「総額人件費管理」を考え始める前に

総額人件費管理、とても難しいテーマです。

会計の基礎知識に、人事の専門知識を掛け算する形で取り組まなければなりません。

 

総額人件費管理

様々な専門書が出ていますが、人事の立場で書かれている内容がほとんどです。

要員管理や管理指標(KPI)など、知識として知っておく必要があります。

 

ただ、読んでいて難しいのは、会計はルールでガチっと決められているので最終的に数字が出てきて、それを過去と比較したり、他社と比較することで考察することができます。

一方、総額人件費はルールが曖昧だったり、決まっていない部分も多いため、計算に迷ったり、他社比較しにくかったり、という難しさがあります。

 

自分は15年ほど前に「労働分配率」という指標について調べたのですが、わかるようでわかりませんでした。

付加価値という定性用語を定量的に定義して、インプット(人件費)に対するアウトプット(付加価値)の量・質をKPIにしたものだと捉えています。

付加価値の計算方法として

  • 社会経済生産性本部方式
  • 中小企業庁方式
  • 日本銀行方式
  • 大蔵省方式
  • 通産省方式

などと様々な方式があり、これを見ただけでも面を食らってしまうと思います。

一般的に浸透しているとは言い難く、取り扱いの難しい指標だな、という印象が強く残っています。

 

極論を言えば、売上や利益に対する人件費の比率であったり、一人当たりの売上・利益など、シンプルな指標で見れば問題ないとも思います。

ただし、正社員やパートタイム、業務委託など細かい部分を突き詰めていくと「人員一人」の定義が必要であったり、社外へのアウトソースや業務システムの活用など人員・人件費を代替するコストの取り扱いなど、変数が多い・大きいため、定義をきちんとやらないと無邪気な突っ込みがたくさん入って、沼にはまっていくことが予想されます。

 

ここに経験値が役立つのかもしれませんが、この数字を見ることが本当に重要な仕事なのか、は自分にはまだわかっていない部分もあります。

 

「人事」からアプローチするのではなく「会計」からアプローチする

自分の失敗談を加味すると、人事として人事的観点で人件費を扱おうとすると、木を見て森を見ず、になると考えています。

総額人件費だーと、詳細について考え始めると、細かい定義と数字の収集、現場の理解と膨大なタスクが積み上がっていきます。

 

自分は、本来考えるアプローチは会計であり、まずは財務諸表に基づく売上・利益・コストから、会社を数字で捉えることが先だと考えています。

つまり、大きな視点でものごとを捉えるということ。

当たり前の話なんですが、「人事」という立場にいると、この視点が抜けがちで、人事の専門領域に飛び込みたくなっていく気持ちが全面に出てしまいます。

 

シンプルに粗利や営業利益を紐解き、会社としての数字に関する健全性を分析します。

気になる点について分解し、現場の状況を突き止め、1つ1つ問題を抽出していく。

その中の1つに、比較的大きな割合を占める「人件費」がある。

その詳細分析を進めるにあたり、人事の専門性を駆使して、自社の戦略に沿った切り口で分解していく。

ここに知識だけでなく、センスが求められる、いわゆる優秀さの違いが出てくるポイントかもしれません。

 

利益率を上げる

人件費に触れたら、最後は「利益率」を上げていくことがゴールになります。

人件費をモニタリングする、人件費を下げる、要員管理する、ヘッドカウントを減らす、雇用ポートフォリオを変える、外注する、といった多岐にわたるアクションは、一義的に過ぎません。

当たり前ですが、人件費を下げて売上も下がれば(人事としての)価値はありません。

逆に人件費を上げて、その分、売上を上げても(人事としての)価値はありません。

 

生産性を上げるために、費用における人件費を分解し、複雑な切り口から経営に資する考察を導き出すことが、総額人件費管理のメインミッションだと思います。

そう考えると、人事的には響きそうな「総額人件費管理」というワーディングが思考や作業をミスリードしてしまうように感じなくもないような。

人件費マネジメントというワードも「人件費」にフォーカスが当たってしまい、利益や生産性への観点が弱まってしまう気がします。

 

参考図書

 

全体的に流し読みすると、いかに人件費管理の標準化・体系化、さらに経営現場での活用・実践が難しいかが体感できると思います。

 

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