですが、「なぜ?」と言われると言語化が難しいと思いました。
たまたま読んでいた本が参考になったのと、人事領域にも活かせそうだったので、そのメモを。
結果を生まれ持った能力と関連づけてしまう
文章を引用させていただきます。
子どもは他の子と比べられると、結果を生まれ持った能力と関連づけて考えてしまいがちです。なぜなら、良い勉強法で努力したとしても、勝てるとは限らないからです。
お子さんが必死に努力したとしても、相手がそれ以上に努力していたら負けることもあります。逆に、お子さんが大した努力をしていなくても、相手がサボったりミスしたりしたら勝つこともあります。つまり、努力と結果は必ずしもリンクしないのです。
これは勉強法についても同じです。良い方法を採り入れても、勝てるとは限りません。
だから、人と比べて評価してしまうと良い結果・悪い結果の原因は努力や勉強法ではなく、持って生まれた能力にあると考えるようになってしまうのです。「頑張ってもどうせできないんだ」とか、「オレは頭がいいから成績がいいんだ」とか。そして、努力や勉強法を軽視するようになっていきます。
『「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法』 伸学会 菊池洋匡、秦一生 P225-226
「能力」のことを「才能」と呼んだりもするかもしれませんが、努力などのプロセス以外に結果の原因を求めてしまうがゆえ、プロセスの重要性を理解できなくなってしまうと受け取りました。
この書籍でも随所に語られていますが、プロセスとしての行動に着目し、ホメることは、自信となって、結果として「再現性」につながるということです。
ここが大事なポイントです。
「結果でなくプロセス」は、「単発でなく継続」をもたらすのです。
「他と比べること」は、この考え方に相反することなんだと理解しました。
人事評価の視点で考えてみる(相対評価の話)
読んでいて思ったのは、相対評価につながる話だな、ということ。
自分は、スタートアップでの制度設計は、必ず「相対評価」ではなく、「絶対評価」です。
相対評価は、人によって解釈はズレますが、「評価」ではなく、報酬分配の手法であり、相対分布と表現することが適切だとも考えています。
参考:相対評価・絶対評価とは?
評価者の説明責任が、相対評価では果たせないという理由から、被評価者の納得感醸成には不向きであると考えています。
相対評価(相対分布)は、勝者がいれば敗者もいる前提です。
しかし、スタートアップは全員が勝者になってこそ、急成長を実現できるはず。
そういう意味でも、スタートアップには相対評価ではなく、絶対評価が似合っていると思っています。
ただ、今回の話を受けて「再現性」の観点でも相対評価はポジティブでないのかも、と考えるとより一層、絶対評価への気持ちが強まりました。
もちろん、プロコンはありますし、経営方針によって相対評価を採らずにはいられない状況もあるかと思いますが、私自身のポリシーは強固に「絶対評価」です。
相対評価は、究極の成果主義
考えてみると、相対評価は自分がどんなに努力しようが周囲がもっと良ければ評価されないという観点で、究極の成果主義なんだと理解しました。
ビジネス・競争って、「そんなもんでしょ」と言われてしまうかもしれませんが、それは役割分担なのでは、という意見です。
経営陣は、まさに相対評価。
市場・環境の不確実性の中で、究極の成果主義を乗り越えなければいけません。
その責任に対する権限と処遇があります。
一方、非経営陣は、そうではないのかなと。
なにも無理ゲーにつっこませて、あくせくさせるよりも主体的にゲーム運びできるように制度を整えてあげる方が、結果につながると考えています。
このあたりも経営者の考え方次第なのでしょうが。
そういう意味でも、人事と経営の距離が密接であることを、改めて考える機会になりました。