成長企業を間近で見ていると、組織上で似た問題が浮かび上がってきます。
原因の主は、兼務です。
タテの兼務は想像以上に影響が大きい
兼務。
比較的、軽い気持ちで意思決定されがちな配置判断ですが、思いのほか影響が大きいと思っています。
一時的に個人の頑張りで乗り越えようとする力技ですが、意思決定したときの思いはすぐに忘れ去られ、組織図に記録が残るだけとなります。
敢えて言えば、まだヨコの兼務の方はマシです。
タテの兼務は避けるべきです。
しかし、成長企業ほど事業の成長が速く、人材の配置(採用・育成)が間に合いません。
兼務せざるを得ない状況を何度も見てきました。
同時に兼務の問題は放置され、別のマネジメント問題へと認識が変わっていく光景も見てきました
マネジメント育成という課題は、マネジメントの人材レベルを教育活動を通じてレベルアップしていくことを目指します。
しかし、得てして問題の原因は「人」にあるのではなく、「兼務」という組織の問題にあるのです。
いくら教育を施しても、問題は解決しません。
「人材育成は時間がかかるから…」と誰かがフォローしてくれることもあるでしょう。
本来は、問題設定をやり直そう、と声をかけるべきところですが。
実態として兼務せざるを得ない状況も把握しています。
建設的に進めるためにも、兼務を是とします。
ただし、兼務する場合は、その問題の本質も知っておくべきです。
部長が課長を兼務すると、実態は課長が部長を兼務していることになる
例を示しながら整理していきます。
部長管掌の組織(課)が3つあったとします。
そのうち、課長は2つの組織で配置できましたが、どうしても1つの組織に適任者がいません。
仕方なく、部長自身が課長を兼務することにします。
この部長は、元々その会社で課長経験があり、課長の役割も熟知しています。
そのポストでも活躍も認められ、部長としてのポテンシャルを評価されて、1年前に部長に昇進したとしましょう。
ざっくりと部長と課長の役割の違いを定義しました。
- 部長:部の戦略を長い時間軸で立案し、課長を通じて間接的なマネジメントで成果を残す
- 課長:部の戦略を短い時間軸の戦術・オペレーションに落とし込み、メンバー(例えば5名)へのダイレクトマネジメントを通じて成果を残す
さて、このとき課長を兼務した部長はどうなるでしょうか。
結論、「課長を兼務した部長」ではなく、「部長を兼務している課長」になってしまうのです。
「課長を兼務した部長」の場合、例えば自分の時間のうち、8割を部長の役割に、2割を課長の役割に投下していると想像できます。
もしかすると、部長6割で、課長が4割かもしれません。
ポイントは、「部長>課長」であると考えている点です。
しかし、実態は9割は課長で、2割が部長といったところです。
10割を超えたオーバーワークで、常に忙しい。
なぜ、こうなってしまうのか。
まず、課長はダイレクトマネジメントです。
現場のメンバー5名の管理をしなければなりません。
ダイレクトマネジメントは、計画的に進まないことが前提です。
現場の小さなトラブルから、できると思っていたことができないので、育成に時間を使わないといけない。
日々、目の前に出てくる問題をつぶなさければなりません。
そして、元々課長として活躍していると、課長の役割をこなす方が楽なので、そちらを優先しがちになります。
もちろんダイレクトマネジメントなので、楽ではないのですが、仕事をこなしている感覚も持ちやすい。
一方、部長は上位となる経営層と課長の板挟みで、なかなかハードなポストです。
機能別であれば、その機能の専門知識がトップでないと、マネジメントできないですし、事業別であれば複数組織(課)を統合した業績責任を担い、変数との戦いです。
抽象度の高い上位組織(本部)の戦略を、各機能・事業の責任者として、一定の時間軸の元、戦略に落とし込まないといけません。
とにかく考える”時間”が必要です。
目の前の問題に左右されず、じっくりと将来を見据える”時間”が必要なのです。
しかし、課長を兼務すると、その時間が取れません。
心理的な余裕もなくなり、目先の目標と課題に追われます。
当初は、「部長が課長を兼務する」としていた構造が、いつの間にか「課長が部長を兼務している」状態になっているのです。
課長に部長を兼務させようと意思決定する経営者がいたら、関係者は驚くと同時に止めるはずです。
実力の不足が見えているわけで、それは成功しないと。
しかし、その逆は問題ない、と意思決定されます。
しかし、しかし、大いに問題があるのです。
実態は、課長が部長を兼務しているので。
マネジメントのキャリアは線形ではない
少し話は変わりますが、土台になる考え方を紹介します。
マネジメントのキャリアは線形でレベルアップしていくものではありません。
課長の先に部長があり、その先に本部長があり、、、と連続的に続くものではないのです。
課長の次に部長がある場合、スイッチバックする必要があります。
仕事の仕方や物の考え方を、グッと変えなければいけません。
ただ、この話は抽象的ゆえに伝わりにくいものです。
だから、わかりやすく伝える必要があります。
「時間の使い方」です。
今まで課長としてどんな仕事に何時間かけていたのか、を把握し、部長になったらその時間の使い方をガラッと変える必要があるのです。
特に、一人で考える時間が必要になります。
目の前に問題に翻弄されず、未来を見据えて何をやるべきか、どうやるべきか、なぜやるべきか、を考えて関係者に伝える・巻き込むことが求められます。
これは課長を兼務するとできません。
部長もメンバーも優秀であれば、できるかもしれませんが、そんなケースは一握りなのでやめておきましょう。
兼務をしている部長に問題があるのではなく、構造上の問題です。
だから、教育といった人材育成に問題意識を向けると、誤った方向にリソースを使うことになります。
タテの兼務は、組織の停滞を招くことに注意が必要です。
※兼務について以前書いた記事も貼っておきます。