昇格(等級が上がること)は、本人にとっても会社にとっても大切な人事イベントです。期待するレベルが変わり、給与水準も変わるタイミング・キッカケです。
慎重に見極めるためのプロセスについて考えてみます。
昇格候補者を選出する
わかりやすい仕組みとして「昇格候補制度」を、おすすめします。
読んで字のごとく、昇格の可能性がある方を昇格前に候補者として選出して、一定期間で見極める制度です。
例えば、評価期間を6ヶ月(上期1-6月・下期7‐12月)とした場合、1月または7月に昇格候補者を選びます。約6ヶ月弱の期間で昇格の妥当性を見極め、期末の6月または12月に昇格の可否を判断します。
期初に、メイン評価者が昇格候補者を提案します。メイン評価者や人事が集まる昇格候補者選定会議で、候補者を決定します。
その際、等級要件に基づき昇格候補者ごとに「昇格条件」を言語化します。
どういう状態になれば昇格するか、どういう期待・成果を求めているか、改善点は何か。期末で後出しじゃんけんにならないよう、期初に擦り合わせます(もちろん期中で変わる可能性はあります)。
昇格候補者に選ばれたことと昇格条件は、期初にメイン評価者から昇格候補者本人に伝えます。「昇格するぞ!」という気持ちを鼓舞します。
昇格候補者以外のメンバーには、昇格候補者を伝えることはしません。昇格判断のバイアスにならないため、また昇格できなかった場合の本人の気持ちを考慮しています。
なお、昇格候補者になったとしても昇格できないケースは普通にあります。この制度について議論する際、「昇格候補者になったら、昇格はほぼ決定と見ておいていいですか?」と言われます。Noです。昇格条件に照らして判断するまで、わかりません。
中間評価で途中経過を確認する
評価期間の中間地点、例えば6ヶ月の評価期間であれば3ヶ月経過地点で中間評価を実施します。これは昇格候補者だけの制度ではなく、全社員が対象となる評価制度の枠組みです。
このタイミングで、昇格候補者の昇格可能性を話し合うこともおすすめです。
- 昇格の可能性が高い
- 判断に迷いそう
- 昇格の可能性が低い
- 現時点では何ともいえない(わからない)
の選択肢でフラグをたてて、その理由をメイン評価者に説明してもらいます。
特に「判断に迷いそう」や「現時点では何ともいえない(わからない)」の場合は、他のメイン評価者からアドバイスしたり、昇格判断までの残り期間(約2ヶ月)で他のメイン評価者に見極めのサポートをお願いしたり、と ToDo を確認しておきます。
昇格候補者にも、中間地点の昇格可能性をフィードバックすることは可です。あくまでも可能性であり、決定事項でないことを強調する前提です。ここで昇格候補者と認識の違いがあるならば、改めて昇格条件を見ながら擦り合わせを行います。
期末の昇格会議で最終決定する
メイン評価者が集まる昇格会議で、昇格を判断します。昇格会議は期末に実施します。これは翌期が始まる前に昇格を決定し、翌期のスタート時点は新等級で目標設定できるようにするためです。
昇格会議では、昇格条件とその結果を見ながら、昇格する・昇格しない・判断保留を決めます。
判断保留とは、もう少し見極めの期間が必要という理由で、判断を先延ばしすることです。昇格会議は期末に実施するため、まだ評価期間が締まっていません。そのため、現時点で昇格条件を満たしていないけど、最後の追い込み次第でクリアできるかもしれない、その場合に判断保留します。
基本的に、メイン評価者の昇格判断を信頼します。
昇格条件を擦り合わせ、1on1もやっているので、昇格候補者のことを一番把握しているのはメイン評価者です。中間評価における途中経過の議論もあれば、この期末のタイミングで意見が割れることは、経験上ほとんどありません。
昇格会議では、メイン評価者が昇格判断とその理由を説明します。
これを全メイン評価者で共有することも重要です(組織規模が大きくなると、部門ごとに昇格会議を分割します)。自社で評価されている人材、貢献している人材、どんな点が評価されているのか、どうやって見極めたのか、など普段聞くことができない情報を共有できる貴重な場として活用できます。
給与は給与会議で検討する
昇格候補者の給与は、昇格会議ではなく、給与会議で決定します。昇格とは別に、6ヶ月間の評価に基づく昇給を踏まえて、昇格者の給与を決定します。
「入社時期の違いによる給与差をどう調整する?」でも書いた通り、昇格は給与調整を考えるタイミングです。
昇格後に同じ等級に位置づくメンバーの給与水準や採用活動で把握した市場報酬水準を考慮して、昇格後の給与を決めることをおすすめします。