「成果給」ではなく「期待給」

寺田倉庫前代表取締役社長兼CEOの中野善壽さんの『孤独からはじめよう』を読んでいたら、報酬制度に関する記述がありました。

以前、丸善で見つけて立ち読みしたことがあった本で、先日図書館で偶然目にとまり、読んでみようかなと。

前著『ぜんぶ、すてれば』を読んで、引き込まれましたので。

最近、図書館から借りる本に「孤独」という文字が多いような。

書籍のタイトル通り、「生き方」に関する本でしたが、P122に報酬について書かれていました。

その内容について考えたことです。

 

期待値で給料を決める

少し長いですが、文章を引用させていただきます。

 

僕は管理するのもされるのも好きではありません。

仕事というものは、お互いに期待をかけ合うことで価値を生み出せるものだと思っています。

前の会社で給料の仕組みを見直した時にも「成果給」ではなく「期待給」という考え方を導入しました。

つまり何か成果が出てからそのインパクトを算定して報酬に反映するのではなく、成果を出す前の期待値で給料の額を決めるのです。

「僕は君にこれだけの期待をしているから、頑張ってくれると信じている」という期待給のメッセージのほうが、はるかにやる気になると思うからです。

数カ月おきに結果を見て、もしも期待を上回るようなら、また期待給を上げます。

逆に振るわない場合は下げますが、「三割以上は落とさない」というルールにしていました。

結果的に平均的には大手金融にも負けない高い給与水準になっていましたが、中には「ここではない他の場所で能力を発揮した方がいいですね」という話し合いに至る人もいました。

転社、転職は決して悪いことではなく、一つの組織が五年もすれば総入れ替えになってしまうくらいでちょうどいいと僕は思っています。

会社と人との出会いには相性があって、いつでも再チャレンジを応援したい。

だから、勤続一年目から退職金も出しました。

 

強い思想があると感じました。

寺田倉庫でも取組みなのか、別の会社での取組みなのかは分かりません。

人事的には、期待役割に基づく役割給という仕組みに近いかもしれませんが、詳細は分かりません。

自分の意見として「成果給」よりも「期待給」をおすすめしているわけではないですし、どちらも良しあしがあると思います。

ただ、経営トップが強い意思をもって、人事制度を語ってくれる会社は魅力的です。

 

制度を妄想してみる 

自分なりに妄想してみると、まず期待を測定する仕組みが必要です。

その測定基準を設計し、各自の期待値を定量化または記号化する。

その測定結果に応じて、等級と報酬(給料)が決定する。

一般的な期待役割に基づく役割給であれば、期末の成果をさらに評価して、賞与の支給額で報酬を変動させる。

ただ、ここまで「期待」に強い意思を反映されているのであれば、期末の成果をダイレクトに賞与に反映させず、その成果を踏まえて翌期の「期待給」を洗い替えで決定しているようにも見て取れます。

「三割以上は落とさない」というルールであれば、1-2割の減給はやっているようにも思いました。

 

成果ではなく、期待で給料を決めると言っていますが、期待を決める要因として「前期の成果」は加味されているはず。

なので、成果が無視されているわけではなく、つまり成果だけで機械的に決まるのではなく、成果を加味した「翌期の期待」で給料が決まるという意味だと思います。

期待という概念をうまく使って、相手の成長を引き出すことがポイントなんだと理解しました。

 

報酬に対する強い意思

給料や報酬制度において何が正しいか、というよりも、こういう強い意思をもつことが組織の納得感を引き出します。

自分の頭で考え、実践・経験したきたことを制度に落とす。

その考えに共感したメンバーが活躍する。

こうやって特徴ある組織や制度ができあがっていく。

 

スタートアップの組織や報酬制度に適用するのは、少し難易度が高い考え方・ルールかもしれませんが、自社の報酬に対する考え方の言語化のタタキ台に使えるかも、という気持ちでご紹介させていただきました。

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