OKRを運用している会社で、現場層から「OKRって達成感がないから、モチベーションが上がらないい、、、」という話をよく聞きます。
未達成で良しとするOKR。
その考え方に忠実に基づいて運用する一方、現場の方々のこうした声を軽視(もしくは無視)することはいいのか、悩ましいところです。
そもそも、そのOKRでいいんだっけ?という意識から、改めて先人の知恵を拝借するため、本を読みました。
ジョン・ドーア著『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR』
いろんなOKRの本があると思いますが、自分はこの本が好きです。
コミットするOKRと野心的なOKR
以下の引用は、P358以降の「参考資料① グーグルのOKR実践マニュアル」からです。
本からすべてがわかるわけではないのですが、少なくともOKRには2種類あり、区別することが重要と書かれています。
「コミットするOKR」とは、組織として必ず達成すると決め、確実に達成されるようにスケジュールやリソースを積極的に調整するものである。
- コミットするOKRに期待される評点は 1.0 である。1.0未満であった場合には原因を究明する。それは計画か執行(あるいはその両方)に誤りがあったことを示すからだ。
一方、「野心的OKR」とは、われわれが実現したい世界を描くものだ。どうすればそのに到達できるのか、そのOKRを達成するのにどれほどのリソースが必要か、まるでわからなくても構わない。
- 野心的OKRに期待される平均評点は0.7だが、変動幅を大きい。(P362)
「コミットするOKR」の存在を知らないケースもあるかと思います。
野心的なOKR、達成できないくらいの非現実的な目標、達成度は70%でOK、といったワーディングだけが一人歩きしている印象は否めません。
「コミットするOKR」として、確実に達成されるべきOKRの存在があれば、達成感を感じ、モチベーションアップに貢献してくれるかもしれません。
上記の引用に「OKRを作成する際の落とし穴」が続きます。
落とし穴① コミットするOKRと野心的なOKRを区別できない
- コミットするOKRにすべき項目を、野心的OKRとすることで、未達の可能性が高まる。チームはまじめに取り組もうとせず、このOKRの達成にフォーカスするために他の優先項目を調整しようとしなくなる
- 反対に、野心的OKRをコミットするOKRにしてしまうと、それを達成する方法を見いだせないチームが守りに入る懸念がある。また野心的OKRにフォーカスするためにコミットするOKRの人員が不足するなど、優先順位の逆転を招くこともある。(P362-363)
これは、冒頭の「モチベーション上がらない問題」を意味していると思われます。
解釈が少し難しく、自分でも正しいかどうかわからない前提で考えると、1つ目のポチで言いたいことは、例えば本来確実に達成すべき目標として売上がある中で、その売上目標を野心的OKRとしてストレッチした水準に目標設定してしまうと、未達の可能性が高まる、という話。
当然です。
そうすると、メンバーは「まじめに取り組もうとせず」のこの解釈が難しいのですが、本来はスケジューリングしてゴールから逆算してコツコツ積み上げないといけない目標なんだけど、目標値が高い分、現実的に「できる」と思えていない状態で進んでしまい、本気で達成に向けて取り組まないケースが出てくると言っているのかと思います。
もしくは、「OKRは評定0.7=70%達成で良いはず」という解釈のもと、評定1.0という100%の目標達成を目指すことはせず、そもそもスタート地点で認識がズレている状態に陥っている可能性もあります。
「70%達成でOK」という気持ちでまじめに取り組んでいる姿を、著者は「まじめに取り組もうとせず」と記述しているのかもしれません。自分の想像ですが…
また2つ目のポチについて、「反対に」の接続詞の意味が自分の頭では理解できず、正直、ここは無視したのですが、要するに本来は野心的な目標として「われわれが実現したい世界を描く」べきところを、確実に達成すべきコミット目標としてしまうことで、これは絶対に達成しないといけないんだという失敗を許されないマインドセットになってしまい、「それを達成する方法を見いだせ」ない状態になってしまう。
結果、延長線上ではない非線形なチャレンジをしなくなってしまうこと、つまり「守りに入る」状態になってしまうことを懸念しているのかと思います。
100%達成できなくてもいいから、何か今までと違う方法で取っ掛かりをつくり、突破口を広げようと方向付けたいところが、「確実に達成しないといけない」という気持ちになっているちぐはぐな状態です。
そもそも「コミットするOKR」と「野心的OKR」の種類と意図を知り、使い分けできる状態になっていないOKRは、著者いわく「落とし穴」と表現されています。
落とし穴にはまっていないか、チェックしてみてはいかがでしょうか。
あ、あとこの本でOKRの書き方に以下の一文がありました。
野心的だが、現実的である (P360)
達成可能性が低い、という印象を「非現実」と受け取られるケースもあったりしますが、OKRは現実的なものを書くのがルールのようです。
こういう些細なルールも丁寧に伝えないとOKRの本質が見えてこない気がしました。
※この本を眺めると、OKRに対する見解って一人歩きしていると、改めて強く感じました。じっくり読み込んで書評してみようかと。