人事パーソンに求められる思考スキル

スタートアップにおける人事関連の制度設計(例えば評価制度とか)は、全社員に強く影響を及ぼすため、慎重な検討が求められる。また、こうした人事周りのノウハウや知見は、あまりシェアされないので、まず何から着手すべきか、どういう手順で進めるべきか、何がポイントか、が把握しにくい。「まずはやってみる」の姿勢で制度設計にチャレンジしてみる。ここまでは問題ないと思う。

「自分基準」で考えてしまうということ

問題となるのは、大抵この後だ。自社の事業や戦略、組織、カルチャーを踏まえて、他社の話と社員の声を聞きながら、実際に企画検討していく。このとき、判断の基準がどうしても「自分基準」になりがちだ。例えば、こんな意見が出てくる。

・『自分は会社の評価とか気にしたことない。評価はされていたけど、それに対して不満もなかったし、そもそもそんなに興味もなかった。時間をかけてまで評価制度とかって必要?この時間を仕事に当てた方がいいんじゃない』

・『自分は3年目で年収は~万ぐらいだった。その水準を考えるとうちの会社はそんなに悪い水準じゃないと思う』

・『1on1って本当に必要?自分は前職で1on1なんて無かったけど、必死にやって成果を出した。上司の時間を取る1on1ってやるべきか?』(本音は「自分は上司として、1on1の時間は取られたくない)

こうした意見を否定するつもりはない。ただし、これだけで議論を進めると危険だ。要するに、あなたの意見はそうだとして、制度を適用される社員の気持ちはどうか、が大事ということ。10人の会社であれば、あなたを除く9人がどう思うか、に思いを巡らせる必要がある。しかも、これでもか、というぐらいに。

視点取得というスキル

自分の経験に基づく考えや意見が役に立たないという話ではない。つまり「自分がどう思うか」ではなく「相手がどう思うか」を考えなければいけない。どんなことに共通していることかもしれないが、人事周りは自分の経験以外の情報が得に少ないからだろうか、こうして視野を狭めず、相手の立場になって考えることが意外と難しい。

僕も人事コンサルの初期は「自分基準」で考えていたことをよく覚えている。退職金って必要なの?自分で貯めて運用すればいいじゃん。なんでこんなに福利厚生があるの、給与で還元すればいいじゃん。ってな感じで、なんでこうなってるの、に対して一歩引いて相手の立場になって考えることができていなかった。より正確に言うと「相手になりきって考える」ことができていなかった。心理学では、これを「視点取得」と呼ぶらしい。専門用語はさておき、相手がどう思うか、で考えることが人事パーソンには求められる。

「自分が嫌だと思うことは相手にやらない」ではない

僕は「自分が嫌だと思うことは相手にやらない」と学んできたと記憶している。なので「あなた(自分のこと)ではなくって「相手がどう思うか」をもっと考えなきゃ」とフィードバックされたときは意表を突かれたことを今でも覚えている。なんか今まで気にしてきたことと違うぞ、というモヤモヤを感じた。

ただ言ってしまえば「相手がどう思うか」なんて正直分からないことが多い。というか、ほとんどのケースで分からない。だからこそ、相手に直接ヒアリングして多様な意見や背景となる価値観を知っておくことが大切になる。また運用の中で必ず振り返りを行い、自分の仮説がどれだけズレていたかを知ることも貴重な経験となる。自分が経験したことを、ちゃんと言語化(メモ)して忘れないようにすることを積み重ねていくと徐々にできてくるように思う。

人事を”うまくやる”には「自分が嫌だと思うことは相手にやらない」ではない。「相手は嫌だと思うことは相手にやらない」のだ。当たり前すぎて笑えてくるけど、意外と難しい。

マネージャー任用は難しい

スタートアップに限らず、マネージャー任用(役職/ポストに人材を配置すること)に悩みが多いと思います。自分も、こうした悩みに対峙していた際に、ドラッカーの名言(迷言?)に出会いました。

昇進人事の成功は本当に少ない

昇進人事をマネージャー任用と自分で読みかえましたが、ここまで明確に言い切っている部分がドラッカーらしいです。ドラッカーの話もう少し丁寧に引用すると

私は新しい仕事を始めるたびに、「新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないか」を自問している。もちろん答えは、そのたびに違ったものになっている。

コンサルタントの仕事を始めてから50年以上経つ。いろいろな国のいろいろな組織のために働いてきた。そして、あらゆる組織において、人材の最大の浪費は昇進人事の失敗であることを目にしてきた。昇進し、新しい仕事をまかされた有能な人たちのうち、本当に成功する人はあまりいない。無残な失敗例も多い。もちろんいちばん多いのは、期待したほどではなかったという例である。その場合、昇進した人たちは、ただの凡人になっている。昇進人事の成功は本当に少ない。

と。そして、その原因と対策として

新しい任務に就いても、前の任務で成功していたこと、昇進をもたらしえてくれたことをやり続ける。

新しい任務で成功するうえで必要なことは、卓越した知識や卓越した才能ではない。それは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において重要なことに集中することである。

と。痺れます。

どちらかというと、マネージャーに任用した人材が実績を残すことを前提とした発言ですが、スタートアップでは実績を残せなかった場合、さらには実績を残せなかったことがないような施策も大事だと思っています。挑戦することは大事ですが「昇進人事の成功は本当に少ない」のです。

マネージャー任用の仕組みづくり

では、スタートアップのマネージャー任用について考えてみたいと思います。まず前提として、組織は「人材」ではなく「戦略」から設計されるので、戦略が変われず、組織も変わり、そこに必要とされる人材も変わります。スタートアップのように成長に合わせて柔軟に「戦略」も「組織」も変わっていく状態では、硬直化することは避けるに越したことはないと考えます。この前提を踏まえた上で、マネージャー任用についていくつかのポイントを考えてみました。

  1. 役職と給与は分離させる

    役職を外れたとしても給与が下がる仕組みにしておかない方が良いです。役職手当を固定額でつくるのは、まずやめた方が良さそうです。「給与が外れるから役職を外せない」「役職を外すと給与も下がるので退職リスクが高まる」といった事態が起きたりします。役職はあくまでも戦略から導かれた”その時の”組織に必要とされる役割であり、変わることを前提としておいた方が良いという考え方です。

  2. 任期制とする

    役職は「任期付き」というルールを作っておくだけでも、柔軟な配置に役立ちます。もちろん再任は有りとなりますが、期間を定めて柔軟にマネージャーを入れ替えていくことを会社のメッセージとして伝えることができます。3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月が任期の目安ですかね、ポストに応じて任期を変えることもOKです。例えば部長は12ヶ月、課長は6ヶ月の任期としてポジションを変える可能性がある、と制度として伝えておくイメージです。

  3. マネージャーへの教育や研修を実施する

    これ意外とやってない会社が多いと思います。教育や研修をやらなくてもマネジメントはできる(できてしまう)ので、「まずは実践を通じて学ぼう」的なスタンスでやっているとか。新しいマネージャーへのオンボーディングもなかったり。個人的には、マネジメントは1つの専門性だと思っています。スキルやテクニカルな部分もあるし、心構えも学ぶ点がたくさんあります。コーチングとかは1on1には必須のスキルですよね。まずはセオリーを学び、実践を通じて自分たちなりのマネジメントを確立していくことも大切だと思います。

  4. マネジメントポリシーをつくる(言語化する)

    セオリーを学び、実践を通じて自分たちのマネジメントが見えてきたら、それを言語化して全社で共有することも効果的です。スタートアップでは様々なバックグラウンドのメンバーで構成されるので、どうしても前職の価値観に引っ張られがちで、そこから不毛な議論も出たりします。自分たちの組織では、どんなマネジメントを目指しているのか、を知ることが組織の一体感や自律性を高めたりします。Valueと似てますね。

  5. マネージャー任用の結果を定期的に振り返る

    チームごとに組織の状態を見える化できる外部ツールを使ったり、人事が全社員と1on1を実施して声を吸い上げたり、マネージャーが機能しているかどうかを定量的・定性的に振り返る方法もあります。大事なことは振り返った結果、どう関係者にフィードバックしていくか、どう改善していくか、につながていくことです。必要であれば、改善策を人事が一緒に考えたり、マネージャー全員で改善策を実践したりします。振り返りが”やりっぱなし”に陥らないように注意します。

  6. 1on1の仕組み化

    スタートアップのマネジメントは1on1がベースになっていることが多いです。多様な人材がスピーディな環境の中で会社と共に成長していくには1on1が便利なツールであることは間違いないと思っています。その1on1もいろいろなやり方がある中で、効果にバラツキが生じやすい施策です。マネージャーとしての役目を果たすために必要な中身(時間・頻度・スクリプト・ツール等)を会社が決めて、まずはそれを実践することをお奨めします。

自分はこういった点に気を使って、マネージャー任用の仕組みを作ったり、実際に運用したりしています。

おわりに

クライアントからマネージャー任用について相談された際に気にしていることは「そのマネージャー任用に不安がありますか」という点です。というのも、成功したと言いにくいマネージャー任用って、ほとんど事前にわかっていたりするケースが多いと個人的に感じているからです。例えば「この人をマネージャーにしようと思っているけど、どう思います?」と聞かれた場合、「会社としては検討を重ね、おそらく大丈夫だと思っているけど、外部の人から見てどうだろうと思って」といった場合は問題ないケースがほとんどだし、逆に「マネージャーにすると~の点で問題起きるかもしれないという不安があるけど、どうですか?」と聞かれる場合は「その通り、不安ですね」といった流れになることが多いです。そして後者の場合で、組織のもろもろの都合からそのままマネージャーに任用されると、多くのケースで解決しがたい問題が起きているように思います。(自分がそれを止められていないという恥ずべき問題は承知している前提で)「不安があるマネージャー任用」や「チャレンジのマネージャー任用」はやめた方が良いというのが私の経験論です。マイナス要素の直感ってほぼ当たってるような気がします。こうしたケースではポストは空席にして、兼務で一時的にしのぐ&マネージャー採用に全力を注ぐことが1つの対策だと考えています。

人事に関する情報公開

人事について「どんな情報」を「誰に」公開するか、は各社で違った対応になっています。今回は人事制度における等級(グレード)について考えてみます。

クライアントとの議論の中で、個々人の評価結果や給与水準はたいてい全社員には非公開となりますが、等級については意見が割れるケースがあります。「絶対に社員に公開できない」という意見から「公開したことがないので分からない。だから何となく公開に踏み切れない」「うちの会社では公開することのメリットよりもデメリットが目立ちそうなので公開しない方はいいかも」といった理由です。

なお今回は「各自の等級を公開する・公開しない」が論点であり、等級基準は仕事や役割でなく能力で、組織上の役割(マネージャーとか)は全社に公開・共有されていることを前提とします。

社員の等級(グレード)を公開することのメリット

  1. 各等級の人材レベルを等級要件といったテキストだけでなく、実在者でイメージできる(どうすれば自分が上位等級に昇格できるかが分かりやすくなる。もちろん妥当な等級決定がなされているという前提で)
  2. 等級制度を運用する経営陣やマネージャー、人事が、入社時の等級決定や昇格人事をより慎重に且つ真剣に取り扱うようになる
  3. 上位等級者への高い期待値が組織内で見える化され、本人たちに適度な緊張感を提供できる
  4. 人事に関する情報も一部は公開していくという会社のスタンスを社員に示せる
  5. 社員にとって納得感のある等級決定や昇格人事/降格人事が行わている場合、人事に対する信頼が上がる

社員の等級(グレード)を公開することのデメリット

  1. 社員から他人の等級に対する不満や文句が出る可能性があり、社員が事業に集中しにくい環境になってしまう
  2. 降格人事を実施した際に、社員にその情報が伝わる。降格した本人は情報公開を嫌がるケースも。
  3. 下位等級者が「自分は評価されていない」と感じてしまい、モチベーションが下がる可能性がある
  4. 社員にとって納得感のない等級決定や昇格人事/降格人事が行われている場合、人事に対する信頼が下がる

スタートアップは社員の等級を公開した方がいいかも(個人的見解)

金田としては特にメリット1とメリット2を重視して、スタートアップでは社員の等級を公開した方がいいかも、と思っています。

未経験人材でなく、経験豊富な人材を採用して組織をつくっていくスタートアップでは、様々な強みを持った人材で構成されます。そうした人材の等級を決定することは簡単なことではありません、ある意味不可能に近いのかも。一緒に働いたことがない人を、「当社の等級基準では~等級」とか決めるわけですから(一定のハイクラスは入社前に一緒に働く時間を取って、実際の働きぶりを見て採用と等級を決定する場合もあります)。でも、給与にも紐づく等級決定の精度を高めていくことは大事だと思っています。そこの精度が上がってこないと、そもそも自社にFitした優秀な人材を見極めて、適切な処遇で採用することができないということを意味していますから。それぐらい慎重に・真剣に扱ってもらいたいとの思いがあります。ここに問題があるとデメリット1の通り、人事に対する不平不満が膨らみ、人や組織に気を取られて事業に集中できない状態になってしまいます。これは最も避けるべき状態です。

デメリットももちろんあります。ただし、等級を公開することで上記のようなデメリットが起きる組織はそもそも課題があると考えます。例えば、採用する側の人材の見極めの精度が低い、等級基準や人材の見極め基準が会社と社員で共有できていない、社員が等級基準や人材の見極め基準を正しく理解できていない、とか。改善すべき点はこちらだと思っています。

おわりに

等級決定や昇格人事は難しいです。だから慎重且つ真剣に取り組むことが大事です。どういう基準で、どんなプロセスを経て、昇格を判断していくのか。また降格をどうするか、などなど。別の機会で、昇格や降格の制度設計についても考えてみたいと思います。

OKR

OKR(Objective Key Result)がスタートアップで流行ってますね。経営管理ツールとして、また目標設定のフレームワークとして活用されています。ざっくりと言えば、100人いる組織で100人全員が1つの同じ方向(目標)に向かっている状態をつくるのがOKRのねらいであり、全社員が「その目標を実現するために、自分がやること」を自律的且つ前向きに考えて実行できるように方向付け、動機づける仕組みです。OKRの本やブログなど多くの情報が流通しており、金田も以下を参考に実践に活かしてきました!

前田ヒロさんのブログ(これが火付け役ですよね)
OKR
日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法
WORK RULES
HIGH OUTPUT MANAGEMENT
Measure What Matters

どれも最高の情報ソースで、すごい参考になっています!
まずはざっくりとこれらの情報を踏まえて、OKRの概要をメモしてみます。

OKRとは?

・Objective Key Result の略
・Objectiveの訳は「目標」、意味は「目指す状態」
・Key Resultの訳は「主な結果」、意味は「目指す状態を実現できたというために必要な結果」
・ObjectiveやKey Resultは「野心的」で簡単には達成できないレベルにする
・Key Resultは振り返って測定できるように定量化する
・Objectiveは1つ、Key Resultは3~5つに絞り込むことが大事
・1年間のOKRをつくり、四半期ごとにもOKRをつくる
・四半期ごとに振り返る
・OKRを全社、部門、個人で連鎖させる(全社目標から部門目標をつくる、部門目標から個人目標をつくる)
・全社のKey Resultを部門のObjectiveに展開する
・個人OKRはボトムアップでつくる(目標の当事者である本人がモチベーション高く取り組めるために)
・人事評価や給与には反映させない

ざっと、こんな感じでしょうか。
情報ソースによって若干内容が異なる部分もあるかと思いますが、このような考え方でOKRを運用している会社さんもあるかと思います。

OKR運用の課題

一方で、実際にOKRを運用している会社さんから、こんな課題を聞いたりします。

■達成感を感じられない、つらい
野心的な目標として、5~7割の達成で良しとする目標をつくったが、現場のメンバーから「達成感を感じられず、つらい」という声を受ける(もちろん会社からは5~7割で御の字だよ、と伝えているけど)。

■四半期の振り返りが大変且つ難しい
OKRの設定に1ヶ月ほどかかってしまい、残りの2ヶ月で目標達成に向けて全力で動くも期間が短く感じてしまい、「これから」っていうタイミングで振り返りがまた来てしまう感覚になる。

■ボトムアップだと経営の期待に沿った目標が設定されないケースも多い
本人にOKRを設定してもらっても「これはちょっと違うな~」「もう少しこうしてほしい」が多くなってしまう。レビューの時間も大変だし、本人も「じゃあ最初から決めてくださいよ」という気持ちになっている。

■セクショナリズムを感じる
全社OKRのKey Resultを部門のObjectiveにすると、部門のやるべきことがその定量数字を追うことだけになってしまい(勘違いされてしまい)、目標は絞れる一方で、部門間の協力・連携が手薄になっているように感じる。

■給与に反映されないなら…
野心的な目標を精一杯頑張っても、人事評価とは関係なく、給与にも反映されない、という仕組みだと本人から「やってやろうというモチベーションが上がりません」という言われた。

こんな風にOKRを設計・運用してみるのもいいかも

金田も実際にOKRを設計・運用する中でいくつか同じような悩みを感じたりしました。そこで、こうした課題に対してクライアントさんと一緒に考えながら工夫した点をまとめてみました。

「野心的」とは「非現実的」と「現実的」の中間と伝える

本人が「これ達成できないでしょ」と思う目標は、「目標設定」としては良くないと個人的には思っています。高い目標(達成無理な目標)を掲げて思考の枠を取っ払うようなフレームワークで使うならストレッチ効果はあると思いますが、組織全体の経営管理ツールとして使うには少しねらいがズレてしまうことが課題です。そこで「野心的」の意味を「非現実的」と「現実的」の中間に位置づけ、「難しいけど無理ではないレベル」で目標設定することも有りかな、と思っています。「非現実的はこのレベル」「現実的はこのレベル」という上限と下限を議論する中で、本当にこれが非現実的なのか、これが現実的なのか、を関係者で擦り合わせることも1つの良き効果だったりしました。

全社のKey Resultを部門のObjectiveにしない

どうしても定量的なKey Resultが各部門の目標になってしまうと、その数字をつくるためだけの動きになりがちです。そこで部門のObjectiveをつくるにあたり、全社のKey Resultではなく、全社のObjectiveを部門のObjectiveに連鎖させる方がいいのでは?と考え、実践しています。気付いたことは、こうやっても最終的に全社のKey Resultが部門のKey Resultに自然と反映されるので、部門が全社の目標目線を維持できるという効果があるように感じました。また『Measure What Matters』の中で紹介されている「水平的OKR」のように、全社のObjectiveと部門のObjectiveを全く同じ内容にする方法でも、全社の目標が部門へとしっかり落とし込めるので非常に良い方法だな~と思い、早速実践してみました。

振り返りの期間は3ヶ月か6ヶ月で、自社に合わせて考える

盲目的に3ヶ月(四半期)で振り返る必要はないです。3ヶ月という比較的に短い期間の場合、目標が変わりやすいビジネス・組織・成長ステージ等の場合にフィットするけど、6ヶ月でも十分にフィットするケースも多くあります。3ヶ月だとどうしても運用負荷が高くなり「大事なのは分かっちゃいるけど面倒くさい」という状況が、OKRの形骸化につながるリスクがあります。A部門は時間を割いてちゃんとやっているけど、B部門は適当にやっている、とかは現場ではすぐにわかるし、やる気だだ落ちになるので、この点は自社に合わせて取り入れることが大事です。

ボトムアップは原則論

基本的なスタンスは、個人OKRはボトムアップでつくってもらうべきです。本人に当事者意識が強く芽生えて”やらされ感”がなくなるので、目標達成への粘りが違ってきます。ただし、これは人材の質・レベルを踏まえて考えるべきです。自律的に課題を見つけて解決に動ける人材がほとんどの組織であれば、全社OKRと部門OKRに基づいて、ボトムアップで個人OKRをつくってもらい、1on1の中でブラッシュアップしていくやり方が理想的です。一方で、一定のマネジメントコストがかかるエントリークラスの人材が多い組織でボトムアップをやってしまうと収集がつかなくなる恐れがあります。こういう場合は、マネジメントクラスが個人OKRのガイドを示したり、たたき台をつくったり、一緒に考えるなどして運用にひと手間かける必要がありました。

人事評価・給与にも反映させる

頑張って成果を出せば、その分を評価して給与に反映してあげればいいと素直に思います。評価や給与に反映させない理由もありますが、社員の立場で考えてもあまり納得感がないように感じます。お金が内発的な動機付けにネガティブに反応するという過去の研究もありますが、スタートアップにいる社員はビジョン・ミッション・バリューへの共感、ビジネスや自分の成長可能性に夢を抱いてジョインしてくれる方々なので、基本的にお金の部分であってもしっかりと報いてあげたいと思うし、本人たちもそれは期待して当然です。「OKRを全力でやっていこう」「ちゃんと評価して給与にも反映させるぜぃ」の方がスタートアップらしいし、こうやって給与に反映させることで重大な副作用が出ているケースも今のところはありません。ただ、この状態をつくるためには、日々の1on1で認識の擦り合わせをすることが不可欠なので、ここができない場合は確かに評価・給与から切り離してもいいのかも…

理解活動がとにかく大事

つくって終わり、のOKRは確実に形骸化します。それほどしっかり運用しようとすると”重い制度”です。楽な制度ではありません。日々モニターしていく仕組みを、担当者や会議体等を通じて運用していくことが当然必要です。また全社OKRや部門OKRを説明・共有するセッションも非常に大事です。「こういうOKRでいくよ」だけではなく、前期の振り返りや現状の課題、今後の理想、なぜ今期はこれに集中するのか、どうしてこっちはいったんKey Resultから外すのか、をしっかりと経営陣が語り、その”強い思い”がOKRに反映されていなければ、メンバーに腹落ちさせることはできません。メンバーからもセッションの中で色々と質問が飛び交い、その過程で経営陣とメンバーの理解もより深まっていきます。こうしたキックオフセッションは1日ぐらいかけてやっていくぐらいがちょうどいいですかね、節目にもなりますし。

おわりに

OKRはこれから様々なオプションが出てきて、それぞれのビジネスや組織に合ったやり方がどんどん出てくる興味深いテーマです。金田も試行錯誤を繰り返して、OKRの良さや副作用を伝えていきたいと思います。

1on1スクリプト -SmartHRの事例-

1on1をやっているスタートアップは多いですが、どんな風に1on1をやればいいのか、何を話せばいいのか、について知りたいという方も多いと思います。そこで、以前SmartHRさんで社員が30名ぐらいに増えてきてリーダーの1on1を仕組み化する際に一緒に作らせてもらった1on1スクリプトと、その背景について説明していきます。

SmartHRでは、当時評価制度を導入し、納得感ある制度運用を実現するため、そしてリーダーが増えたタイミングで1on1の品質にバラツキが出ないようにするために仕組み化しました。このフォーマットを土台に各リーダーがカスタマイズしています。

1on1スクリプト

当時、こんなスクリプトをつくりました。

現状把握・課題整理・対策立案

2週間に1回の1on1のため、前回の1on1からの振り返りと今困っていることの確認、その解決サポートを行います。大切なことはコーチングスタイルで、困っていることの解決策は本人に考えてもらうこと。傾聴や質問を通じて、そのサポートを行うのがリーダーの役割です。

上長へのフィードバック・自分へのフィードバック

1on1の中でやっている方は少ないかと思いますが、ここは肝です!特にメンバーからリーダーへフィードバックするセッションです。このセッションには2つの狙いがあります。分かりやすいのはリーダーの成長促進。率直なフィードバックを受ける機会が減ってくるリーダーにその機会をつくり、気づきを得ることを狙っています。もう一つの狙いは、メンバーがリーダーへフィードバックして、それをリーダーが必ず受け入れることで心理的安全を高める効果があります、結果としてメンバーがリーダーに対してどんなことも発言しやすい環境をつくる狙いがあります。「心理的安全の高い組織をつくる」でも書きましたが、心理的安全が大事なのは当然で大切なのは、それをどうやってつくるかということ。仕組みの中に心理的安全を高める取り組みを落とし込み、組織力の強化を図りました。

あとこれはテクニカルな話なのですが、フィードバックをしやすくするためにKPTのフレームワークを使っています。Keep・Problem・Tryの順番で整理する超シンプルなフレームワークで、SmartHRさんで昔から定着していました。これの良い点ですが、金田のまったくの主観では「フィードバックしてください」とお願いすると相手はなぜか「悪い所を指摘してください」と受け取る傾向が強いと感じており、上長に向かって悪い所を指摘しろと言われても、あとで仕返しされるのではとの恐れから「(フィードバックは)特にありません!大丈夫です!」といった無難な返事が返ってきます。無いはずはありません、言えないのです。そこでKPTを使うと、まずKeepとしてポジティブな点をフィードバックする順番なので、フィードバックしやすいのです。そしてKeepを挙げた後にProblemなので、こちらも言いやすくなります。最後に今後に向けたTryで締めることができるので、フィードバックセッションを前向きに終わることができるという効果があります。非常に細かい話なのですが、これこそ「神は細部に宿る」だな~と思っていたりします。

ミッションの進捗確認・欲しい結果への(現時点での)評価

これはOKRの評価です。OKRは抽象的なObjective(目標)もあるため、評価でサプライズが起きないように、なるべく1on1で擦り合わせを行って行きましょう、という考えです。

行動計画

次の1on1に向けた話で締めます。

おわりに

1on1はとにかく実践と継続です。今までやろうと思っていたけどできていなかった方のきっかけになってくれれば嬉しいです!

スタートアップがValueをつくった方がよい理由

スタートアップでValueを定めることが一般的になってきました。金田もValueは非常に大事だと思っています。ここで言うValueについて「価値観」、もう少し具体的で且つ”使える”表現として「判断・行動の基準」と定義しておきます。

Valueをつくった理由について、金田が見聞きしたものを一部挙げてみました。
・経営チームの言っていることが何となく組織に伝わりにくくなってきたと感じたから
・自分たち経営チームの意識や心構えを再確認するため
・自分たちが大事にすることを発信して自社にマッチした人材を効率的に採用するため
・他のスタートアップがつくっているから
・先輩起業家や株主に「つくった方がいいよ」と言われたから
・メルカリさんがValueを評価制度に反映しているみたいだから

一方で組織にValueがなく、必要性を感じているけどまだつくっていないケースやそもそも必要性を感じていないケースもありました。人それぞれって感じですね。

そこで自分なりにスタートアップがなぜValueをつくるべきなのか、について考えてみました。大きくは3つかな~。(なんでコンサルタントって、3つにしちゃうんだろう…、職業病としておきましょう。ちなみに全然MECEではないですからw)

1.組織の動きをスピーディにする

スタートアップでは創業メンバーこそ、友人関係であったり、過去に一緒に働いた経験があったり、とお互いの仕事の仕方やものの考え方を把握できています。ただ、それ以外でジョインしてくれるメンバーは、仕事の仕方やものの考え方をお互いに把握できていません。主に経験者(中途採用)で組織をつくるスタートアップは、多様な「仕事の仕方・ものの考え方」を持った人材で構成されます。問題になるのは「仕事の仕方・ものの考え方」が違うので、Vision・Missionで共通のゴールを描けていたとしても、そのプロセスでやり方や認識の違いが発生し、そのすり合わせに時間がかかってしまったり、自分の意見ややり方が通らないことでモチベーションを下げてしまったりすることです。結果、組織の動きが遅くなっていきます。具体的には、意見がまとめらない、その場合に上位者の判断を仰ぐ(上位者がいないと先に進まない)、といった状態が目立ってきます。

ここで Valueがあると役立ちます。「仕事の仕方・ものの考え方」で意見が別れたときや判断に迷った場合に、Valueに基づいて判断・行動できるようになるからです。経営者が言っているから、またはリーダーが言っているから、という軸で判断・行動するのではなく「Valueを軸に考えるとどうなるか?」、これが判断・行動の基準になります。この考え方が定着してくると、意見が割れた場面や迷った場面でも、ダメなら謝って済みそうな問題なら都度上位者に判断を仰ぐことをせず、組織全体で同じ判断・行動をすることが可能になります。Valueに基づいて判断・行動したけど、ロジックを間違えて上位者と異なる判断・行動になってしまった、なんていうこともあるかもしれません。ただし、何度も繰り返していけば段々とすり合ってきます。大事なことはValueがしっかりと浸透し、Valueを使って判断・行動しようとしていること、つまりValueを体現しようとしていることです。こうした積み重ねが、スタートアップにとって最も大切なスピードに繋がってきます。いち早く実行し、いち早く振り返り(成功・失敗から学び)、何としてでもやり切る、を繰り返すためのスピードに、ですね。

2.自信を持って行動できるようにする

初期のスタートアップは実績がありません。今からつくっていくフェーズですから。成功パターンが見えない中で超高速の試行錯誤を繰り返し、1つ1つ実績を積み上げていきます。その過程は、成功1に対して失敗10ぐらいあるかもしれません。起業家はこういうのを乗り越えられるからこそ、起業家なのかもしれませんが、そうでない人、つまり僕みたいな普通の人間は、へこんで嫌になって放り投げてしまいます。ここでValueの出番です。うまくいかないことが続き、先が見えない中でも「Valueを徹底して体現し続ければ必ず成功につながる」という組織のメッセージ(信念)が伝わっていれば、うまくいかないことにはもちろん挫けるかもしれないけど、今やっていることは間違っていないと前を向いてやり抜こうとします。

Valueって要は「信念」なんですよね、「こうすればこうなる!」っていうエビデンスはないかもしれない信念。だからこそ、Valueをつくる場合は、必ずビジネスモデルから考えることが大事。自社のビジネスを成功させるための人・組織の差別化要因が何か、これがValueに落とし込まれる内容です。ビジネスモデルが変わればValueも変わると思っています。そういう意味では、事業を立ち上げた創業者が一番コミットし、深く考えていると思うので、創業者が中心となって言語化することがベターですよね。もちろん、周囲のメンバーとのディスカッションを交えてやっていったりするんだろうけど。

あとValueをつくるプロセスとして、1泊2日でオフサイトの合宿したり、社員全員集めてワークショップしたり、とか聞いたりすることもあります。個人的には、創業者を含む経営チームが4時間ぐらいでつくってしまうのがちょうどいいかな~なんて考えています。スピード重視です。90分ぐらいで発散しながらホワイトボードに要素を書きまくって、30分ほど休憩しながらダラダラとホワイトボード見ながら喰っちゃべって、120分でPC使いながら一気にワーディングを整える、ようなイメージです。金曜日の午後とかにやるのがいいですかね、気分的に。Valueとざっくりとした定義ぐらいだったら、これぐらいの時間・やり方でできると思うので(自分たちのビジネスの成功イメージを仮説でもっていることが前提)、初期のスタートアップでも忙しい時間を割いて集中してやってみてほしいです。

3.自社にマッチした人材を採用できるようにする

最後に、やっぱり採用にも効果ありそうです。実際に色々なケースを見聞きしているのですが、中でも分かりやすい事例としてSmartHRの例をご紹介します。社員数が20名弱のころ、エンジニアに入社理由を聞きました。事業やメンバーの魅力はもちろんあったと思うのですが、ある方からこんな話を聞きました。

「Valueに強く共感した。エンジニアとして、このValueは本当に大事だと思っているし、前職ではそこまで重視されていなかったようにも感じる。このValueで仕事ができる環境は自分にとって魅力的。」と。そのValueは、SmartHRの6つのValueのうちの1つで、

一語一句に手間ひまかける

細部まで徹底的にこだわろう。言葉だけにとどまらない。UI もコードも、公開している限りそれはユーザーへのメッセージだ。もっと言葉を磨こう。1 ピクセルにこだわろう。コードの一行一行に魂を込めよう。

という内容でした。これが本人にグッときたんでしょうね。

この話のスゴイところって、もちろんValueが人材採用に役立つということではあるんですが、それにプラスして「入社前にメンバーにValueが浸透し始めている」ってことなんですよね。「うちの会社はこういうことを大事にしています」と採用面接や入社オリエン、さらには入社後のOJTの中で説明して浸透させていく前に、本人が自発的にValueを理解して体現しようとしている。こういう人材が揃った組織って強いですよね。強くないわけがない。

おわりに

金田はValueの力を信じていますし、実際にその強さも体験してきました。Valueが浸透している会社とそうでない会社も実際に見てきました。こういう目に見えない力が、組織を動かす大きな要因になっていると考えると本当に面白いな~なんて思ったりしています。

心理的安全の高い組織をつくる

「心理的安全」の意味と大切さを深く理解するようになったのは、エイミー・C・エドモンソンさんの著書『チームが機能するとはどういうことか?』を読んだあたりからです。ちょうどこのタイミングで自分もスタートアップ向けに組織・人事のアドバイザリーを始めて、組織をゼロイチでつくる上で何が重要なのかを考えていました。そのとき、この本に書かれている「心理的安全」というのは全社員が自律的に動くスタートアップにとって大きな差別化になるかもと思って、施策に取り入れていきました。今回は、心理的安全をどうやって高めていくのか、について「チームが機能するとはどういうことか?」で紹介されているフレームワークと金田の経験を踏まえて(心理的安全が高そうな組織を思い浮かべながら)考えてみます。

心理的安全とは

人々が気兼ねなく発言できる雰囲気

と定義されています。もう少し引用すると

心理的安全があれば、厳しいフィードバックを与えたり、真実を避けずに難しい話し合いをしたりできるようになる。心理的に安全な環境では、何かミスをしても、そのために他の人から罰せられたり、評価を下げられたりすることはないと思える。手助けや情報を求めても、不快に思われたり恥をかかされたりすることはない、とも思える。そうした信念は、人々がお互いに信頼し、尊敬し合っているときに生まれ、それによって、このチームでははっきり意見を言ってもばつの悪いおもいをさせられたり拒否されたり罰せられたりすることはないという確信が生まれる

とあり、要はこの心理的安全の雰囲気が「何でも言い合える最高の組織」をつくるためには必要ということです。信頼とか尊敬とか、HRTにも似ていますね。めちゃくちゃ大事やん!

自分自身も「何か言ったら刺されるな」とか「そんなこと言うなら自分でやって」みたいな先読みをしてしまって、自分の意見を素直に言えないことは何万回とあったはず。もちろんの自分の弱さも大問題ではありますが、組織として心理的安全を担保できていないことも課題であり、組織の成長の大きな足かせになってしまいます。どんな意見・アイデアでも構わないので素直&本音で話し合える組織は、素敵な課題を設定し、一丸となって解決に走ることができます。めちゃくちゃスピーディです。

心理的安全をどうやってつくる?

こういった雰囲気を組織に醸成するためにはどういう方法があるのか?エドモンソンさんは”心理的安全性を高めるリーダーの行動”として、以下を挙げています。

1 直接話のできる、親しみやすい人になる
2 現在持っている知識の限界を認める
3 自分もよく間違うことを積極的に示す
4 参加を促す
5 失敗は学習する機会であることを強調する
6 具体的な言葉を使う
7 境界を設ける
8 境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる

金田の経験を踏まえた”読み替え”は後ほどやりますが、心理的安全の高い組織では、これ全部できていますね。そういう組織は、本当にみんな意見活発。ときに「?」っていう発言もありますが誰も気にしない、というか笑って次に進みます。

では次に、これらの”心理的安全性を高めるリーダーの行動”をスタートアップ組織に読み替えて、具体化してみます。

1 直接話のできる、親しみやすい人になる

親しみやすいかどうかは受け手によって変わりますが、とにかくリーダーがメンバーと直接話をすること。朝会、夕礼、会議、日々のコミュニケーション、ランチ、飲み会、そして1on1とか。話す内容(質)よりも機会(量)を重視です。

2 現在持っている知識の限界を認める

スタートアップはそれぞれの得意領域をもった人材で構成されるべきです。なので、リーダーや社長よりも、その得意領域では一歩も二歩も先にいるメンバーがたくさんいます(いるべきです)。そのときに「Youの方が知識も経験も自分より豊富。任せるよ!」さらには「自分には分からないし、できない。助けて~!」と言えるかどうか。尊敬しているリーダーに「助けて~」と言われて、助けないチームメンバーなんていないですよね。っていうか燃えますよね!
個人的には、ここができる組織とできない組織で、組織の雰囲気というか、空気感が違っている感覚があります。完全に感覚の話ですが…

3 自分もよく間違うことを積極的に示す

スタートアップは難しい課題に挑戦する組織であり、失敗はつきもの。その際にリーダーが率先垂範して「こういう失敗をしちゃったよ」と言えること。メンバーは「リーダーも失敗してるし、自分も失敗するかもしれないけどまずはやってみよう(もしくは発言してみよう)」とか「自分も失敗するくらい、でかいことやってやろう(または言ってみよう)」と考えるようになります。安易に失敗を容認しているわけでなく、失敗を恐れてすぐに動けない状態をなくすこと、無難な落としどころに合わせていく癖をなくすこと、が主な狙いです。

4 参加を促す

プロジェクトや会議に積極的に参加してもらうことですが、ここで勘違いしてはいけないのは参加させることが目的ではないということです。リーダーが知識の限界を認め、リーダーも失敗する存在との認識があれば、リーダー一人でやるよりもメンバーに頼る方がよっぽど効果的。「メンバーが参加することで確実にアウトプットが良くなる」から参加を促すわけであり、メンバーの意見が大切・有効であることが伝わってこそ、心理的安全を高めていきます。

5 失敗は学習する機会であることを強調する

上記の「3自分もよく間違うことを積極的に示す」につながりますが、失敗から学ぶこと。単に失敗しただけでは、それは個人としても、組織として何も成長していません。失敗から学び、自分が同じ失敗を繰り返さない、その失敗を共有して他者が失敗しないようにする、新しいやり方やニーズを見つけて成果を出す、という成長が大事です。ここまでできれば失敗でなく、成功の過程になります。これを何度もメッセージとして発信することが失敗への免疫をつくり、心理的安全の高い組織へと成長していきます。

6 具体的な言葉を使う

「具体的な言葉を使う」だけでは意味が伝わらないと思います。まさにこういうことですね。伝わる言葉を選ぶということ。リーダーが曖昧な言葉(相手に真意が伝わらない言葉)でチームに働きかけると、メンバーはまずその真意を探り出します。心理的安全が高い組織であれば「リーダー、何言っているか全然分かりません」と言えるんですが、そこまで高い組織でないと「分かってないのは自分だけかも」「意味が分かりませんでした、って言ったら怒られる・バカだと思われる」とか、を考え始めます。もちろん本人のキャラクターも影響しますが… ただ、これが組織ってやつですよね。結局、意図が把握できずに発言できなかったり、発言したけど意図が違っていたりして期待に応えられなかったと感じてしまうと、心理的安全がグッと下がります。こういった状態をなくすためにも、リーダーは相手に伝わる言葉を選び、単刀直入に伝えることが大事です。

7 境界を設ける

「境界」って何だ?と金田も理解できなかったのですが、これは「Value(価値観)」のことです。スタートアップでは自分たちのValueを定めているケースが多いですが、そのValueを使って組織を運営するということです。Valueを設定すると心理的安全が高まる?という疑問については、下の8番の項目で説明します。

8 境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる

「責任を負わせる」というのは少し「うっ」と感じてしまう表現ですが、もう少し柔らかく且つ逆の視点で読み替えると「Valueの体現を求める」ということです。メンバーは仕事の仕方についてValueという明確な境界があれば、その境界に基づいて仕事を進めることができるため、仕事の仕方というプロセスに余計な不安を抱くことはありません。こうして心理的安全は少しずつ高まっていきます。

おわりに

心理的安全は意外と古くから研究されてきた領域ですが、それを今の組織や施策に織り交ぜていくと面白いことがたくさんわかるし、何よりもスタートアップ組織の成長に大いに影響を及ぼすと感じています。今後も「要チェックや!!」って感じですね。

1on1で使える3つの「働きかけ」

スタートアップの人事・組織に携わっていると「1on1ではどんなことを話している?」とか「1on1ではどのようにコミュニケーションを取ると良い?」なんていう話をよく聞きます。今回は、後者のコミュニケーションの取り方について考えてみます。1on1はホットな話題なので、情報がたくさんありますが、その中でも1on1と言えば”ヤフー”さんとよく言われる通り、『ヤフーの1on1』が大変参考になりました。この『ヤフーの1on1』を参考にして、あと自分の経験を踏まえて整理してみます。

1on1でコミュニケーションを取る際、『ヤフーの1on1』でも紹介されている3つの「働きかけ」を意識的に使えると、1on1をスムーズに進行できて、お互いの認識の擦り合わせにも効果的です。3つの「働きかけ」とは、
・ティーチング
・フィードバック
・コーチング

よく耳にする言葉ですが、その定義はそもそも曖昧だったり、人によって違っていたりするもの。そこで意味と使い方を整理します。

ティーチング:正解を教える

まずティーチングとは「教える」こと、つまりそこには正解となるルールややり方が決まっています。例えば、会社の就業規則で決まっている諸々のルールや社会一般的なルール、これを「教える」ことがティーチングです。ティーチングでは、相手が知らなかった知識や技術を獲得することが目的となるため、相手が自分で考えても分からない場面(要は知っているか、知らないか、の場面)で働きかけることが望ましいです。

あと大事なことは、ティーチングの場面では「教えて終わり」ではなく、自分で調べる方法や自分で学ぶ方法まで教えることです。つまり、ティーチングの再発防止に向けた仕組みをつくることです。経費精算のルールを教えることになった場合に、ルールを「教えて終わり」ではなく「ここに会社のルール全般が整理されているから、もし分からないことあったら確認してみるといいよ」とか「入社オリエンに経費精算の説明パートに入れておこう」とか。こうやってティーチングの場面を組織的に減らしていきます。

フィードバック:意見(正解ではない)を伝える

次にフィードバック、これは「伝える」こと。正解となるルールややり方に照らして教えるのではなく、自分が素直に感じたことを相手に「伝える」ことを意味します。「どういう状況で、どんな行動・振る舞いの結果として、自分は何を感じたのか?」を相手に「伝える」こと、ときに相手にとって耳の痛い内容になることもあります。このフィードバックの目的は「自分がどう見られているか?」を知ることであり、相手が気づいていなかったり、認識の違いがありそうな場面で使います。1on1での「働きかけ」として紹介していますが、原則はリアルタイムフィードバック。つまり、その場でフィードバックすべき事象が起きればすぐにフィードバックすることが大切です。

自分の経験としては、フィードバックがうまいな~と思う人は、厳しいことでもズバッと言ってくれる(自分は結構へこむけど)、そして変なフォローや無駄な褒めをしない(さらにへこむ)。この状態を経ることで、改善することだったり、自分が変わることにコミットできる気がします。一方で、厳しいこと言われているのに「でも~の件は本当に助かっているから」とフォローされたり、「~は良かったよ」と褒められると、改善してほしいのか、褒められているのか、が分からなくなったり、フォローがフォローになってなかったりで気を遣われている自分が惨めに感じたりで、何もいいことないよな~と感じたりしていました。

コーチング:意見(正解ではない)を引き出す

最後にコーチング。これは「(質問や傾聴を通じて)引き出す」ことです。自分の考えや思いに自分自身で気付くことを他者がサポートしてあげることです。「教える」でも「伝える」でもなく「自分自身で気付く」という点がポイント、よってコーチングする場面は、相手が自分で考えれば分かる場面、または気付く場面ということになります。そして、コーチングでは沈黙の時間が非常に大事、自分自身で考えて気付く間の沈黙はまさに成長している時間です。この沈黙の時間に耐えられず、話しかけたり、安易にフォローすることはご法度。もし考えても何もアウトプットされない場合は、本人の問題ではなく、 相手のレベルを見極めることができていないという意味で質問した方の問題と考えます(コーチングでなく、ティーチングすべきだったかも)。

またコーチングがうまくいっていることを証拠付ける発言として「今、自分で話していて気付いたんですけど~」があります。まさに「気付く」瞬間を自分で説明している場面であり、こういった発言が自分の1on1で出ているかどうか、振り返るために使ってみてもいいかもしれません。

3つの「働きかけ」を使い分ける

1on1で大事なことは、この3つの働きかけを効果的に使い分けること、そして自分と相手がお互いに今話していることが3つのうちのどの「働きかけ」を意図しているかを共有できていることです。例えば、ティーチングすべき場面で、お互いに「これはティーチングだよね」という共通認識を持てている、これが理想です。この共通認識の有無で、働きかけに対する相手の腹落ち度が変わってきます。

おわりに

共通認識をつくる簡単な方法として、1on1をやり始めた頃は共通認識をつくる枕詞を置いてコミュニケーションすることも有効です。「これはティーチングだから覚えておいて下さい、これは~」とか「今から話す内容はフィードバックだからね。「伝える」ってことだからね。まずは受け止めて下さい、この前の~」とか「コーチングしてみます。自分で考えてみて下さい、~はどうだった?」とか。少し面倒ではありますが、1on1導入期の限定施策ということで、慣れてきたら枕詞をなくしていくことで問題ありません。