人事に関するアンケートを実施する際、記名でしょうか、匿名でしょうか。
もちろん質問内容や情報公開範囲(閲覧権限)次第かもしれません。
仮に以下の質問を、経営層(取締役・CXO)と人事、直属の上長(マネージャー)に公開する場合はいかがでしょうか?
- 自身の現在の等級に納得している
- 自身の現在の報酬に納得している
私は、基本的に回答者の名前を伝える記名式で実施することを推奨し、実際に実施しています。
記名の理由は、フェアに会話することを前提に、人事制度や運用を改善し、人事に対する納得感を向上させるためです。
逆に、匿名を推奨しない理由は、回答結果を確認しても打ち手が考えることが難しく、改善につながらないためです。
スタートアップは、まだ組織規模が小さいため、個人対応が必要です。
下手に組織単位で分析して、それっぽいことを提案しても「So what?」になりがちだし、結果として効果も見えにくいのが経験談です。
また、中途採用による組織づくりのため、新卒一括採用で培養された組織よりも各個人の特性は様々であり、組織や属性単位で分析しても「それっぽい」ことしか分析できないことも多々あります。
「あなたの分析力が問題でしょう」と言われれば、それまでですが、、、
組織単位で仮説を巡らせて、事実でない想像で会話を膨らませていくよりは、記名式で気になった回答やコメントについて本人と直接会話し、問題や原因を特性する方が効果的であり、建設的だと考えています。
もちろん、声を聞いたもののすべてを反映・改善することは難しいため、メンバーには事前に期待値調整しておくことも必要ですが、現場の声を聞くことが、何よりも組織や制度の改善につながります。
また、特にフリーコメントのアンケートで顕著ですが、匿名にするとわりに無責任な愚痴や不満をとうとうと記載してくる敬意を欠いたカスハラコメントも出たりします。
アンケートなので、と勘違いしているのか、改善につながらないようなコメントを処理するのはお互いに無駄です。
記名式だと、こういった発言はなくなります。
お互いに健全な改善活動を目的にしたアンケートにすることができるのです。
別の見方をすると、そういったある種の問題行動に出る社員を特定するには、匿名のアンケートは役立ちますが、それは多くの場合、人事メンバーしか閲覧することができず、現場と人事の情報の非対称性を高めてしまうという問題も起きます。
人事がこうした問題を囲い込むと、貢献や実力に見合っていない権限や権威をもってしまうため、個人的にはこの状態は避けたいと思っています。
以前、ネットフリックスの本でもアンケートは記名式を推奨しているような内容を読んだ記憶があります。
お互いに率直にフィードバックできる環境が大事であり、匿名はそのようなカルチャーを阻害する要因になり得ると。
これには自分も合意です。
こういった話をすると、「そもそもアンケートなんてしないで、日々の1on1で話せばいいのでは?」ともっともな提案をしてくれることもあります。
本来論であり、理想ではありますが、全員がアンケートではなく、口頭の会話でこういった話をすることは、なかなかハードルは高いですし、その結果を振り返るためにもアンケートを実施した方が適切と考えると、年に1‐2回の頻度で全社的にアンケートを実施してしまった方が効率的だと考えています。
自分自身が20代、30代ぐらいだと、アンケートって当然「匿名」だよね、と考えていました。
匿名にすることで、本音が出てくるだろう、と。
しかし、今はこういった考えはなくなりました。
本音が出てきたとしても対策を講じることが難しいということ、そもそも匿名だから本音が出るというのは不健全であること、をスタートアップの現場を通じて学びました。
しかし、もちろん記名式を推奨しても匿名で実施する場合もあるし、匿名でないと本音を言わないと意見されることも多々あります。
これは価値観の違いです。
この価値観がマッチする組織でこそ、自分が関与すべきであり、適切な支援ができます。
クライアントとの相性を測定する1つの指標になるかもしれません。