人事制度を導入する際に気をつけておきたい細部の話です。
新入社員の方を、どう評価するか、です。
「評価の対象にしない」は、ネガティブに受け取られるケースがある
入社後、一定期間はオンボーディング期間として評価制度の対象から外し、評価しないケースがあります。
成果に焦ることなく、まずはじっくりと事業や組織、顧客の理解に取り組んでほしい、という背景です。
しかし、スタートアップにチャレンジする方は、会社・ミッションに早く貢献したい気持ちで、荒波に飛び込んできます。
100名前後の組織規模なら、なおさらです。
こういったマインドセットの方に対して、例えば入社後にすぐに評価対象にしない、というメッセージは、
- 「なぜ?」
- 「評価してほしい(見てほしい」)
- 「成果を残しても、評価されない?」
- 「昇給しないなら、頑張っても意味なくない?」
とネガティブな思考に方向付けてしまいます。
決して、そんな気持ちで入社していなかった方も、自然と気持ちが揺れ動いてしまうことも。
制度(ルール)が、負の副作用を引き起こしているとも言えます。
評価制度を適用する
新入社員に対して、評価制度は適用することを推奨しています。
ただし、一定の評価期間における行動やパフォーマンスを見ないと、評価はできません。
そこで、例えば「評価期間の半分(50%)を在籍している方を評価対象とする」といったルールを設計します。
1-6月を上半期の評価期間とする場合、4月1日の新入社員までは「評価対象とする」が、4月2日以降の新入社員は「評価対象としない」というルールです。
「評価対象」=「昇給対象」でもあります。
このルールであれば、誠実に評価するためのルールであるため、比較的現場からも納得感を得られると感じています。
評価として見れる期間が短ければ、「正しい」と思われる評価はできない、という中立的なスタンスがあるためです。
自分が支援している(支援してきた)会社では、50%、つまり6ヶ月のうち3ヶ月を条件とするケースの他に、67%、つまり6ヶ月のうち4ヶ月を条件とするケースがありました。
評価として見る期間は3ヶ月あればOKだけど、入社後1ヶ月はオンボーディングと目標設定で実質的に評価に使えないというのが理由です。
仮等級・本等級のルールを適用する
上記の評価制度を適用した場合、例えば4月2日から6月30日までに入社した方は、最大で約2ヶ月間、評価されない期間が生じてしまいます。
この状況に対して、仮等級・本等級というルールがあります。
入社時に決まった等級を「仮等級(仮の等級)」と位置づけ、入社後3ヶ月もしくは6ヶ月のタイミングで見直す機会を設けるというルールです。
見直し後の等級を「本等級(本来の等級)」と呼びます。
このタイミングは、試用期間と合わせて3ヶ月(または6ヶ月)とするケースが多いです。
もちろん全員の等級が変わるわけではありません。
入社時に想定していた等級よりも「高い or 低い」という判断が入った場合に等級が変わります。
等級を変えれば、報酬も変わります。
等級が変わらなければ、報酬は変わりません。
このルールは、等級制度からのアプローチです。
評価制度における評価基準ではなく、等級制度における等級要件(人材水準)に基づき、等級の妥当性を判断します。
勢いのあるスタートアップであれば、毎月新入社員が入ってくるため、このルールを運用するだけでも負担が生じます。
ただし、入社時のモチベーションは非常に高いことを考えると、その気持ちをドライブする制度を設計しておきたいところです。