代償分割による不動産相続の経験

一昨年から去年にかけて、初めて相続を経験しました。

正確に言うと、学生に頃に祖父が亡くなり、田舎の土地(たんぼ)を一部相続したことがあるのですが、そのときは、そんな話があると簡単に説明を受けたぐらいの記憶です。

紙1枚にサインをしたかもしれません。

 

今回は、世間一般でいうところの相続を経験しました。

大変さをダイレクトに経験したので、目先で役立つことはないだろうけど、知っておいて損はない程度のメモを残します。

 

(1) 相続に関する一般知識

いざ相続となった際、ストックできている知識はあまりないと思います。

少なくとも自分は、ありませんでした。

相続税がかかる、不動産の相続は大変、遺産とか遺言書とか、揉めるとか。

知識がないことで、やや怖さがありました。

まずリサーチする中で、以下の一般的な情報を得ました。

 

1. 死後1年以内に相続税を支払う

税金のルールです。

現金、不動産、保険といった資産と負債を洗い出し、相続税を算定し、申告・納付します。

自分は、約10ヶ月後にファミリーマートで納付しました。

 

2. 控除(基礎控除)がある

相続税の算定には、法定相続人(主に配偶者や子ども)の数に応じた控除があります。

資産と負債にプラスマイナスに対して控除を当てはめ、最終的に出てきた額に税率をかけて相続税が算定されます。

自分のケースだと、配偶者と子ども2名で「4800万円」の控除でした(法定相続人3人: 3,000万円+(600万円×3)=4,800万円)。

 

3. 遺言書=遺産分割協議書

相続と聞くと「遺言書」を思い浮かべるかもしれません。

要するに、生前に遺産をどう分割するか、を書き起こした文書です。

実際に相続の場面では、「遺産分割協議書」としてドキュメント化され、この文書を作成・押印し、保管することになります。

契約書みたいなものです。

 

4. 相続を放棄する場合は死後3ヶ月以内に手続きする

相続税を納めるのが死後1年以内、相続放棄は3ヶ月以内です。

期限があり、遅れるとペナルティ(延滞税)があるそうです。

相続では、この期限がわりに怖さにつながりました。

ちなみに相続放棄は、相続する資産よりも負債が大きい場合に選択するオプションのようです。

あとは面倒な相続に関わりたくない、という場合にも取り得るオプションでもあります。

 

5. 不動産の相続は面倒

どの本・ウェブサイトにも書かれていますが、現金は分ければいいので簡単ですが(どう分けるかで揉めたら簡単ではありませんが)、不動産は簡単に分けられません。

自分の場合も結局、不動産をどうするのかがボトルネックになりました。

現実的にお金が絡んでくるし、お互いの心情もあるし、ルールが複雑かつ曖昧ゆえ、この領域に関与すると相当、心理的に削られます。

 

(2) 相続の経験値

実際に経験してわかったこと・感じたことを書きます。

あくまでも個人の意見として書きます。

 

1. 相続に強い税理士さんに相談・依頼する

専門家に依頼しました。

自分の会社の顧問税理士さんにお話したところ、相続は税務領域の中でも特殊な領域であり、できる・できないがあるということ。

顧問税理士さんの得意領域ではなく、以前の職場で同僚だった知り合いをご紹介いただけるとのこと。

結論、その方が自分にとって頼れる存在になりました。

進行や計算をすべてお願いできたこと、さらに自分にとっては不動産に対する客観的なアドバイスがとても助かりました。

「そうだよね」と「そうなんだ」を繰り返しながら、最終的に納得のいく判断ができたと考えています。

 

この相続という領域は、本当に複雑です。

複雑にすることでどこかにメリット(利権)があるんだろうな、と勘繰ってしまうほど。

近しい人の死も絡んでいる中、本当に関わりたくない領域です。

専門家にお願いして良かったと心の底から思います。

 

ちなみに、相続税の申告を税理士さんに依頼する際の料金(相続税申告報酬税額)は、税理士報酬規程というもので決まっているそうです。

「遺産総額」と「財産を取得した方の数」の2軸で決まります。

例えば、遺産総額が5,000万未満、財産を取得した方の数が2人の場合、相続税申告報酬税額は528,000円(税込)です。

 

2. 遺言書は必須

自分が死ぬときは、遺言書を残そうと思いました(遺産があれば、の話ですが…)。

ただでさえ、近しい人が亡くなり、心に傷を負っている状況で、相続対応をしなければならないのは、本当につらいです。

遺言書があるかないか、だけでまったく状況が変わってきます。

生前、自らの意思で遺言書を残そうと思わない限り、なかなか動きませんし、周囲から、こんな話をさせるのは気が引けます。

一度経験すれば、遺言書の必要性は強く感じるはずです。

 

3. 想定外の事実

相続の話を進めることで、議論となっていた不動産に「抵当権」がついていることがわかりました。

本来、家族であればこういった話もしているのかもしれませんが。

自分の場合、税理士さんより指摘を受けて知りました。

しかも、「根抵当権」。

「コン・テイトウケン?」と、はじめは読みました。

なんだ、これ。

正しくは「ネ・テイトウケン」だそうです。

 

自宅を購入したりする際に設定される「抵当権」は、1つの借入に対する担保として設定されます。

一方、「根抵当権」は複数の借入に対する担保として設定できます。

事業の運転資金など、継続的に取引が行われるケースなどで、何度も手続きをすることを省略するために使われる抵当権のようです。

根抵当権についても、根抵当権がついていることも知りません。

 

根抵当権の意味はさておき、結局、こういうことが起きれば、その背景を把握した上で関係者を巻き込み、根抵当権を抹消する動きを取らないといけません。

ここで普段、相容れない人たちと関わることになるのです。

紙、電話、FAX…

思い出すだけでも、ストレスです。

こういう対応が入ると、思いのほか、時間がかかります。

 

ただ、根抵当権の抹消と相続税の申告は切り離して考えることができます。

根抵当権の有無にかかわらず、税額の計算は進められるので。

こういうとき、自分で調べるには限界があります。

専門家に依頼することのメリットです。

 

(3) 不動産の代償分割

不動産について、当初は換価分割を考えていました。

換価分割とは、不動産を売却し、その売却資金を分けること。

お金に換えて相続するということです。

これが一番わかりやすい。

 

でも、売却手続きが面倒であること、何より本当に売ってしまっていいのか、という感情面のひっかかりがありました。

そこで出てきたのが代償分割。

代償分割は、その不動産の価格を法定相続人で合意し、法定相続人がその金額で買い取るというスキームです。

例えば、不動産の価格を4000万とします(どうやって4000万とするのか、は後ほど)。

法定相続人は、自分も含めて3人とします(配偶者と子ども2人)。

子どもが不動産を代償分割で買い取る場合、配偶者に2000万(4000万×50%)、子どもに1000万(4000万×25%)を支払います。

パーセントは法律により決まっています。

この内容を遺産分割協議書で定め、文書で合意・押印し、権利証を受け取りと同時に資金を振り込みます。

最終的に不動産登記(所有権の移転)を行い、完了です。

※ 自分の場合、ここに例の「根抵当権」も一緒についてくることになります。

 

では、どうやって金額を決めるのか。

つまり、上記の「4000万」はどのように導き出したのか。

今回は、税理士さんのアドバイスにより「路線価」を参考にして、金額を設定しました。

最終的に、金額は税理士さんに決めていただきました。

 

路線価は、市場での売却価格よりも安いと言われています。

不動産を取得する人にとって有利な提案になっているのではないか、という懸念があります。

換価分割にして、市場価格で売却した方が高い金額となるのでは?という話です。

 

しかし、もし市場価格で売却するとなると、業者さんとの面倒なコミュニケーション・交渉が発生します。

そして「手数料」も。

手間と時間とコストがかかるわけです。

一方、代償分割であれば相対的に手間も時間もコストも低いと考えました。

もちろん金額に関係者の合意が得られること、代償分割に必要な資金を用意できることが前提ではありますが。

 

今回のケースだと、換価分割の方が面倒ではあるものの、きれいさっぱり収まるケースだったかもしれません。

でも、心理的に売却に対する抵抗が強かった。

目に見えない気持ち・感情によって、大きなお金を動かし、リスクを取るべきか、相当悩みました。

最終的にはリスクを取る判断をしたのですが、お金は論理だけでなく、感情で動くものだと身をもって体験しました。

 

この代償分割について、自分で調べて進めるには限界がありました。

税理士さんとしての代償分割の経験はそれほど多くないと仰っていました。

たしかに代償金(代償分割の資金は代償金と呼ぶそうです)を工面することはそう簡単なことではないですし。

ちなみに代償分割の支払いは分割払いにしました(支払いは既に完了済)。

 

代償金の支払いや相続税の納付まで結局、10ヶ月かかりました。

一大プロジェクトです。

自分の場合は、やや特殊事情だったので、ここまで大変だったかと思う一方、もっと揉めるケースもあるだろうし、書類がないとか見つからないとか、起きているんだろうな、と思うと終活の重要性をこの年で感じざるを得ませんでした。

生きることよりも死についてばかり考えていた時期から、ようやく解放されつつあると感じる今日この頃です。

 

また、身近な人がなくなることで生じる傷は、時間でしか解決できないと思うに至りました。

 

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