抽象的なワードである「カルチャー」と「バリュー」。
スタートアップでは日常的に使われるため、定義について認識合わせをしておくことが大切です。
シンプルで分かりやすく、現場で使える定義を、2冊の本を参考にして考えました。
バリューは、カルチャーの一部
構造を図解しました。
カルチャーは「文化」、バリューは「価値基準」、バリューはカルチャーの一部です。
先に、バリューについて定義します。
バリューは抽象的な「価値観」と具体的な「行動指針」で構成されています。
価値観は、認識・思考・判断・行動の基準と定義します。
例えば「AかBか」で判断に迷った場合、価値観に基づき、判断します。ある価値観では「A」となるし、別の価値観では「B」となるかもしれません。
価値観に正解はありません。
行動指針は、価値観を具体化した基準と定義します。
例えば「チャレンジ」という抽象的な価値観に対して「ひとの失敗を責めない」という具体的な行動指針ができます。
1つの価値観に対して複数の行動指針を設定することで、価値観だけでは起きてしまう認識のズレを防ぐことができます。
カルチャーは「暗黙の仮定」であり、「行動」である
シャインの『企業文化』、ホロウィッツの『WHO ARE YOU』、この2冊でカルチャーを理解します。
シャインの『企業文化』より引用します。
文化は、目に見える行動、儀式、風土といった文物、および、標榜されている価値観に現れるが、その本質は、共有された暗黙の仮定である
文化は社会的学習の産物である。物の考え方ややり方は、共有され、それがうまくいくことにより、文化的要素になっていく。そして、その成功が続くことで、物事の本質やあるべき姿に関する、暗黙の仮定となるのだ
E.H. シャイン著 『企業文化 改訂版: ダイバーシティと文化の仕組み』
「暗黙の仮定」がキーワードのようです。日本的に言うと「阿吽の呼吸」でしょうか。
次にホロウィッツの『WHO ARE YOU』より。
最も強固で長続きする企業文化は、言葉ではなく行動に基づく。
トップがいないところで人々がどんな判断をするかこそが、企業文化というものだ。社員が日々の問題解決に使う一連の前提が、企業文化だ。誰も見ていないときにどう行動するかが、企業文化だ。
リーダーの本当の価値観を反映するものでなければ文化は定着しない。ただの耳障りのいい言葉は文化にならない。なぜなら、リーダーの行動によって、つまりリーダーが手本になることで文化はつくられるからだ。
文化は一度の判断ではない。長年の様々な行動が積み重なるうちに自然にできあがる決まりごとなのだ。
文化は行動だ。
ベン・ホロウィッツ著 『Who You Are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』
文化の説明が凝縮されています。
「誰も見ていないときにどう行動するかが、企業文化だ」や「長年の様々な行動が積み重なるうちに自然にできあがる決まりごと」というのが、シャインの言うところの「暗黙の仮定」だと解釈できます。
そして「文化は行動」であると。
「行動」という共通認識が持てると、大きな認識齟齬は生じないと思います。
バリューは、目的を実現するための手段
バリューは、ビジョンやミッションを実現するための手段です。
ビジョンやミッションを実現するために、どういう価値観・行動指針が必要か、を考える必要があります。
特に組織として推奨される行動を言語化し、日々フィードバックすることでバリューは体現され、カルチャー(暗黙の仮定)まで落とし込まれていきます。
バリューを言語化する際、ビジョン・ミッションだと抽象度が高いため、間に「戦略」をワンクッションはさむことも有効です。
ビジョン・ミッションを実現するための「How=戦略」、それを実現するためのバリューは何か?という思考プロセスです。
戦略が変われば、バリューも変わる可能性があります。
カルチャー・バリューは、簡単にマネできない
カルチャーやバリューを、言葉・ワードだけを真似ることはできます。
ただし、カルチャー(文化)は「暗黙の仮定」として体現される「行動」なのです。
言われてやるレベルではなく、条件反射的に体現されるレベルが、カルチャーであり、バリューです。
簡単にマネできるものではない組織能力なのです。