スタートアップの人事制度では、報酬制度はシンプルでありながらもストックオプション(SO)の設計に難しさがあります。
自分自身のストックオプションの設計をゼロベースで実施したことはなく、運用についても実際に手続き・書類発行などのノウハウ・知見はありません。
そんな自分でも理解しているストックオプションの配り方について、3つの対象があると分かってきました。
これが正解というわけではないですが、あまり情報が出回らない領域ゆえ、1つの参考情報になれば、と思います。
創業リスクストックオプション
スタートアップの創業期にジョインしてくれた創業メンバー向けのストックオプションです。
その会社が成長できるか否かわからない、不確実性が非常に高いタイミングで、リスクを取ってジョインしてくれたメンバーに対するインセンティブです。
社員が100人のタイミングで、一定の形ができているスタートアップに入るのと、社員が0人の創業期に入るのは、まったく意味合いが違います。
ゼロイチフェーズのストックオプションと呼べるかもしれません。
検討すべきは、創業メンバーを何人までと定義するか。
10人か、20人か、30人か。
例えば、3%を10人で割れば、一人当たり0.3%、30人であれば0.1%です。
金銭的インセンティブとして、説明次第では十分に魅力をもたせることができます。
創業リスクストックオプションがないスタートアップもありますが、自分はそのスタンスにはNoです。
「お金じゃない」みたいな議論をされると興ざめです。
リスクのないところにリターンはありません。
貢献度ストックオプション
創業リスクストックオプションがゼロイチフェーズのストックオプションだとすると、貢献度ストックオプションはイチジュウフェーズ(1→10)もしくはイチヒャク(1→100)フェーズのストックオプションです。
PMFした先でグロースしていく中で、各メンバーの貢献度に応じて配られるストックオプションです。
シンプルなルールは、等級制度と交差させること。
上位等級ほど会社への貢献度が高いとみなします。
等級に応じた配布テーブルを設計し、半年や1年ごとに機械的に配ります。
期中入社者はどうするか、昇格者はどうするか、休職者はどうするか、など細かいルール設計は必要ですが、メンバーにとってもわかりやすい仕組みです。
この等級基準の貢献度ストックオプションは、等級制度に対する監視機能も高めてくれます。
ストックオプションに連動するので、個人の等級判定に対して意識が厳しくなります。
「なぜ、あの人が5等級なの?」とメンバーから言われないよう、経営として制度運用に責任を果たすことが求められます。
なお、自然と勤続年数が長い方への配布割合が高まる点も合理的ですが、一方で等級が適切でない場合、経営の意向とは異なるストックオプションの分配になってしまう点は注意が必要です。
より制度にこだわると、等級軸にさらに評価軸を加えて「上位等級でかつ評価が高い場合に多くストックオプションが配られる」とするケースもあります。
2軸になることでやや複雑にはなりますが、下位等級でも評価が高い場合に報いることができたり、上位等級でも評価が低ければ分配を抑えることもできます。
もちろん、評価制度を適切に運用できていることが前提ではありますが、、、
採用ストックオプション
最後に採用の武器としてストックオプションをプールさせておきます。
経営層、いわゆるCXO採用やエンジニア職のVPレベルなど、採用難易度がとても高いポジションについて、給料+ストックオプションでオファーできるように、会社として準備しておきます。
この考え方を持つと、そもそも重要ポジションが何で、自社で採用しにくいポジションに対する理解も深まります。
また経営層に対する株式報酬の概要設計をぼんやりとイメージするため、いざ、そのタイミングが来た際に具体的なオファーができるようになります。
論点がシャープになるため、問いも浮かびやすく、先輩経営者に質問もしやすくなるでしょう。
スタートアップの急成長に多大な影響を及ぼす創業者以外の経営人材には、自信をもって報酬オファーすることが大切です。
資本政策の問題はありながらも、ここでケチる組織は、、、
シンプルにその会社に賭けるなら、みんなで賭けて、みんなで儲かりたいですよね。
自分はスタートアップの経営者ではありませんが、この考え方に異を唱える人はなかなか少ないと思います。
重要ポジションを任せられる経営人材には、報酬でも報いるのは当然ではないでしょうか。