「360フィードバックは、人事評価には使いません」と但し書きに書かれていることがありますが、これは本当でしょうか。
評価者は、被評価者の結果・内容を閲覧できるか
ポイントは、被評価者の360フィードバックに関する結果や内容を、評価者が閲覧できるか否かです。
もし、本当に人事評価に使わない、ということであれば、評価者に結果や内容(例えば、フィードバックのコメント)を見せるべきではありません。
あくまでも、本人の気づき・内省を得るためのキッカケとして、360フィードバックを活用すべきであり、本人以外はそれを見ることができないようにすることが求められます。
なぜなら、評価者は、360フィードバックの情報をインプットしてしまうと、自然のその情報を活用して人事評価を行っているからです。
いくら人事が「人事評価には結び付けないでください」と言っても無理です。
ポジティブ・ネガティブどちらであろうが、有益な情報は人材情報としてストックされ、腕の良いマネージャー(評価者)こそ、そうした情報をうまく活用して、被評価者の成長やモチベーションに影響を及ぼします。
「人事評価に使いません」で意図していることは、結果をダイレクトに評価制度に取り込まないということ
正確に但し書きを書くとすると、360フィードバックの結果を、評価制度における人事評価にダイレクトに連動させない、もしくは評価制度に取り込まない、ということです。
つまり、360フィードバックの中で5段階尺度のような評価記号をつくり、その結果をそのまま用いて評価を決めない、ということです。
「そんなの当たり前でしょ」と思うかもしれませんが、その当たり前が「人事評価には使いません」という表現とギャップが生じていることに注意が必要です。
制度上で「使いません」と人事は認識していても、現場では運用の中でうまく情報を使っている部分があります。
もし、評価者が360フィードバックの内容を見ていると、被評価者であるメンバーは「360フィードバックの結果が使われているのでは?」と感じてしまうのです。
もちろん、評価者は使っているつもりはなくても。
このようなボタンのかけ違いが、人事や制度に対する信頼を毀損する小さなキッカケになり得ます。
細部に注意して、設計・発信をすることの大切さが伝わってきます。
「人事評価の参考情報になります」と伝えてもいいのでは
個人的に、360フィードバックの情報は当人の人材情報として重要であり、本人の気づき・内省のためだけに閉じておくことは、もったいないと思います。
評価者にも閲覧権限を与える派です。
そして、「人事情報の参考情報になります」と言ってしまった方が現実に近いし、書く側の真剣度もあがるのではないか、と考えています。
あくまでもその情報を見た(読んだ)評価者が、その情報を咀嚼して、いかに使うかは任せるというスタンスです。
自分が把握できていない情報で、プラスの評価に値するのであればうまく活用すべきだし、360の立場でコメントしてくれた方の主観が強すぎる場合や事実と違って受け取っている場合などは活用しなければいいわけです。
評価者として、より知りたい、ということであれば、コメントを書いてくれたフィードバッカーにヒアリングして深掘ることがあってもいいと思います。
最終的に、被評価者本人が評価やフィードバックを通じて成長・改善するキッカケになったり、会社・評価者からのメッセージである人事評価に対して納得感を持ってくれることを目指しているわけです。
もちろん、その先に会社の成長と業績拡大があります。
この目的を達成するためには、こうした施策に対して誠実なスタンスを取ると同時に、オペレーションコストを究極的に引き下げていくことが大切です。
オペレーションコストを上げる要因になる閲覧の制限はなるべきなくし、シンプルに設計していくことがスケーラブルな成長に貢献するという考えています。