等級制度の議論で、思いのほか盛り上がるのが個人の等級公開です。
ノールックで「公開でいいんじゃない」と決まるケースもあれば、組織一丸となって公開すべきか否かを議論し、メリット・デメリットに話題が飛び、「公開されると、あの人が可哀そう」という同情論にまで飛び火します。
それが個人の等級公開です。
一方、評価制度の設計のわりに議論になるのが、ウエイト設定です。
自分の設計ではウエイト設定を必須とはしていません。
ただし、複数ある目標のうち重要(主要)な目標についてマネージャー(評価者)とメンバー(被評価者)で認識を揃えてほしいと考えています。
どの目標に注力すべきか、はお互いに共通認識をもっている状態で日々の活動に取り組んでほしいという意図であり、一つ一つの目標に対して50%や30%、低くて5%といったウエイトを設定する必要はない、と考えています。
必要ないと考えている理由は、期初のタイミングでその先6ヶ月などの評価期間における成果をすべて洗い出して決めきることが難しかったり(スタートアップこそ、状況は常に変わるので)、10%や20%などの微細な数字を調整するコストを省きたいという思いがあります。
自分が重視したいのは、どの目標(成果)にフォーカスすべきか、です。
例えば、5つ目標がある場合、どれが最も重要なのか、をしっかりと認識合わせしたい、という意図です。
他の4つについては、重要度の高低はありながらも誤差だと割り切っている部分はあり、それは口頭でのコミュニケーションで擦り合わせれば問題ないと考えています。
一方、パーセントに基づくウエイト設定を運用する場合、合計100%になるように目標の重みづけを行います。
この相対作業を、社員全員にやってもらうコストが本当に必要なのか、懐疑的です。
ウエイト設定は、「どの目標が重要か?」という話よりも「この目標であなたを●パーセント評価します」と評価に対する期待値調整をしているように感じます。
まったく必要なことではないと思いますが、目標がクリアに見えていない状況で、どこまでウエイト設定にコストをかけるかは悩ましいところです。
ただ、自分は「絶対にウエイト設定をしてはいけない」とか「ウエイト設定は本質的に悪」とは言っていません。
制度として全員に強制する必要はない、というスタンスです。
なので、人によって目標別にウエイト設定してもいいですし、期によって設定したり、しなかったりも有りです。
ただし、評価システム(評価シート)上に既定の入力欄としてウエイトを設ける必要はないと主張しています。
もちろん、過去にウエイト設定する目標設定型の評価制度を設計したことはありますし、スタートアップでなければ、今でもその方法で設計することはあると思います。
そうしたウエイト設定型の評価制度について、運用までサポートしたことも多々あるのですが、よくこんな会話を聞きました。
①「期初に定めてウエイト設定が、期末だと変わっていた(けれども期初のままのウエイトで評価しているので、やや評価にズレがある。調整したい)」
②「重要な目標ではないけど、目標に書かれていないと自分の仕事ではないという話になってしまうので、5%のウエイトで目標に入れた」
③「5%しかウエイトがないので、この目標はまったく着手されなかった」
④「ウエイト設定のガイドラインやルールってありますか?」
⑤「(評価者に対する評価者が期末の評価調整会議で被評価者のウエイトを確認して)そもそも、期初のこのウエイト設定が間違ってたんじゃないのか?」
こういう経験をたくさんしてきました。
ウエイト設定はロジックとして正しいのかもしれませんが、だからといって納得感を醸成したり、実際の成果創出をドライブする制度とは言えません。
どうしてもウエイト設定というのが「言った・言わない」をなくすためのコミュニケーションツールになってしまっているように感じてしまい、そういうややこしいのは辞めようよ、というスタンスで制度設計に向き合っているのかもしれません、自分が。
まったくもってウエイト設定を否定しているわけではないのですが、「絶対に必要」といった意見がなければ基本的に設計提案はしません。