「うちの組織、評価が甘くなってしまうんです。」
こういう悩みを抱えている経営者・人事責任者がいらっしゃいます。
原因と対策について考えてみました。
問題は把握するが、原因は分析されない
「なんですか?」と聞き返すと、自信のある返答がありません。
問題は把握されている一方で、「なぜ、評価が甘くなるのか」の原因は分析されていない状態です。
その場で深堀りしていくと、「評価制度が・・・」という風に制度が悪者にされる場合があります。
私は相手の会社や環境、マネージャーを知らないので正確にはわかりませんが、評価の「甘い」は制度が原因になっていることは少ないです。
なぜなら、「できていない」ことを「できている」と評価しているのは、あくまでもヒトなので。
要するに、マネージャーに問題の原因があるのです。
しかし、この現実は、見たくなく現実であり、認識したくない現実であり、(社内では)言ってはいけない現実です。
それを言ったら、「じゃあ、どうすればいい?」に答えられないので。
しかし、答えはシンプルで、マネージャーを交代させるか、育成するしかありません。
スタートアップのスピードを考えると、交代がベターですが、「そんなの無理だ」となって先に進みません。
しかし、急成長できるスタートアップは、このマネージャー採用が比較的できている方だと思います。
ここで差が生じます。
評価の理由を聞き、文脈を伝える
育成というか、ある種のカルチャー形成なのですが、甘い評価が上がってきたら、評価をつけたマネージャーに理由をヒアリングします。
「この評価の理由を教えてください。」
「どういう観点で評価をつけましたか?」
「なんで、この評価なんだろう?」
やり取りを通じて、「その評価はダメ」や「甘い評価だよ」と上長が言ってはいけません。
上長がマネージャーに伝えるべきことは、文脈です。
「この評価をつけると、組織や経営にどんな影響が出るだろうか?」
「今期の業績やチームの成果から、この評価は妥当と言えるか?」
「本人にこの結果をフィードバックすると、どういう反応だろうか?」
「この評価のフィードバックは、長期的にどういう影響を引き起こすだろうか?」
評価をつけたマネージャー自身に考えてもらいます。
論点は、「短期的に得られるメリットは何か」と「長期的に失うデメリットは何か」を。
このやり取りで気づきを得られるマネージャーは、育成の価値がありますが、ここで押し問答が始まり、保守的なやり取りが続いてしまう場合、マネージャーとして育成しても徒労に終わる可能性があります。
経営としての配置責任を自ら問いかけ、なぜ自分たちはこの方をマネージャーに配置したのか、そのプロセスに改善ポイントはなかったのか、を振り返るタイミングです。
相手のマネージャーを責める前に、自らを振り返ることが大切です。
甘い評価は、カルチャーである
組織的に評価が甘くなるのは、マネージャー本人の問題が5割、その他の5割は経営の問題です。
「経営層が厳しい評価をする一方で、マネージャーが甘い評価をつけてくる」ということはありません。
経営層が甘い評価を繰り返してきた結果、マネージャーが「それでいいんだ」と甘い評価をつけるようになります。
これがカルチャーです。
どう考えて、どう見ても、期待値に満たしていない方に対して、ネガティブフィードバックしない(できない)経営層がいます。
- いい人だから(人当たりが良い人だから)
- 入社時に高い評価をして採用してしまったから
- ネガティブな評価やフィードバックをするのが大変・面倒だから
- 低い評価をつけたら、おそらく退職してしまうから
仮説ですが、おそらくこのような理由です。
こういう状況を、下位の評価者であるマネージャーは見ています。
「こんな感じでいいんだ、評価って。」という感覚が「甘い評価」につながっていきます。
経営がチームとして機能していると、「その評価はちょっと違和感あるかも」「自分からは、こういう風に見えているけど、・・・」と意見が出てきます。
しかし、機能していない場合、問題はスルーされます。
「空気」って呼ばれたり、「カルチャー」と呼ばれたりします。
結果にコミットし、急成長を成し遂げる組織では、「うちの組織、評価が甘くなってしまうんです。」という声は挙がりません。
厳しい環境ですので。
トップ自ら、適度な緊張感をつくり、切磋琢磨できる環境をつくっています。
もちろんトップが率先垂範しています。
こういう組織では、甘い評価をつける余裕はありません。