採用競争の環境が過熱しています。
スタートアップでも、年収維持が珍しくない状況です。
オファー年収を考えるにあたり、前職(または現職)の年収に「賞与」が含まれているか、その賞与の意味合いをきちんと捉えておくことは大切です。
例えば、年収1200万の場合
年収1200万で「賞与なし」の場合、基本給は「100万」(1200万÷12ヶ月)です。
もし「賞与あり」の場合で、賞与を300万とすると基本給は「75万」(900万÷12ヶ月)です。
その差は「25万」、大きいです。
賞与を含めた年収を考慮すべきか否か、という観点があるかないかでオファー年収は大きく変わってきます。
その際、賞与が「会社業績」に連動しているか否か、がポイントです。
厳密には、賞与は基本的に業績に応じて支給されるため、「連動している」となりますが、その連動の「強度」がポイントです。
強度とは、業績が良ければ賞与が2倍、3倍と増えていくのか、それとも5%や10%程度の振れ幅なのか。
この強さは、賞与の意味合いを規定します。
つまり、賞与が「基本給の後払い」なのか、「業績連動報酬」なのか、です。
強度がない賞与は、「基本給の後払い」であり、本人としては転職時に年収として維持してほしい気持ちが強いかもしれません。
一方、強度が強い賞与は、「業績連動報酬」ゆえ、転職先のスタートアップでその水準まで保証する意味合いは薄まります。
こういった報酬の背景を理解できると、金額だけに踊らされることはありません。
将来、賞与制度を導入することを想像する
自分が見ている範囲では、スタートアップのインセンティブはストックオプションであり、賞与を活用しているケースは少ない傾向です。
こうした中、先ほどのオファー年収において賞与を含むか否か、は将来の観点でも重要です。
もし、賞与制度がないスタートアップで、オファー時に「賞与込みの前職年収」を維持してしまうと、将来的に賞与制度を導入する場合、年収として「賞与」が純増することになります。
報酬決定側として、思った以上の水準になってしまう可能性があるのです。
賞与制度を導入する際、基本給を減らして賞与を入れ、年収を維持するという操作をすることはできなくはありません。
ただし、法的なリスクはもちろんですが、それ以上に当事者であるヒトの納得感を考えれば、これは筋の良い対応ではないということは、すぐにわかると思います。
ある時期を境に、前にオファーされている方は賞与込みの年収、後にオファーされている方は賞与を含まない年収がベースになってしまいます。
インセンティブは、ストックオプションに集中した方がいい
スタートアップでは賞与でなく、ストックオプションをインセンティブとして活用した方が良いと思います。
上場等、ストックオプションの賞味期限が消えたタイミングで、賞与などの他のインセンティブを検討するで問題ありません。
そもそも賞与は短期的なインセンティブ、ストックオプションは長期的なインセンティブという違いがあり、その性格を考えてもスタートアップは長期の闘いを挑むべきです。
もちろん短期を組み合わせることもできますが、報酬項目を1つ加えると複雑さが一気に高まります。
スタートアップの制度はシンプルであるべきです。
運用コストに意識を向ける代わりに、事業・顧客・製品に集中すべきです。
話がストックオプションに逸れましたが、本論はオファー時の年収における「賞与」の位置づけです。
きちんと報酬の背景を把握し、自社の将来も見据えてオファーすることが、最善を尽くせる環境の構築に役立つと思います。