人事に関わっていると「人材育成」というテーマの重要性、大きさを常に感じています。
特に、前職で大企業と接点が多かったとき、人事の主は「人材育成」に通じるところがあったと思います。
ただ、今、スタートアップの環境にどっぷり浸かっていると、「人材育成」というワードよりも「成長支援」の方が相応しいように感じており、意識しています。
「育成という言葉は、あまり使わないでほしい」
7年ほど前、スタートアップで制度設計しているとき、とあるCEOから「育成という言葉は、あまり使わないでほしい」と言われました。
等級要件を設計している際、上位等級に「人材育成」の観点を踏まえるかどうか、を議論した際の発言でした。
正直、驚きました。
当時は、30名弱の組織規模でした。
背景として、スタートアップにジョインするメンバーに向かって「人材育成」という受け身のワードは相応しくないのでは、ということでした。
それよりは、もっと自分で「成長しよう」と思っている意欲を感化できるような基準にした方がいいかも、という議論になり、「成長意欲」を等級要件に加えました。
(「成長意欲」をどう評価するか、は難しい問題です)
「人材育成」よりも「成長支援」
私としても非常に腹落ちした経験でした。
「育成」、つまり「育てる」というのは本人の意欲をあまり見ていない表現です。
それよりは、本人の成長したいという気持ちを素直に伸ばす環境や、必要に応じてティーチ・コーチ・フィードバックできるようにする方がスタートアップと相性が良いと感じました。
すると、ふと「成長支援」というワードが思い浮かびました。
あくまでも会社・マネージャーは、本人の「成長」を「支援」する役割をもつだけであり、「人材」を「育成」するという機械的な役務があるわけではないと定義しました。
話は逸れますが、「子育て」ってのも親と子の関係性を勝手に定義しているように感じたり、無償の愛というような高尚な概念が垣間見えて、気難しい行為になっているように思います。
「親が子を産んだ責任の下、完全なる義務として成長を支援する」ぐらいが子どもに向き合う私の価値観かもしれません。
正直、細かい話であり、価値観の話でもあるので、クライアントに向けて「人材育成という言葉は使わない方がいい」とは提案しません。
相手からすれば、面倒な人になってしまうので。
ただ、同じ価値観を共有している方・チームに対しては、こういった話をするとお互い共感できる部分が出てきます。
組織がスケールすると、「成長支援」から「人材育成」に変わってくる
悪いこととは思っていませんが、組織がスケールしてくると、自然と「成長支援」という考え方が「人材育成」に置き換わってきます。
スタートアップとして成長を遂げ、さらなるスケールアップ企業に発展していくプロセスで、特に成長スピードが速い組織ほど、「人材育成」のニーズが高まってきます。
どのようにスケールアップしていくのか、組織としての価値観を再認識するタイミングかもしれません。
個人的には、ピュアに成長することの楽しさを企業活動とリンクさせて、仕事を楽しめる環境をつくっていくためにも、成長意欲をもった人で組織をスケールアップさせていくことが理想だと考えています。
しかし、会社の成長と人材の獲得のバランスを取るには、限りある「人材」という制約を受け入れ、制約のない「活用」面で工夫していくことが現実的なんだろうと思います。
それも企業活動の醍醐味ではあると思いますし、私もその工夫を数々経験してきました。
ただ、私は成長意欲の高い人材で構成される組織で在り続けることが、長期的な企業成長と文化醸成に不可欠だとも考えており、このポリシーに則った組織づくりにも関わっていきたいと考えています。
もちろん、同じ価値観を共有できるクライアントがあっての話ではあるわけですが。