等級制度について、よく受ける質問と回答です。
前提となる等級制度は、以下のスライドを参考に。
【Q1】個人の等級は、公開する?
【A】Yes
等級という人材レベルの理解を促すためには、実態を知ることが最も効果的だと考えます。
そのために個人の等級を公開することで、各等級の要件がクリアになります。
また、会社が実施する等級判定に対しても社員の厳しいチェックが自然と入るため、ガバナンスも期待できます。
そもそも、非公開にしても情報が漏れやすいという背景もありますが…
(詳しくはこちら:「個人の等級(グレード)は公開する?」)
【Q2】等級要件は、すべてを満たす必要がある?
【A】Yes
例えば「発揮能力・リーダーシップ・バリュー体現・成果」の4つが定義されている場合、4つすべてを満たすことを求めます。
理由は、等級要件は MECE に設計するのではなく、必要な要素を選び抜いて設計しているため。
よって、そもそも「選び抜く」という考え方ではなく、MECE に精緻な等級要件を設計するなら、「すべての要件を満たす」というルールではなく、あくまでも人材イメージを共有するための目安(ガイドライン)として活用する方法もあります。
【Q3】昇格するには、上位の等級要件をすべて満たす必要がある?
【A】Yes
例えば、3等級から4等級に昇格する場合、3等級の等級要件をすべて満たし(厳密には3等級以下の等級要件をすべて満たし)、且つ4等級の等級要件をすべて満たしていることが求められます。
人事の用語では「入学要件」と呼びます。
一方、3等級の等級要件をすべて満たせば4等級に昇格できる、と勘違いしてしまうケースもあるので、事前に説明が必要です。
ちなみに後者は「卒業要件」と呼びます。
【Q4】等級と役職は連動している? (課長 = 5等級?)
【A】No
等級と役職は、完全連動していません。
ただし、等級と役職の位置関係をイメージできるように「5等級 = 課長相当」と記載しています。
4等級の課長もいれば、6等級の課長もいる制度です。
「緩やか」というのは、だいたい前後1等級くらいの関係になるという意味合い。
例えば、部長なら5-7等級であるという意味合い)
ただし、等級と役職の位置関係をイメージできるように「5等級 = 課長相当」と記載しています。
4等級の課長もいれば、6等級の課長もいる制度です。
だいたい前後1等級くらいの関係になるという意味合いで、言語化すると「等級と役職は緩やかな対応関係である」といったところでしょうか。
等級は、本人の実力・実績で判断するもの。
役職は、本人の実力・実績のほか、戦略や組織、経営状況に応じて判断するもの。
等級と役職を完全連動させてしまうと、経営の都合で役職を変更した際、意図せず等級に紐づく報酬まで変更せざるを得ない状況になってしまいます。
これを避けるためにも、等級と役職は完全連動させていません。
【Q5】5等級でマネジメントとスペシャリストに分かれる?
【A】原則 Yes
これが唯一の正解ではありませんが、キャリアのイメージを共有するために、マネジメントとスペシャリストを分けて等級体系・等級要件を整理しています。
ただし、明確にマネジメントともスペシャリストとも役割を定義しにくい場合があります。
組織上の役職にはつかないけど、社内の重要プロジェクトをリードする役割だったり、全社横断のタスクを他部署を巻き込んで進めたり、と。
昔の言葉でいえば、ジェネラリストと読んだりするでしょうか。
マネジメントとスペシャリストの中間の位置づけです。
こういう役割が社内で比較的多かったりすると、このマネジメントとスペシャリストの概念がフィットしないこともあります。
その場合は、マネジメントとスペシャリストに分けず、1軸で等級体系を整理します。
【Q6】昇格は、メイン評価者が決定する?
【A】No
メイン評価者は、昇格を提案(推薦)する役割です。
昇格の決定可否は、等級判定会議で行います。
最終意思決定者のパターンは次の通り。
- 管掌の取締役
- 部門責任者
- 全取締役の合議
- 全部門責任者の合議
よくあるのは、一定の等級以上への昇格は、全取締役または全部門責任者の合議とするなど、等級によって違いをもたせること。
例えば5等級昇格には、全部門責任者の合議としたり、6等級昇格には全取締役の合議としたり、です。
ときに社外取締役と昇格候補者が面談し、レビューをもらうケースもあります。
なお、合議といっても「全員が Yes 」というよりは、「強い No がない」というニュアンスです。
【Q7】昇格候補者でないと、昇格はできない?
【A】Yes
昇格候補者制度を導入している場合、期初、または中間評価のタイミングで昇格候補者に推薦されていない場合、期末に昇格させることはできません。
(昇格候補者制度については、こちらを参照:「昇格者は、どういうプロセスで決める?」)
見極め期間を設定して、メイン評価者だけでなく、会社全体・部門全体の目線も踏まえて慎重に昇格判定します。
ただ、過去の事例をお話すると、1等級から2等級への昇格、2等級から3等級への昇格のみ、昇格候補の仕組みがマッチしないという意見が出て、昇格候補者でなくても昇格できるルールに変更したことがありました。
3等級は人数も多く、等級要件も理解しやすいため、昇格判定にミスが生じにくいという考え方でした。
【Q8】何のために、昇格レポートを書く?
【A】一番の目的は、昇格の理由を全社に周知して、本人以外の昇格への納得感を高めること
各自の等級は公開する前提のため、「なんであの人がこの等級なの?」「なんであの人が自分よりも上の等級なの?(納得感ないなぁ)」と状況が起き得ます。
この納得感の低下が、会社の人事、または人事制度に対する信頼低下につながります。
これを避ける努力をすべく、昇格レポートを作成して、昇格の背景をきちんと共有できるようにします。
ブラックボックス化しやすい人事を、少しでもオープンにするための取組みでもあります。