例えば、営業職から採用職に異動する際、年収はどうなりますか?
維持?
下がる?
上がる、ということは基本的にはないと思います。
これまで見てみたパターンを整理します。
パターンA:維持
特に変更なしのパターンです。
等級も変わりません。
等級要件が全職種共通で設計されており、基本的な職務遂行能力で定義されています。
多くの維持のケースは、会社都合で異動を推進しています。
「維持」にしないと、報酬起点で異動施策が進まないためです。
一時的にパフォーマンスは下がるかもしれませんが、配置や育成を理由に投資されていると理解されます。
パターンB:下がる
異動先の等級要件に照らして格付けを行い、格付けされた等級の報酬レンジで年収が決定されます。
年収が下がることがあります。
このパターンでは、本人の意思で異動を推進します。
本人が年収ダウンを厭わず、それよりもその会社で新しい職種にチャレンジしたい場合に成立します。
会社都合での異動を推進することができないため、経営・人事としては難易度の高い人材マネジメントです。
人をコマとして扱わず、実力主義を徹底しようとするスタンスを感じます。
パターンC:期間限定で下げない(調整給を支給)
本来、パフォーマンスが下がるのであれば、年収ダウンを仕方なしです。
しかし、そうすると異動を前向きに検討することができなくなってしまいます。
それで良しとするのが、パターンBですが、パターンAでは実力主義に反するとした場合、その中間に位置づくのがパターンCです。
異動後の職種で、異動前の年収相当のパフォーマンスまでキャッチアップする期間を決めて、その期間のみ異動前の年収が下がらないように調整します。
例えば2年とか、3年とか。
もし、その期間でキャッチアップできなければ年収はダウンします。
期間次第ではあるかもしれませんが、いい塩梅の調整策だと思います。
なぜ、パターンBが採用されないのか?
多くの会社はパターンAもしくはパターンCだと思います。
パターンBは、採用されない理由は、異動に対する会社の考え方です。
異動を会社都合で推進する前提であれば、パターンBにはできません。
さすがに、それは問題です。
しかし、これだけ人材不足で、今後のそのトレンドが大きくなっていく中で、会社都合の異動というものをいつまで継続するのでしょうか。
異動の効果を否定するつもりはありませんが、他人に勝手に決められる話ではないと思います。
人が尊重されていない人事施策の代名詞だと思います。
自律的なキャリアと叫ぶなら、会社都合の異動もやめるべきだし、本人の意思で判断させるべきではないでしょうか。
よっぽどこの異動制度の方は難易度は高く、この制度を設計・運用できる経営・人事の市場価値は高まるはずです。
短期的には、パフォーマンスも年収も下がるかもしれないけど、中長期的には上がり幅の可能性が生まれます。
しかし、異動を積極的に行っている会社でも、こうならないケースがほとんど。
なぜなら、会社が異動を(ほぼ勝手に)決めているからです。
自分で決めるからこそ、その責任を果たそうと逆境を乗り越える力が湧いてきます。
人会社がキャリアを決めるって、親が進路を決めるのと同じように見えてしまいます。
社員を子ども扱いする時代は、いつ終わるのでしょうか。
(もちろん自分は、パターンBを推奨し、中庸としてパターンCを取り入れていきます)