人事制度は、期待を伝え、振り返りを通して報酬を決定する仕組みです。
その期待を入社時に伝えるための制度とは、なにか。
等級制度です。
等級判定シートで「等級」を伝える
等級判定シートに記載された等級要件を見ながら、相手の仕事や役割を踏まえて、期待を伝えます。
等級要件を相手に合わせてパーソナライズしていく作業。
等級要件の翻訳です。
等級判定シートに「期待」すること(内容)を、ドキュメンテーションすることも考えられますが、運用負荷を考えて口頭で対応します。
一方、期待を評価期間の中における任務(ミッション)に置き換える作業が、評価制度における目標設定です。
評価期間を6ヶ月とする場合、6ヶ月間のミッションを設定します。
目標設定といえば、SMARTの法則がありますが、SMARTの前に「等級要件」という期待に基づいて目標設定できているか、をチェックしましょう。
ミッション以外の期待も伝える
ミッションは、どちらかというと成果よりの目標設定です。
そのミッション以外についても、等級要件に規定されている「能力」や「リーダーシップ」、「バリュー体現」について、期待を伝えましょう。
現在の等級に期待されていること、そして昇格するために必要なこと、の2つの観点で期待を伝えます。
特に後者の昇格するために必要なことは、相手の成長を促す大切なコミュニケーションです。
ミッションだけで終わりがちな目標設定に対して、行動やプロセスに対する期待を伝えることは、マネージャーの重要な役割となります。
振り返り = 人事評価
3ヶ月、6ヶ月が経過したら、それぞれ中間評価、期末評価を実施します。
期待に対する「振り返り」の位置づけが、人事評価です。
「期待通り」だったのか、「期待を上回る」だったのか、「期待を下回る」だったのか。
ミッションに対する成果や、行動・プロセスを振り返り、フィードバックします。
人事評価は、基本的に「過去」に対する作業です。
「過去」の成果や行動に対して、「良かった」、「イマイチだった」という解釈を加えます。
他方、等級判定は、過去の結果に対する評価を参考にして、等級要件を「未来」に当てはめます。
1つ上の等級の要件を満たしているか、つまり1つ上の等級要件を果たせるのかどうか、を予測しているのです。
評価だけでなく、すべての貢献や活動を振り返り、過去の情報を解釈して、未来の貢献や活躍を見立てることが、等級判定となります。
そして、見立ての中で大事な観点が「再現性」です。
将来にわたって、再現できるかどうか。
定量指標の基準はありません。
すべて、マネージャーの定性的なジャッジメントとなります。
だから、人事評価よりも等級判定の方が難易度が高いわけです。