組織設計における最低限のカテゴリ知識(構造設計、制度設計、配置設計)

スタートアップの組織が拡大してきた際、「何となく」で組織づくりを進めてしまい、設計が後手になってしまうケースがあります。

問題が起きて解決・改善し、また問題が起きる、の繰り返しを経て、組織が構築されていくイメージです。

組織設計が意味する最低限のカテゴリを知っておくだけでも役立ちます。

 

大枠は、構造設計、制度設計、配置設計です。

 

構造設計

組織構造を設計します。

ストラクチャー(structure)と呼ばれるものです。

 

2つの観点があります。

「分業」と「階層」です。

どのように仕事を分けるか、これが分業です。

営業、マーケティング、製品開発、カスタマーサポート、経営管理、人事など仕事の分け方です。

もしくは、首都圏、西日本、東日本、北海道、九州など地域で分けたり、A事業部、B事業部、またはA製品、B製品などで分けるかもしれません。

戦略と市場を踏まえて、自社にとって最適な分業構造を定義します。

 

次に階層。

1階層、2階層、3階層、4階層などと続き、管理上の組織名称を付けます。

本部、部、グループ、ユニットなどのイメージです。

ちなみに名称は必須ではなく、すべての階層の組織を「チーム」と定義・呼称することもあります。

組織と同時に役職(ポジション)の発生します。

 

分業と階層が交差するところに、「~~本部長」や「~~部長」という役職が出来上がります。

 

この構造設計のアウトプットが「組織図」になります。

そして、役職(ポジション)ごとに責任・権限を定義します。

例えば、部長は「3年先の戦略と組織を描き、目標を設定して実行する」「課長や後任の部長を育成する」といった感じです。

 

制度設計

制度、つまりシステム(system)を設計します。

こちらも観点を2つ置きます。

 

1つ目は、意思決定システム。

組織が拡大し、協業が複雑化することで、誰が・どこの・どのように意思決定するのか、を決めておく必要があります。

構造設計で役職ごとの責任・権限を定義することで、意思決定に責任・権限も定義されますが、どこで・どのように、の部分が決まっていません。

そこで、会議体を設計したり、稟議のルールを設計することで意思決定の質と量(スピード)を高めていきます。

 

何となく過去の延長で行っていた会議体で意思決定が円滑に回らなくなってきたら、組織構造(分業と階層)は変わっているけど、意思決定システムである会議体が、それに合わせてアップデートできていないなどと疑ってみましょう。

 

2つ目は、会計システムです。

予算策定や予実管理を全社的にどのように回すか、です。

組織人事という観点に照らすと、全社・部門・個人の目標設定にも関わってきます。

予算の考え方や予実のスケジュールによって、目標設定の基本的なベースが決まります。

 

配置設計

最後に、配置設計です。

配置設計には、3つの観点があります。

 

1つ目は、役職(ポジション)ごとの要件設計です。

わかりやすい用語では、ジョブディスクリプションと言い換えられます。

構造設計で作られたポジションに期待することを定義し、必要な人材要件まで言語化します。

 

2つ目は、役職への推薦・任命・解任のルール設計です。

まずは役職任命・解任の在り方について、簡単に擦り合わせましょう。

 

抜擢は?

マネジメントの経験は重視する?

配置したけどパフォーマンスしない場合、どれくらいの期間、我慢する?

解任する際、誰がどのようにコミュニケーションする?

 

役職任命は、ポリシーを作っても、それ通りに運用することが難しい領域です。

なぜなら、事業が「先」にあるため、事業成長していたら、人の有無・準備に関わらず、ポジションが生成されていくからです。

だから、成長する会社ほどポジションが生まれ、人の配置が追い付かず、兼務が多くなります。

 

最後の3つ目は、異動(ローテーション)の設計です。

詳しくは別の記事でも書こうと思いますが、職種別採用を進め、ある意味、Job型で人事制度を運用できているスタートアップでは、実際に考え始めると悩みがたくさん出てきます。

まず、異動を会社主導で行うか、本人(個人)主導で行うか。

日本は会社主導がスタンダードですが、これは時代にマッチしなくなってきています。

法整備もマインドセットも追い付いていない禁断の領域ではありますが、、、

 

人不足が今後の進む中、会社と個人はフェアな関係性を構築する必要があり、その論点は「雇用」と「異動」です。

異動については、倫理と心理に基づいてルールメイクすることが大切です。

そのためには、本人主導の異動施策を構築しなければなりません。

 

もちろん、人材マネジメントの難易度は急激に上がりますが、これが出来なければ、そもそも人に選ばれる会社にはなりません。

自律した個と組織をつくり、自ら変化できる存在になっていくことが必要です。

 

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