新書が好きです。
文庫よりも少し縦長ですが、コンパクトで知が豊富に入っています。
いつか新書を書いてみたい、という目標もあります。
新書の紹介です。
その名の通り、定年の話、シニア雇用の話、老後の話。
20‐30歳代の方には、遠い将来のテーマであり、40歳ぐらいから考え始めるテーマかもしれません。
ただ、今回、この新書で紹介したいのは、副題の部分。
『定年いたしません! -「ジョブ型」時代の生き方・稼ぎ方- 』です。
著者の梅森氏は、外資系の人事部長経験者で、ジョブ型のことが記載されていました。
”新書らしく”、簡便にまとめられた内容なのですが、自分にとってぼんやりとイメージしていたことが現実にどのように動いているのか、について非常に参考になりました。
こういう書籍は、ネットでは購入に至りません。
書店で立ち読みすると、意外なところで発見が起きるものです。
スタートアップの人事制度は、ジョブ型とメンバーシップ型の両方の要素が入っており、パキっとわけられるものではありません。
そうした際、スタートアップで組み入れるべきジョブ型の要素が、うまい具合に紹介されており、なるほど、と膝を打ちました。
最終章を含めて、全7章で構成されている本書ですが、自分がスタートアップの人事関係者の方に読んでほしいのは、第3章の「「給与格差」時代」です。
外資系のジョブ型人事制度で、どのように個人の報酬が決定されるのか、について著者の経験が語られています。
ざっくりと説明すると、以下の通りです。
- ジョブ型では、職務に紐づけられたジョブグレード(等級)に、給与レンジも紐づき、その範囲内で会社と個人の業績に応じて給与が決定する
- 毎年、外資系コンサルの報酬分析調査を行い、データでマーケットデータを整備して活用する
- 成績評価に応じた昇給とインフレーションを考慮した昇給がある
- 評価が高く、会社の利益も出ていれば、給与レンジ内の上限まで昇給する
スタートアップで試行錯誤しながら、人事制度を改善してきた方であれば、こう感じると思います。
「うちと同じじゃん」
そうなんです。
スタートアップの皆さんは、外資のジョブ型人事を行っているのです。
「ジョブ型にしないとダメか」と思っていた気持ちを払拭できると思います。
また、次の文章は、ニュアンスも伝えるため、引用させていただきます。
つまり、「そろそろ昇格させるか。十分に経験も積んできているし・・・」といった、「日本型」でよく耳にする「昇進」「昇給」、そして「昇格」はありません。
ですから、これからのあなたは、好むと好まざるとにかかわらず、年齢を重ねるにつれて上がる前提の「職能給」ではない、「職務給」に基づいて報酬が支払われる世界に、足を踏み入れる(もしくは踏み入れた)のだといえます。
これが「外資型」における他社と自社との、さらには自社における他者との「給与格差」の実際なのです。(P104 )
再び「うちと同じじゃん」と思った方と「いや、うちも運用が甘くなっているかも。このままだと外資型ではなく、職能給になってしまうかも」と思った方でわかれると思います。
職務給は、仕事が変わらないと給与レンジが変わりません。
職能給は、仕事が変わらなくても、能力が上がれば給与レンジは変わります。
さらに言えば、年功序列のケースでは、仕事や能力が変わらなくても、年齢・勤続年数が増えれば給与レンジは変わり、年収は上がっていきます。
決して「仕事が変わらないと年収が上がらない(仕事が変わらないと昇給しない)」ではないのが職務給です。
ここが勘違いしやすいポイントです。
この第3章を読むと、外資型って意外と今の自社でもできているんじゃない、という観点と、ここは運用が甘くなっているかもしれない、という観点を振り返るのに、よい内容だと思います。
著者の経験から導かれたワーディングゆえ、現実を踏まえた知見であり、「そうだよね」とか、「なるほど」とうなづく箇所が多々あります。
最後に、もう1ヶ所だけ引用します。
外資系コンサルの報酬分析調査についてのやり取りが、「だよねー」と妙に納得してしまいました。
ややこの運用スタイルで不安になっている部分もあったのですが、この一文で自信がもてたことを告白します。
もっとも、そのマーケット・データを人事担当者以外が実際に目にすることはおそらくありませんから、それが本当に「競争力があるものかどうか」はブラック・ボックスの中にあるわけです。
とはいっても、実際に競争力のない報酬を支払っていては、よい人材は採用できませんし、何より競合他社へと転職されてしまいますから、その謳い文句には、おおむねウソはないと思われます。(P100)
こうなんですよね、実際は。