昇格者の年収を決める際、人事が評価者に問いかける5つの質問

昇格した際、報酬レンジが昇格後の等級に変わります。

報酬レンジの設計が階差型であれば、自動的に昇格メリットが昇給に反映されますが、多くのスタートアップでは重複型もしくは接続型でレンジを設計されているため、昇格時にプラスアルファの昇給分をアドオンさせる運用をしなければなりません。

そのとき、いくらぐらいの昇給をアドオンするか、つまり昇格後の年収をどの水準に設定するか、評価者は迷います。

 

人事から評価者に、次の5つの質問を問いかけてみましょう。

少しずつ道がひらけていきます。

 

(1) 昇格者が改めて入社するとした場合、オファー年収はいくら?

市場価値(市場メカニズム)を考慮した観点です。

現在の年収が、現職の年収と捉え、改めて自社に入社する場合、オファー年収はいくらを提示するでしょうか?

過去に入社したタイミングと会社のフェーズが変わっている場合、アドオンの昇給額は大きくなるかもしれません。

 

(2) 昇格者は、昇格後の等級において、どの程度の人材レベル?

ざっくりとした人材評価を行います。

昇格後の等級を3段階(低・中・高)の分割して、昇格者は新等級でどの辺に位置づくか?

多くのケースは昇格後の等級の「低」、つまりその等級での初任ポジションかと思いますが、中途採用であるがゆえ、オファー時の等級判定がズレている場合、昇格したタイミングで既に「中」程度の実力であるケースもあります。

その際は、報酬レンジの中間ぐらいまで年収を上げていくこともOKです。

 

(3) 過去の昇格者の実績は?

過去の実績を見渡してだいたいどれくらいの年収に設定しているか、というデータをまとめていきます。

例えば、4等級から5等級への昇格者の場合、報酬レンジの下限は800万だけど900万で設定しているケースが多いとします。

この場合は、会社として5等級の水準を900万と暗黙的に定義している可能性もあり、1つの参考情報とします。

だからといって下限を900万にすぐに修正する必要はありません。

制度と運用の差分を受け入れるという意味合いです。

 

(4) 他の同じ等級のメンバーと比較すると?

「(2) 昇格後の等級において、どの程度のレベルか?」に近い考え方ですが、昇格者と同じ等級になる方々を比較して、その年収水準にあたりを付けていきます。

「昇格者のAさんは、同等級のBさんと同じくらいの実力・貢献であることが見込まれるので、Bさんと同じ水準まで年収を上げていいのでは?」といった会話がなされます。

そもそもBさんの年収水準が妥当なのか?という判断は必要ですが、比較することで年収水準の目安が見えてくることは確かです。

 

(5) 昇格後、さらに昇格する場合にどれくらいの滞留年数を想定し、どれくらいの昇給余地を設けておくか?

これは少し難しい観点なので、腹落ちしない場合は無視していただいても構いません。

 

このように考えるケースもあります。

例えば、3等級から4等級に昇格した場合、さらに「5等級に上がるまでにどれくらいの期間がかかりそうか?」を考えます。

この「期間」が4等級に滞留する年数(滞留年数)です。

仮に4年と置きましょう。

年1回の昇給であれば理論上4回の昇給機会(休職などで昇給は無い可能性もありますので「理論上」と書きました)、年2回の昇給であれば理論上8回の昇給機会となります。

この4‐8回の昇給を実施した場合、2‐3回の昇給を行った後、年収が報酬レンジの上限に到達してしまい、昇給が止まってしまうと評価者としては給与に関するコミュニケーションが難しくなります。

なので、想定される滞留年数に合わせた昇給余地を残しておくということです。

 

ただし、どれくらい昇給するのかもわかりませんし、滞留年数も仮説、そもそも昇給できる企業体力があるかどうかも未知です。

つまり、変数が多い。

ゆえに、こんなことを考えても意味があるのか、と思われるケースもあります。

その場合は、この観点を無視してOKです。

 

ただ、人事マネジメントに長けているマネージャーや企業というのは、こういう未知の事柄に対する仮説づくりがわりに好きで、得意だったりします。

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