「スキル」を報酬に反映する場合、評価制度ではなく、等級制度に反映したい

能力や行動より具体的に定義される「スキル」を、人事制度に組み込み、最終的に報酬へ反映させることがあります。

注意したいのは、評価制度では等級制度で評価することです。

 

評価制度における人事評価は、評価期間ごとに結果はリセットされる

例えば、評価期間を6ヶ月とした場合、成果評価において期初に目標設定して期末に結果を評価したり、行動評価において規定の評価基準を定性的に評価します。

そして、翌期の6ヶ月も同じプロセスを繰り返します。

目標設定型の成果評価では、最高評価の次に最低評価になることもあります。

一方、行動評価は、成果評価に比べてブレは少ない方でしょう。

 

このとき、スキルを行動評価に近い定性評価で行ってしまうと、下がることが少なく、積み上げ式の評価になりがちなため、一度高評価を取るとその状態が続いてしまうことが起きます。

スキルは、能力評価や行動評価に比べて、限定された場面における技能が中心の評価のため、評価のブレが少ないのです。

そのため、人事評価を昇降給に反映するケースが多く、このスキル評価の場合、昇給がインプレする傾向になり、注意が必要です。

 

等級制度における等級判定であれば、スキルを積み上げで報酬に反映できる

評価制度上の人事評価ではなく、等級制度上の等級判定であれば、スキルを積み上げで評価できるため、前述のインプレ問題は起きません。

上位等級に昇格するために必要なスキル要件を幅を持たせて定義することで、要件をクリアした場合に昇給し、報酬に反映させることができます。

また、人事評価と違って等級判定は毎期ごとに全社員を対象にして実施する必要はありません。

公式なプロセスで判定を行うのではなく、マネージャーとメンバーでスキル要件を擦り合わせながら、伸ばしていきたいスキルを明らかにしていきます。

スキルをポイント化して、例えば3等級は30ポイント以上、4等級は40ポイント以上と精緻に設計していくこともできますし、4等級はスキルをメンバーに教えられる、5等級はスキル要件を設計・更新できるなどと抽象的に表現することも可能です。

 

スキルの運用は、メンテナンスに負担あり

数は少ないですが、過去にスキルを人事制度に組み込み、運用してきた経験から述べると、スキルはメンテナンスコストが高くなりがちです。

というのは、制度設計のタイミングでスキルを定義しても6ヶ月や1年後に更新する必要が出てくることが多く、スキル要件を修正、追加、削除したりします。

また、更新の度合いが大きいと既存の対象者の再評価(再判定)を実施することもあり、ましてやそこで等級が変わってしまうと、報酬を調整する必要も出てきます。

これが想像以上に大変です。

 

メンテナンスに対するニーズや声も多く、スルーすることもできません。

またスキル要件を定義するには、その職種において専門性が高く、マネジメントの観点で物事を考えて語れる人材が必要です。

信頼できる方がいて、要件定義を任せられるのであれば問題ありませんが、そうでないとそもそもスキル要件をつくることもできなかったり、つくってもらったものの、会社が抱く評価と現場の評価に乖離が生じてしまうこともあります。

人事も、その道の専門性がないゆえ、スキル要件に対するフィードバックがうまくできません。

 

能力や役割といったカテゴリよりも具体化されるスキルは、設計者がより重要になります。

信頼できる設計者がいないタイミングで、拙速にスキル評価を導入しても、うまくいく組織(職種)とうまくいかない組織(職種)がわかれてしまい、人事制度への不満につながりやすいので、注意したいところです。

 

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