借り上げ社宅について調べてみました。
前職で、大企業向けにコンサルティングをしていた際、福利厚生の1つとして新たに設計したり、制度改定したことがありました。
スタートアップでは、まだ関与したことはないですが、今後の可能性を見据えて考えました。
68.3% が制度あり
まず『労政時報』で数字をチェック。
調査対象と集計対象の定義は以下。
▼調査対象
全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3731社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上。一部「資本金5億円以上または従業員500人以上」を含む)1727社の合計5458社。
▼集計対象
回答のあった341社
「社宅管理の最新実態_労政時報4021号_P18_2021/9/24発行」からの引用です。
重要な数字だけピックアップしました。
- 借り上げ社宅制度がある会社は、規模計(341社)で68.3%
- 1000人以上(105社)で83.8%。300~999人(122社)で77%、300人未満(114社)で44.7%
- 入居を転勤者に限定している会社は、規模計(231社)で46.3%、転勤者以外も入居可能は51.1%
- 入居期限は「10年まで」が、転勤者(102社)で30.4%、転勤者以外(59社)でも32.2%と最も多い(次は「5年まで」がどちらも約15%)
- 家賃上限の目安として、首都圏の平均額は、一般社員の独身者・単身赴任者で8万4332円、2人家族で11万9450円、4人家族で12万8848円
- 使用料の決め方は、規模計(228社)で「負担割合で決定」が46.5%、次いで「金額で決定」が34.6%
- 賃借料に対する社員負担の割合は、平均25~28%
- 物件の決定は、規模計(219社)で「社員が物件を選ぶ」が78.1%、「会社が物件を指定する」が37%
自分なりに要約すると「大企業の中でも1000人以上の会社の8割で借り上げ社宅を運用しており、転勤以外でも約5割の方が10年間ぐらい利用できて、一定上限のもと家賃の自己負担は25%、会社が残りの75%を負担してくれる」といったところしょうか。
首都圏で4人家族の家賃上限が13万弱って厳しいかも、と個人的には思いましたが。
実家暮らし・持ち家の人にとっては不公平?
上記の数字を見て感じることは、借り上げ社宅の家賃を会社が負担することで、実家暮らし・持ち家の人が対象外となってしまい、不公平なのでは?ということです。
福利厚生としては魅力的である一方、この不公平には何とか対応したいところ。
借り上げ社宅を調べて、このエントリについて紙に書いて整理しながら思いましたが、いっそのこと、借り上げ社宅における家賃補助をやめるのがフェアなのかな、と。
つまり、借り上げ社宅は福利厚生として活用するものの、家賃は補助しない。
その家賃分を、個人の給与から差し引いて給与決定することで節税効果が得られる。
これだけで十分なのでは、と。
家賃を補助するから不公平が生じるのであって、家賃を補助しないのであれば不公平ではない福利厚生だと見てもらえると考えました。
社員数が増えれば増えるほど、会社としても節税効果が出ます。
もちろん契約事務の発生など手間は増えますが、現在は様々なサービスがあるので、それを活用したいところです。(例えば、freee さんのサービスサイト。キャディさん・アトラエさん・ラクスルさんの導入事例も参考になります)
転勤時の補助も見直してもいいんじゃない
「本人の同意がない限り転勤させない」は、12.2% でも書きましたが、日本企業における「転勤」はもう古い制度だと、自分は思っています。
会社が命令して転勤する時代は変わっていくだろうと考えています。
その際、昔の転勤に合わせて設計された借り上げ社宅のルールも変えていくことが必要です。
自分の意思で行くことを前提とするなら、家賃補助はいりません。
もちろん家探しのサポートや引っ越し費用、敷金礼金などの一時的な補助は必要ですが、転勤前の生活でかかっていたコストを会社が負担することは無しの方向で考えたいものです。
今の大企業を変えていくのは難しいし、自分は関与しないと思いますが、スタートアップで今後、借り上げ社宅の制度設計に関わる機会があれば、この考え方を提案していきたい気持ちです。