納得感をつくる評価者の体制とは?

評価者の設計・運用が、人事制度の肝になります。論理的で精緻な制度を設計しても、制度を運用する評価者次第で制度が形骸化したり、納得感の低い制度になってしまうことがあります。

自分の肌感覚の話として、エクセレントカンパニーほど、期初の評価者設定に時間をかけて議論します。「この人の方が、~のPJTで関わりが大きいかも」「この人から、~の件でフィードバックしてもらいたいな」「本人は、この人から評価されたいと思っているんじゃないかな」などと声が挙がります。慎重かつ丁寧な意思決定が求められます。

納得感のある評価を実現するために、評価者の設計・運用にこだわることは不可欠です。

「一次評価者・二次評価者」が課題

一般的に、評価者の体制は「一次評価者・二次評価者」と設計されます。

例えば、一次評価者に直属の上長である課長、二次評価者に課長の上長である部長が入り、最後に部長以上で構成される評価調整会議(キャリブレーション)での議論を通じて、評価が決定されます。

この体制に課題を感じています。

理由は、最終評価を決める場に、直属上長(ここで言う一次評価者である課長)がいないことです。もし最終評価が変わった場合、直属上長はその理由を二次情報として把握することになります。議論の場の雰囲気、背景や経緯などが正確に伝わらない懸念があり、その状態で被評価者へ評価をフィードバックすることはリスクです。

この体制では、直属上長に「評価への責任感」を持たせることができないと思います。結果として、被評価者にとって納得感ある評価になるのか、に疑問が残ります。これが私の感じる課題です。

「メイン評価者・サブ評価者」がおすすめ

一次評価者・二次評価者でなく、メイン評価者・サブ評価者の体制をおすすめします。

直属上長がメイン評価者です。主な役割は、期初の目標設定、1on1、人事評価、評価フィードバック、昇格/降格の提案、給与改定(昇給/降給)の提案、です。ピープルマネジメントにおいて一貫した責任と権限を持ちます。

サブ評価者は、仕事で関与する人を配置します。メイン評価者だけでは把握しきれない部分を、サポートします。メイン評価者の役割に照らすと、人事評価のみ役割を持ち、その他の目標設定や1on1、給与改定にはタッチしません。メイン評価者の壁打ち相手として評価の納得感を高めたり、被評価者へ評価コメントを通じたフィードバックを行います。

ポイントは、メイン評価者が評価調整会議に参加して評価の説明責任を果たすこと、さらに評価に基づく報酬決定と被評価者への通知に責任を持つこと、です。

人事制度の目的は、個人の報酬決定です。実力・貢献に合った報酬を決めることで、継続的かつ最大のパフォーマンスを引き出すことです。これを直属上長であるメイン評価者にやってもらうことを意識しています。

背景として、1on1を制度設計の中心に考えていることがあります。1on1を通じて、メイン評価者と被評価者の信頼関係をつくり、この信頼関係が「納得感」を醸成すると考えます。よって、1on1をリードするメイン評価者に責任と権限を付与することが重要です。

「納得感」を振り返る

お互いの納得感がなければ、人事制度は形骸化しているも同然。ただ制度を回しているだけでは、時間の無駄になってしまいます。

そこで本当に納得感があるのかどうかを振り返ることも仕組み化することをおすすめします。

方法としては、サーベイとヒアリング。評価の時期が過ぎたタイミングで「自分に対する今期の評価に納得していますか?」を聞きます。その際、尺度もなるべくシンプルに設計して、振り返りしやすく(対策しやすく)します。

  • 納得している
  • 納得しているとは言い切れない
  • 納得していない

の3段階あれば十分です。

また回答に対する理由をフリーコメント、または選択肢で聞くこともおすすめます。

「納得している」人は、どういう点で良かったのか。逆に「納得しているとは言い切れない」人、「納得していない」人は、なぜ納得感がないのか。

制度面の課題か、運用面の課題か、がわかるだけでも次回以降の改善に大きく貢献します。

本音を引き出すために匿名で回答してもらう、サーベイ結果は人事部から直属上長に説明する(結果だけ渡して「見ておいてください」にはしない)、などサーベイの工夫も大事です。

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