出典:労働新聞3448号(2024年5月13日)
従業員数:14,147名
売上:3,587億
等級体系 | 役割等級 管理職(L1‐5) 非管理職(T1-5) 店舗人材は非管理職 役割の違いで10のコースを設けコースごとに等級の範囲を設定 例えば、医薬営業職はT3-5/L1-4、医療事務職はT1-T5(ただしL1-3は例外的に使用可)、薬剤師職はT3-5(ただしL1-3は例外的に使用可)、経営職はL2-4など |
等級要件 | 等級定義書がコースごとに設定 ①等級定義概要 ②業務難易度 ③業績マネジメント ④人材マネジメント ⑤知識・スキル |
昇格 | |
降格 | |
役職定年 | |
評価期間 | 半年に1回 |
評価者 | |
評価段階 | 4つの評価を100万満点で計算し、評価記号に変換。等級別にウエイトあり(上位等級ほど成果を重視) (例) T3:アイン理念実践度30、知識・スキル10、成果・業績30、その他成果・業績30 L1‐4:アイン理念実践度30、知識・スキルー、成果・業績40、その他成果・業績30 |
評価記号 | SS・S・A・B+・B・B-・C |
評価プロセス | 同一コース・同一等級内で相対評価を行う |
成果評価 | ①成果・業績(MBO):短期的な目標に対する評価 ②その他成果・業績:目標以外の成果を評価 |
行動評価 | ③「アイン理念実践度」:8項目を6段階 ④「知識・スキル」:できた・できないの2段階評価(対象はT1-3で、接遇や言葉遣いなど) |
報酬レンジ | 役割給は等級別定額(T5は5万、L1は10万、L5は20万など)、評価給はレンジ給。どちらも全コース共通の金額。 |
給与項目 | 役割給、評価給、ライフプラン手当(確定拠出年金の掛金) 資格手当(薬剤師は5.5万)、専門資格手当、担当手当(=役職手当)、地域手当(薬剤師の求人が集まりにくい地域で支給) |
給与改定頻度 | 年1回、半期2回分の総合点の平均で、評価記号を決めて、評価給の昇給に反映 |
昇給 | 2024年3月では、全社平均6%の昇給を実施 |
降給 | 最低評価でも降給は無し |
賞与 | ?(記述がなかった) |
調整措置 | 2000年代前半から企業買収を繰り返し、20年で店舗数は8倍の約1200店舗、従業員数は10.5倍の約1.5万人へ成長。その過程で調整給を支給。 ・調整給①M&A転籍入社、中途入社時の処遇調整 ・調整給②過去制度の時限対応があるもの(有期) ・調整給③諸事情により一時的に支給されている手当等(昇給と相殺) |
その他 | 転勤の範囲と手当:薬剤師の場合 ・ナショナル社員(異動制限なし):10万+社宅可 ・広域エリア社員(全国を複数エリアに分けてそのエリア内で異動):4.5万+社宅可 ・狭域エリア(おおむね1つの都道府県内で異動):1.5万+社宅可 ・自宅通勤社員(自宅から90分の範囲内):0円+社宅不可 ※一度変更したら3年間は変更不可 |
所感
やや複雑に見える仕組みだが、よくよく考えるとそうでもないかも、と思える点がある。
評価軸が4つ(アイン理念実践度、知識・スキル、成果・業績、その他成果・業績)あるが、知識・スキルは下位等級のみ、その他成果・業績は「目標外」の成果なので複雑さは緩和される。
また、知識・スキルについても「できる・できない」の2段階で率直なフォードバックを促しており、成長が期待される下位等級者に対して真摯な制度だと見えた。
等級制度をコース(≒職種)分けして、10段階のうち、どこまで昇格できるのか、という範囲を明確に設けている点は参考になった。
10段階あるものの、薬剤師が最高位の等級まで昇格できるわけではないと制度で伝える点も真摯さがうかがえる。
ただし、例外措置を設けている点は現実に即した運用であり、うまさを感じた。
報酬も等級別手以外の役割給とレンジの評価給とシンプルであるが、全コース共通の金額になっている点は、やや不安を覚えた。
コース間の異動を想定しているのか、いや薬剤師という専門職であれば異動はない、なぜ一律の水準なのか、と思っていたが、資格などの「手当」で対応している点で腹落ちした。
ベース給は、全コース一律として手当で差をつけるところにシンプルさを追求したと思う。
人事制度について、20年以上改定してこなかったとあり、その間に会社が急成長していることを考えると、よくやってこれたな、の一言しかない。
20年間の課題が新制度で解決されるよう随所に工夫が施されているように感じた。
最後に、転勤の仕組みは、店舗ビジネス x 専門性(要資格者)の観点で非常に参考になった。
ここまでつくり込む必要があるんだ、という正直な感想。
新店舗設立時に、地元で薬剤師が採用できない場合に他県から転勤してもらうための投資コストとして10万の手当が加算されている。
具体的に記述されていなかったが、おそらくこれは月額定額の支給額である。
相当なコストだと思う。
思ったことは、転勤発生に対してショットで支払う案はどうか。
転勤発生するかしないかに関わらず固定費で月10万を支給するのではなく、もし転勤を受け入れてくれる方に対して、都度、一時金を支給する格好だ。
例えば、転勤で300万とか。
これなら行っても良いと思う方がいるかもしれないし、それでも転勤できない、という方もいる。
転勤の事実が発生したら支給する、という方が合理的でシンプルな気もするが、どうなのだろうか。