新人事制度を、評価者(マネージャー)から適用していく理由

人事制度を改定する際、シークエンス(順番)が重要です。

まずは、評価者であるマネージャーから適用していきましょう。

 

なぜ、評価者から適用していくのか?

評価者に、評価の温度感を肌で理解してもらうためです。

もう少し具体的に述べると、評価者自身に対する上長の評価を認識してもらい、FBを経験することで、評価者の配下のメンバーに対する評価の目線を揃えるということです。

この順番が意識されないと、①評価者がメンバーに対する評価を実施・FB、②評価者の評価者(≒経営陣)が評価者に対する評価を実施・FB、という流れになります。

 

新人事制度について説明・研修を受けたとしても、例えば人事評価や等級判定などはやってみないと、その難しさはわかりません。

やってみて、基準の修正をかけることもあるでしょう。

 

暗中模索の中で、評価者の評価は甘くなりがちになります。

自分だけ評価が辛くついてしまっては、損をするという感情が出てくるので(良い悪いは別として)、まずは甘めにつけて、調整がかけられれば評価を下げればいいと考えます。

この感情は、人として正直素直ではありますが、FBされる被評価者の立場からすると、できていると思っていたら、できていないと言われるなど納得感の低下につながります。

この状態は避けなければなりません。

 

そこで、順番の概念です。

まず評価者に対して新人事制度を適用します。

通常のピラミッド組織であれば、メンバーよりも評価者の数は少なく、統率は取りやすいと思います。

例えば、新評価制度を実施する際、まず経営陣で評価基準を擦り合わせ、評価者に対する評価を行います。

会議体を設置し、全評価者の評価を見ながら、目線の擦り合わせます。

このとき、会社における真の評価基準が形成されます。

ここで議論された結果と評価の理由・内容を評価者へフィードバックすると、評価者が自身の評価・FBを通じて、真の評価基準の一端を把握できるようになります。

ここがポイントです。

この真の評価基準の一端を把握した上で、評価者がメンバーに対する評価を行うことで、評価基準や温度感が経営トップから連鎖されていくのです。

 

きれいごとに聞こえると思いますし、私もきれいごとは好きではありません。

しかし、きれいに連鎖していきます。

 

話は逸れますが、人事評価系の本やマネジメント系の本に「目標の連鎖」という言葉を見かけます。

経営トップから目標を連鎖させよう、ということです。

当たり前すぎるので、この言葉に価値はありませんし、「で、どうやる?」といった点に言及されていることはありません。

まず第一に抑えておきたいことは、目標設定の順番です。

全社目標や部門目標が設定されてから、各チーム、個人への目標設定へと流れていきますが、大事なので、上位層の目標を確定すること。

チーム長の目標が確定していない段階で、個人の目標設定に進んでしますと、「確定」における目標の押し引きのニュアンスはチーム長にはまだない状態ゆえ、メンバーの目標設定も甘くなったり、曖昧になったりします。

スタートアップでは、目標を期中に修正しながら、この状態で進んでも何とかやっていけますが、期中に目標設定が硬直化するケースでは、注意が必要です。

 

あまり意識されない順番の概念。

人事制度の設計・運用における「プロセス」の概念として議題になりますが、ここまで意識して制度や運用を設計できると、他社と同じように見える制度・運用でも、まったく別モノになります。

 

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