56年前の新書を手に取ったら

日帰り入浴で立ち寄った、とあるホテルのロビーに本がありました。

その名も『自己啓発』。

著者は、青木武一(アオキ タケカズ)。

タイトルが直球で面白かったので、手に取ってみたところ、初版は昭和43年10月31日。

1968年です。

2024年 – 1968年 = 56年前です。

 

最も衝撃的だったのは、その「まえがき」。

以下、引用です。

 

入社して早々「しめた、これで大会社に入った。あとは年功序列のエスカレーターに乗ることとして、仕事のほうは大いにサボってやろう」と考える人はまずいないでしょう。それが二年たち三年たつうちに、だんだんとくさってきます。ちょうどこのビジネス新書が主要読者対象として狙う入社後二~五年の人々が、ちょうどくさりごろ(まことに変な表現で恐縮ですが)にあることは、いろいろの調査結果で示すところであります。

 

かなりパンチの効いた表現です。

「くさりごろ」って。

本当に「変な表現」です。

「いろいろの調査結果が示すところであります」の調査結果はわかりませんでしたが、どんな調査結果から「くさりごろ」であることがわかっているのか。

表現から時代性を感じるまえがきです。

 

そして、何より驚いたことに、56年前の時点で「年功序列」を使って(ハックして)、仕事をサボってやろうという考え方が示されてること。

1968年の時点で、年功序列は今と同じように利用されていたということ。

強い副作用はわかっていながらも、その分の利益を得ていたため、利用され続けていたということでしょうか。

ビジネスが伸びている時代であれば、デメリットよりもメリットが総合的に大きく、受け入れられていたことがわかります。

 

しかし、今、その年功序列も変わるタイミングになってきました。

にっちもさっちもいかなくなった「大会社」(「大企業」とは言わないんですね)は、年功序列を少しずつ削っていると思います。

まだまだ体幹は、年功序列そのものですが。

 

年功序列であろうが何であろうが、入社したら安泰で、サボっても大丈夫という意識を醸成してしまうことが問題です。

(誰もがサボろうとしているわけではないですが)

であれば、年功序列であろうとも、この意識醸成を阻み、行動面で緊張感を持てるような風土や制度をつくることが大事だと思います。

 

年功序列という分かりやすい病に目を向けすぎると問題を見誤るかもしれないと気づきました。

 

まさかホテルのロビーでこんな気づきを得るとは思いませんでした。

なんでこんな本がここにあるんだろう。

 

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