最近、問い合わせを受ける中で、こんな声を聞く機会が増えてきました。
「本を参考に人事制度を設計して、導入までこぎつけたが、この部分について悩んでいるので、教えてほしい」
とても嬉しい言葉です。
『スタートアップのための人事制度の作り方』を出版して、1年半弱。
手に取って読んでいただき、現場で試していただいていることは、そもそもの本のコンセプトである「実践」に合致しており、出版して良かったなと心から思うことができます。
読んだけど、結局、抽象的で何を言っているのかわからない。
言っていることはわかるけど、具体的なハウ(HOW)が見えない。
ありきたりの内容で、他の本と書かれていることが同じ。
自分がこういった本をたくさん読んできたからこそ、本当に役に立つ書籍を書きたかった気持ちが強くありました。
情報が陳腐化していく時代において、情報の出し惜しみに価値はなくなりました。
節度ある範囲で、出せる情報は隠さず、惜しみなく公開していく。
公開することでフィードバックが起こり、さらに質の高い情報へと研がれていく。
この状態こそ、自分の目指す情報流通の世界です。
これまでは、自分自身がハンズオンで制度設計に取り組み、運用もサポートしてきました。
この形があったからこそ、出版できる知見を蓄積できました。
ただ、どうしてもリソースに制約があるため、すべてのご依頼に対処することはできません。
そうした状況で、この出版によってコンサルティング業の幅がひろがりました。
自分がハンズオンで関わるのではなく、クライアント主体で人事制度の設計・運用をリードし、アドバイザーの立場で関与する形です。
ときに、ハンズオンで支援し、グッと入り込む場面もありますが、基本的にはクライアント組織における人事のケイパビリティやリテラシーを高める方向で、自分は動きます。
もちろん人事制度ハンドブックを見て、設計することもできますが、お金を払って本を読み込んでくださっている方は、読み込みの度合いが違います。
こちらが忘れていたような箇所について、鋭いツッコミをいただくこともあれば、本質的な「そもそも」について上質な問いを投げかけてくれることもあります。
常にこちら側も新しいプロジェクトや思索によって、制度設計の型も進化しているので、そうしたノウハウや知見も提供し、新旧融合でよりよいアウトプットを目指しています。
問い合わせを通じて、議論させていただくことで、自分の発見にもつながりますし、クライアントの問題解決にも貢献できます。
win-win のプロセスが構築できていることに、改めて出版のすばらしさを感じるとともに、苦労した甲斐があったと思います。