人事について「どんな情報」を「誰に」公開するか、は各社で異なります。
等級(グレード)はどうでしょうか。
個々人の評価結果や給与は、ほぼ非公開です。一方、等級は意見が割れます。「公開でいいんじゃない」との意見から「公開するメリット・デメリットが分からないので公開に踏み切れない」「うちの会社では公開することのメリットよりもデメリットが大きそうなので公開しない方が良さそう」といった意見です。
自分は、等級(グレード)を公開することを推奨しています。
社員の等級を公開することのメリット
- 各等級の人材レベルを等級要件(テキスト情報)だけでなく、実在者でイメージできるため、「どうすれば自分が上位等級に昇格できるか」が分かりやすくなる 。もちろん妥当な等級決定がなされているという前提で。
- 等級公開による説明責任が生じるため、等級制度を運用する経営陣・マネージャー・人事が、新入社員の等級決定や昇格人事をより慎重に且つ真剣に取り扱うようになる
- 上位等級者への高い期待値が組織内で見える化され、本人たちに適度な緊張感を提供できる
- 「人事情報を公開する」という会社のスタンスを示せる
- 社員にとって納得感のある等級決定や昇格(等級アップ)・降格(等級ダウン)が行わている場合、会社への信頼が上がる
社員の等級を公開することのデメリット
- 他者を知らないがゆえ、他者の等級への不満や文句が出る
- 降格の場合、全社員に情報が伝わり、降格者本人が会社に居づらくなる
- 下位等級者が少ない場合、「自分は(相対的に)評価されていない」と感じてしまい、モチベーションが下がる
- 社員にとって納得感のない等級決定や昇格・降格が行われると、会社に対する信頼が下がる
等級公開を通じて人事制度の納得感をつくる
特にメリットの1と2を理由に、個人の等級を公開することを推奨しています。
人事制度を導入する場合、人事制度のイメージを持っていない経営者・マネージャー・メンバーがいるケースがあります。その際、人事制度がドキュメント(ルールブック)だけで説明されていても理解が深まりません。理解が浅いと、納得感にもつながりません。現実を見る・経験することで制度が理解され、納得感ある制度として運用されていきます。個人の等級公開は、人事制度への納得感に強く影響を及ぼします。等級公開は、重要な意思決定です。
一方で、デメリットをすべて無視することはできません。特にデメリット1や4のように説明責任が求められれば、理由をきちんと説明して理解・納得してもらえるよう行動することが必要です。4については、給与を理由に等級を調整するケースがありますが、これをやると人事制度への信頼と納得感がなくなります。
自分たちでつくったルール(制度)を、自分たちで破ってはいけません。どうしてもルールを破りたくなったら、ルールを変えることも検討しましょう。