経営者は、何を権限移譲するのか?

組織拡張する中で、経営者は権限委譲を進めます。

権限移譲について、木を見て森を見ず、にならないよう森を描いてみました。

木が森に変わっていく姿もイメージできると、採用にも役立つと思います。

 

なお、「権限移譲」と言葉だと重厚さが増してしまい、何かおおごとに聞こえてしまうので、少し肩の力を抜いて「分業」という表現を使ってみました。

 

マネジメント領域の整理

まず組織の分業について前置きを。
※細かい説明は、後半で。

例えば開発や営業といった専門領域(機能)で「ヨコ」に分業が進み、それを統合・調整するマネジメント領域の業務が発生します。(タテの分業 その①)

さらに専門領域の中、例えば営業の中で、エンタープライズセールス、SMBセールスのような規模別、もしくは東日本セールス、西日本セールスのような地域別など、様々な軸で再び「ヨコ」の分業が始まり、また統合・調整のマネジメント領域の業務が発生します。(タテの分業 その②)

基本的に、組織の人員数が増えると、この動きが続きます。

組織階層は多くなり過ぎないことを是と、前提にした場合、5階層でマネジメント領域を整理できそう、と思いつきました。

 

ミッションのマネジメント

その領域(部門)のミッションを定義し、具体的なゴール(目標)に落とし込みます。

会社全体のミッションではなく、領域、例えば営業や開発といった部門のミッションとゴールです。

時間軸は、短期から中長期に及びます。

そして「Why」の説明が重要で、組織全体の方向付け・動機づけ・認識合わせの役割を担います。

ミッション・ゴールを設定して終わり、ではなく、浸透までが役割です。

 

戦略のマネジメント

その領域(部門)のミッション・ゴール(目標)を実現するための戦略をつくります。

どう競争に勝つか。

「Why」に対する「How」と「What」を設計し、ゴールに対する到達度を振り返りながら、改善を続けます。

SWOT・5FORTH などのフレームワークが実務的に役立つかもしれません。

中長期視点を持ち、既存の延長線上でゴールを実現するのか、新しい事業をつくるのか、その場合、どんな事業をつくるのか、を四六時中考えます。

 

組織のマネジメント

その領域(部門)の戦略を実行するための組織づくりや制度設計を担います。

具体的には、「人のマネジメント」を担うマネージャーの採用・配置・育成・目標設定・評価(振り返り)・報酬決定、あとは組織全体のパフォーマンスを最大化するための仕組みづくりです。

組織の課題を設定し、施策を企画・実行、振り返りの基準をつくり、改善に繋げます。

 

人のマネジメント

割り当てられた組織と人が、最大限パフォーマンスを発揮できるよう直接やり取りします。

自組織(チーム)の目標を設定し、メンバーの目標設定、評価(振り返り)、改善に向けたフィードバックを繰り返して、チームとしての役割を果たしていきます。

メンバーのキャリアも考え、will・can・must な目標設定を目指します。

 

仕事のマネジメント

設定された目標に対して、プロセス・アウトプットを品質管理し、都度、承認・修正・改善をフィードバックする役割を担います。

チーム内のボトルネックやコア業務を見極め、必要に応じて、自ら手を動かします。

チームのエース的な存在です。

 

マネジメント領域の分業が権限移譲

創業期は、一人の社長が、まずヨコの業務をすべて担い、人を採用して分業を開始します。

共同創業の場合、だいたい開発(プロダクト)と営業(ビジネス)の分業です。

そして分業と同時に、マネジメントが発生します。

以下は5階層のマネジメント領域が、きれいに分業された姿のイメージです。
※役職名は、一例です。

 

スタートアップは、創業経営者(経営陣)がすべてのマネジメント領域を担うことから始まり、だいたいまずマネージャーが採用され、「仕事のマネジメント」と「人のマネジメント」が分業されます。

分業とは「権限移譲」と言い換えることができます。

創業経営者は、「ミッションのマネジメント」「戦略のマネジメント」「組織のマネジメント」を担い、VP レベルの人材が採用できれば「組織のマネジメント」を分業します。

運よく CXO レベルの人材が採用できれば「ミッションのマネジメント」と「戦略のマネジメント」を分業できます。

そこから、企業の成長とVPの成長が同時並行できれば、 VP が SVP にプロモーションしたり、もしくは SVP の採用があるかもしれません。

このように採用できなければ分業は進まず、創業経営者がすべてのマネジメント領域を担い続けます。

能力的にも時間的にもキャパシティがありますので、採用が進まなければ会社の成長は鈍化していくことになります。

 

組織に関する「そもそも話」、タテとヨコの分業

組織の型について具体的に説明しましたが、そもそも「組織って何?」と考える方も少なくないと思います。

自分も分かった気でいましたが、いざ説明しようとすると、ムズい。

分かりやすさ重視で、組織の「そもそも」を書きます。

 

組織とは、タテとヨコで業務を分けることです。

専門領域(機能)で業務を分けるのが、ヨコの分業。

開発、営業、CS、人事、など。

マネジメント領域で業務を分けるのが、タテの分業。

人のマネジメントや組織のマネジメント。

 

創業期は、一人の社長が、まずヨコの業務をすべて担い、人を採用して分業を開始します。

共同創業の場合、だいたい開発(プロダクト)と営業(ビジネス)の分業です。

そして分業と同時に、マネジメントが発生します。

ちなみに、ここではマネジメントを「他者を通じて期待する成果を出す(最大化する)こと」と定義します。

期待値を揃えたり、判断に迷う点を意思決定したり、承認や改善をフィードバックしたり、が具体的な ToDo です。

 

ヨコの分業が「The Model(ザ モデル)」によって言語化された一方で、タテの分業はあまり言語化されていない印象があります。

ヨコの分業は、組織の成果を最大化するために「これを自分以外の誰かにお願いしたい」というニーズから発生。

人数が少ない初期フェーズは、全員でやりくりする総兼務体制ですが、資金調達で採用が可能になると、ヨコの分業が成立し始めます。

ヨコの分業は専門領域で分かれるため、開発はエンジニア、営業はセールスといったように分業に分かりやすさがあります。

他社の採用ページを見れば、どんな業務を担う存在か、イメージできます。

一方、タテの分業は、そもそもどんな業務なのか、誰に何を分担するか、が比較的分かりにくいと思います。

それなりの企業で課長・部長といったマネジメント業務を担ったことがあれば話は別ですが、スタートアップではそう多くはありません。

そもそもタテのマネジメント業務の分類は、マネージャーの能力に大きく依存するため、型化が難しいテーマではありますが、多くの組織を見る中で規則性はありそう、という洞察が今回のエントリです。

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