人事制度を運用している会社であれば、半年もしくは1年に1回の頻度で等級判定を行っていると思います。
降格はイレギュラーケースとすると、昇格をどのように取り扱うのか、がポイントです。
昇格判定について議論を進める際、うまくやる方法があります。
まず悩みどころを伝える
昇格判定を行う場合、大抵のケースでは等級要件に基づいてマネージャーから要件を満たしている理由を説明いただき、合意を得るという流れで進むと思います。
正直、他部署のメンバーのことはわからないため、周囲のマネージャー(評価者)が強い意思で反対を表明することは稀です。
一方で、本当にこの人は昇格に値するのか、大丈夫か、という不安は常に付きまといます。
その際、マネージャーがやってはいけないことは、「すべての要件を満たしています」「問題ないです」「迷いなく昇格に値します」と、自信たっぷりに主張することです。
「大丈夫」、「問題ない」と主張されると、「本当に大丈夫?」と思うのが、経営の気持ちです。
経営に対して、昇格をスムーズに承認してもらいたいならば、敢えてこう主張しましょう。
「昇格を提案したいが、この点で悩んでいます。ぜひ、色々な意見をフィードバックしてほしい」と。
等級要件に照らして、この点は十分に満たしている一方で、この点は悩ましい、と率直に伝えて、フィードバックを求めます。
すると、周囲からは「悩んでいる理由(背景)は?」、「どういう点で引っ掛かっている?」といった問いが出され、議論が深まっていきます。
そして、「確かに、やや物足りない部分はあるかもしれないけど、そういったフィードバックをして改善に向かっているなら、昇格が妥当なのでは?」や「~~さんのレベルであれば、自分は十分に満たしていると思いますよ」といった意見が出てきます。
こうした穴を自ら提示し、それを参加者で潰していく合意形成ができると、昇格判定の意思決定がしやすくなっていきます。
良い点だけ伝えると逆に不安になる
「ここができている」「これが素晴らしい」「まったく問題ない」「大丈夫です」と言われると、「本当?」と不安になります。
初任マネージャーほど、昇格に対する承認を得たいため、ポジティブな側面を強調しがち。
その結果、周囲は抜け漏れがないか、あらさがしを始めます。
「あそこは大丈夫?」「こういう意見もありました」「自分はこういう風に感じた」など、悪気はなく、バランスよく見ていこうという提案です。
しかし、このやり取りが始まると押し問答になってしまい、建設的な議論にはなりません。
昇格判定は、未来にならないとその正解はわからないため、現在時点で答えを知ることは不可能です。
その場合、良い面だけではなく、敢えて悪い面といった悩みどころを伝えることで、周囲の聞き方・見方がガラッと変わっていきます。
フォーマットに悩みどころを入れても良き
等級判定シートや昇格判定シートに「悩みどころ」を記入する欄を設け、事前に評価者に考えてもらうのも一手です。
この部分を議論することで、結果として昇格になった場合に上質な改善フィードバックコメントを提示することができます。
昇格のタイミングは、本人にとって大事な人事イベントであり、成長やアンラーンの機会として役立ちます。
脂がのった時期であり、スポンジのようにフィードバックを吸収してくれるでしょう。
耳障りの良いフィードバックだけでなく、期待や改善を昇格時のフィードバックとして添えられると、更なる成長に向けたスタートダッシュを切ることができます。
この辺の仕掛けは、マネージャーに任せるのではなく、組織的に行うことで高い効果が期待できます。
制度設計の1つとして、ぜひ取り入れてほしい仕掛けです。