人事制度を設計・運用していると、ローパフォーマーのために時間を使っている場面に多々出くわします。
このことを認識して意識的に気にすることで、無用に時間を投下しないようにできます。
無意識にローパフォーマーへと話題が移っていく
制度設計の場面で、優秀な人材をさらに引き上げるための施策を提案すると、どこかから「でも、そうでない人(ローパフォーマー)は、、、」や「自分は気にしないが、他の人は気にするような気もして、、、」と、いつの間にか話題がローパフォーマーに移っていることがあります。
その部分へ配慮することも必要かもしれませんが、実際には、そこからリターンはあまり返ってきません。
議論は進んでも、良い結論はなかなか出ません。
問題の原因は、結局はローパフォーマンスに起因しているため、本筋とズレた施策で対処しても本質的な課題解決にはならないからです。
例えば、30分議論したとしたら、30分がまるっと無駄になることもあるでしょう(ほぼ無駄になります)。
運用場面でも同じことが起きます。
例えば、評価会議。
ハイパフォーマーの話は、「できてるよね」で終わってしまう一方、ローパフォーマーの場合、「頑張っているけど、、、」と話が長引きます。
頑張っているかどうかではなく、期待を満たしているかどうか、で議論すると満たせていません。
しかし、頑張っているのです。
だから、何とか評価を上げてあげたい、と親心が働きます。
この会話、事業の成長には貢献しません。
「この会話、やめましょう」と提案できるリーダーが必要です。
ハイパフォーマーから声はあがってくる
人事領域であがってくる声の多くは、ハイパフォーマーではありません。
自分の経験上、ハイパフォーマーは、人事制度に興味関心が薄いケースが多いです。
経営者のハイパフォーマーはそうではありませんが、プレイヤーとしてのハイパフォーマーは、それよりも事業を推進させることに多忙で、周辺の制度・ルールには疎いといった印象です。
制度・ルールが、自分の動きを相当程度、邪魔している場合、「やめてほしい」と声を挙げますが、邪魔していなければ、スルーです。
報酬は、衛生要因であり、動機づけ要因ではないと言われます。
つまり、モチベーションを下げることはあってもモチベーションを上げる類のものではないと。
ただ、これをローパフォーマーの観点で見ると、評価が低い=報酬も上がらないという前提があるわけで、結果として衛生要因にしかなり得ないようにも思います。
一方、ハイパフォーマーは報酬が上がっていく可能性があるため、動機づけ要因として機能するようにも感じます。
一定のライン(例えば、800万とか2000万とか)で、モチベーションラインが横ばいになる可能性はありますが、そこまでは上がっていくようにも思います。
もちろん「報酬だけ」ではありません。
報酬の1つの要因である、という意見です。
ローパフォーマーに引っ張られない
制度やルールを設計しようとすると、広範囲への考慮が必要となるため、中心軸がブレてしまい、形骸化したようなアウトプットが出来上がることがあります。
特に、ローパフォーマーへの考慮が強いと、組織全体のやる気を引き下げるような取り組みになることもあります。
「なんで、こんなことやるの」「面倒過ぎるんだけど、、、」と現場で思われるようなことをスタッフ部門が頑張って企画してしまうケースです。
そんなときは、意識が全体的にローパフォーマーにいっていないか、を立ち止まって考えるようにしましょう。
この動きが怖いのは、無意識的に組織のメンバーがシンク(Think・Sync)していくことです。
意識をそちらに向けることは、やさしさのようにも見えますが、本当はかなり残酷なことをやっていると理解した方が適切かもしれません。
頑張っても成果が出ないのは、本人だけの責任ではありません。