「リモートワーク」から「出社」に変わる会社は、何を考えているのか?

Amazonがリモートワークから出社に変わったという記事が出ていました。

リモートワークの議論のなると「生産性」の話がフォーカスされますが、自分はそこが論点だとは思っていません。

 

リモートワークの目的

様々なクライアントと仕事をする中で、リモートワークについても議論することが多々あります。

各社悩みを聞いていると、無意識的に議論が進んでいる印象があります。

 

特に、その目的についてです。

自分なりの整理すると、リモートワークの主目的は「採用」です。

採用競争力を高めるというか、他社がリモートワークを取り入れている以上、自社もリモートワークにしないと採用でビハインドしてしまうという意識が強くあります。

特に優秀な人材を採用するために、リモートワークのニーズを無視できないと。

 

そこに「リモートワークにしても生産性は下がらない」といった好都合な研究や提言が耳に入ってくると、リモートワークの流れがさらに助長されます。

カラーバス効果が働いていると思います。

 

しかし、冒頭のように有名企業が出社回帰を宣言すると、「本当にこのままでいいのか」と疑うようになります。

何となく、出社回帰の気持ちがわかるからです。

 

「採用」に自信のある会社はリモートワークではない

リモートワークの主目的は「採用」であり、「生産性」や「創発」を組織的に高めることではありません。

後者を強く追い求める場合、経営における出社のニーズは高くなります。

 

論点は、自社の採用競争力です。

生産性や創発を求めてリモートワークを一部廃止したとしても、優秀な人材を採用できるのであれば、思い切って廃止の方向に舵を切るでしょう。

しかし、多くの会社はそうはいきません。

 

スタートアップでは、採用が企業成長のすべてである一方、報酬や福利厚生で自社の魅力を訴求することは難しいのが現実。

さらに働き方の観点で、リモートワークをなくすことは、自社の魅力を下げる要因になってしまうと考えるでしょう。

ゆえに、一定の規模に成長した組織では、リモートワークがデフォルトになっています。

 

個人の意見としても、リモートワーク「だから」といって生産性が上がるとは思いません。

移動時間を削減できたとしても、その分、労働時間の総量が増えるわけではありませんし。

生産性が上がる仕事や現場があるのは事実ですが、その仕事や現場が企業成長の競争優位には見えていません。

 

1つ補足しておくと、当たり前ですが、出社・リモートワークの文脈とオンライン商談などのオンラインの活用は別ものということ。

こういった話をすると、リモートワークやオンラインのすべてを否定しているような立場に見えてしまいますが、効率の観点で言えばリモートワークやオンラインは最大限活用すべきと考えています。

しかし、すべての仕事、特に創発が求められるクリエイティブな領域において、リモートワークが最適かと言われると、そうではないという立場です。

 

優秀な人材もリモートワークの限界を感じ始めているのではないか?

リモートワークが定着し始めて、2‐3年といったところでしょうか。

この恩恵をまず最初に受けたのは、優秀な人材層です。

ある程度のスキルと経験があれば、リモートワークでも仕事を捌くことに問題はありません。

時間の使い方もうまいし、人口密度の高い都心を離れ、自然豊かな土地へと移住し、職住近接の環境で気持ちよく仕事ができます。

処遇も変わらない、もしくは採用の間口が広がったことで上がっているでしょう。

 

ただ、2‐3年過ぎて、そういった環境にも慣れてきて、結果、物足りなさを感じている部分もあるのはないでしょうか。

リモートワークによるメリットを明確に感じる一方で、言語化できないデメリットもしくは副作用を感じているように思います。

この「言語化できない」は、見逃せないポイントです。

容易に言語化できないからこそ、他社・他人がマネできないわけであり、競争優位の源泉になります。

 

なぜ、出社なのか。

なぜ、対面なのか。

なぜ、リモートワークではダメなのか。

恥ずかしながら、自分も本質的な部分を自信をもって言語化できません。。。

 

話が少し横にそれました。

要するに「優秀な人材がリモートワーク(正確にはフルリモートワーク)にこだわらなくなってきた」という仮説をもっています。

だから、ある程度、採用競争力の高い会社では、リモートワークを一部廃止して出社回帰の流れになっている、という意見です。

リモートワークを一部廃止したとしても、優秀な人材を採用できる状況に変わってきたのではないでしょうか。

 

もちろん、リモートワーク全面廃止ではなく、個人の都合に応じてリモートワークは許容されています。

家族の事情や交通機関の問題など、自分のとって最適な場所と時間を選び、パフォーマンスを高めていくよう、個人の裁量が渡されています。

リモートワークは不可ではないけど、原則は職場という空間に集まり、創発を起こそうという話です。

優秀な人材層も、自身が納得できる業績・成果をチームで残そうと思えば、フルリモートワークが足かせになると考えているかもしれません。

 

出来上がったビジネス領域を回している企業であれば、リモートワークを継続していくことが効率的だと思いますし、社員の満足度も高まると思います。

しかし、そのような環境ではないと考える方々にとって、リモートワークの是非について検討すべきタイミングが、この先1年ぐらいでドッとやって来るのではないか、と予測してみました。

 

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