報酬レンジ[1]

人事制度で最も注目を集めるのが、報酬レンジです。

最近は、会社説明資料に自社の報酬レンジを載せて報酬水準を公開する企業が増えてきました。
(参考:報酬に関する公開資料)

今回は、人事制度を初めて導入するスタートアップの報酬レンジについて考えます。

貢献に対して、適切な報酬で報いる

報酬レンジを運用する目的は、社員個々人の貢献と報酬をマッチさせること。

人事制度で報酬制度を設計する際、「何に対して報酬を支払うか?」という対象を考えます。

セオリーでは、能力、仕事(職務)、役割、の3つがあります。

  • 「能力に対して報酬を支払う」なら、能力が変われば報酬は変わる
  • 「仕事に対して報酬を支払う」なら、仕事が変われば報酬は変わる
  • 「役割に対して報酬を支払う」なら、役割が変われば報酬は変わる

といった考え方です。

スタートアップは、能力も仕事も役割もすべての要素が混ざっており、すべてを括って「貢献」に対して報酬が変わると考えています。

変化の激しいスタートアップでは、能力も上がるし、仕事も変わるし、役割も変わります。その結果として、成果も変わってきます。

こうした要素をすべてひっくるめて評価し、報酬を決定します。

等級別の報酬レンジ

報酬レンジの根拠は、等級です。等級の数と定義をつくり、その等級に応じて報酬水準を設定します。

例えば、「3等級」を「一人前の人材」と定義し、年収400-600万と設定するイメージです。

報酬レンジは、等級の結果にあたります。

スタートアップで報酬レンジを初めて設計・導入する際のサンプルと考え方のポイントをまとめました。

◆報酬レンジは広めにつくる

スタートアップの採用は、中途採用が中心です。中途採用の報酬決定で難しいところは、同じ実力でも前職によって報酬水準が変わることです。

等級定義に照らして人材を評価し、等級を判定します。同じ等級(≒同じくらい貢献してくれそう)で合っても、前職の年収水準が違うことで希望年収が変わってきます。

人材獲得競争が厳しい中で、一定の柔軟性が採用時の報酬決定には求められます。そのために、報酬レンジを少し広めにつくっておく設定することをおすすめしています。

※同じ等級でも年収に差が生じている状態は、将来的に解消する必要があります。その話はこちらを参考にしてください。「入社時期の違いによる給与差をどう調整する?

◆重複を許容する

「報酬レンジが重複しているって、どういうことですか?」という質問をよく受けます。

将来的に重複は解消させていくことを目指します。ただし、ただし、スタートアップで初めて報酬レンジを導入するタイミングでは、以下の理由より重複を意図的に設計することがあります。

  1. 中途採用中心ゆえ、報酬レンジを広めにつくりたい(上記の通り)
  2. 入社後、報酬レンジ内で昇給できる余地を十分に残したい
  3. 報酬と等級のミスマッチをなくしたい

「3. 報酬と等級のミスマッチをなくしたい」について補足します。例えば、3等級か4等級かで迷う採用候補者がいたとします。経験値を見れば4等級として期待したいものの、もしかすると3等級の可能性もある。こんな経験あると思います。

その場合、等級は3等級でオファーすることが鉄則です。「迷ったら下(の等級)」です。

ただし、採用競争には負けたくない、そこで報酬は3等級と4等級の重複部分でオファーします。入社後、期待通りの貢献であれば4等級に昇格、そうでなければ3等級のままです。

この微妙な判断を可能にするのが、報酬レンジの重複部分です。重複をやり過ぎると上位等級と下位等級で報酬の逆転現象が頻発してしまうため、注意は必要です。重複のうまい塩梅は、自分のこれまでの経験から導きました。

◆上位等級の上限は、将来決める

まだ事業や組織の規模が大きくなっていないスタートアップでは、上位等級の人材イメージが出来上がっていません。また、そのような人材が活躍する場もなかったりします。

この人材を位置づける等級の報酬レンジを決めきることが難しい場合、青天井にしておきます。

実際に現れる頃、報酬水準を検討することで十分に間に合います。下手に低い報酬水準を提示して、社員の「夢」を壊したり、逆に今現在からすると現実離れした報酬水準で本物の「夢」にしてしまうのも問題です。

「事業成長と共に、将来的に考えていきます」と説明して、戦略的に先送りしていきましょう。

◆端数は覚えやすくする

細かい話ですが、報酬レンジの端数は、100万単位、せめて50万単位と覚えやすい数字にすることをおすすめします。

30万とか、80万とか、こだわり過ぎて複雑になることは避けたいという意味です。

というのも、この報酬の数字は今後アクティブに活用し続ける数字です。「4等級の下限っていくらでしたっけ?」という質問から「弊社の報酬レンジで、●●さんの3等級の上限は~万円です」という説明まで幅広く使われます。

この際、シンプルに分かりやすい方がいいなと思っています。

また、100万単位で設定すればそれを見る人は「分かりやすさ」を重視して100万単位にしているんだなと気を利かせて理解してくれます。

一方で、30万とか80万とかの数字があると「これってどんな理由があるんだろう?」と勘繰りたくなります。いちいち説明するのが面倒だったり、説明コストに対する効果も期待できません。

シンプル is ベスト。

◆半期ごとに報酬レンジは見直す前提で!

報酬レンジは一度つくったものを定期的に見直していきます。制度を導入して5年や10年と時間が経っているならさておき、スタートアップで初めて報酬レンジを導入したタイミングでは、環境変化が激しく、常に制度を振り返る必要があります。

特に採用を進める中で「競合に負けない報酬レンジになっているかどうか」は重要なポイントです。

等級や職種等、特定の領域で負けが続くようであれば、原因を分析した上で報酬レンジを見直すキッカケになります。

もちろん事業成長に伴って、報酬レンジも上げていきます。全等級のベースを上げたり、特定の等級の下限または上限を上げたり、様々なパターンがあります。(経験上、スタートアップで報酬レンジを下げるということはなかったです)

こうした変更は、導入期であれば1年に1回、その後は2-3年に1回程度で定期的に発生します。細かい微調整であれば、もう少し増えるかもしれません。

報酬レンジの対象になる社員には「変わる」ということに対して、事前に説明しておき、実際の変更が起きた際にドタバタしないよう期待値調整していくことも重要です。

(報酬レンジ[2]に続きます)

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