スタートアップで「サインアップボーナス」を支払うケースが一般的になってきたと感じています。
サインアップボーナスとは、入社時の一時金ですが、何のために支払っているのか、を言語化しておくと支給額を決定する際のポリシーに役立ちします。
①採用競合と年収を競り合うため
自社のオファー額が1000万、採用競合が1100万、だから不足分の100万をサインアップボーナスでやり繰りする方法です。
報酬面が採用の足を引っ張らないように、固定給ではなく一時金で対応するケースです。
採用場面で臨機応変にサインアップボーナスが使える反面、金額が採用競合に依存するケースがあるため、本来の人材価値以上の支払い額になってしまうこともあります。
②入社に対するお祝い金として
採用競合とは関係なく、オファー額に上乗せされるのが、入社一時金としてのサインアップボーナス。
自社のルールを定めて一律の基準で支払ったり、個別に金額を検討して支払ったり。
スタートアップよりは、比較的、大企業・メガベンチャーで使われれている手法に思います。
入社に対するお祝い金といった言い方をするようなケースもあります。
目的としては、自社の採用力を上げることですが、バラマキになってしまうケースもあるので、支給対象や支給額のルールは決めておけるといいでしょう。
③年収の激変緩和措置(税金等への対応)
転職に際し、年収が下がる場合、その差分をサインアップボーナスとして支給します。
目的は、前年度の所得に応じて決まる税金や直近の生活における支払いに対する激変措置です。
競合他社や採用市場ではなく、本人の報酬額を基準にサインアップボーナスの金額が決まります。
スタートアップへの転職時に年収がダウンすることがありますが(以前に比べるとだいぶ頻度と額は減りました)、ダウンすることで困るのは入社後の生活や支払いの場面です。
そこで、ダウンする分を補填することで、約1年はこれまでの報酬水準を維持できるようにして、その1年の間に新しい報酬での生活水準を構築してもらう狙いがあります。
固定費を削ることは難しいかもしれませんが、変動費を徐々に倹約するなど報酬水準と生活水準をフィットさせていきます。
単に採用数を伸ばすためにお金をばらまくような施策とは異なるため、既存社員の方々にも説明しやすく、納得感が低くなることも少ないと思います。
意見
スタートアップの立ち上げ期に相応しいサインアップボーナスは、③の激変緩和措置だと考えています。
入社後の活躍を、報酬面・生活面からサポートする施策であり、採用候補者の不安を緩和できます。
①の採用競合との競り合いだと、他社が想定以上の金額でオファーした際に自社の悩みは尽きませんし、②のお祝い金も限られた資金を使う策としては、やや短絡的であるようにも感じます。
また、①と②は継続性や拡張性の観点でも、いつまでやるのか、は常に議論になりがちで、職種や部門によっても採用のニーズや市場が異なる中で一律の検討が難しく、議論が対立することも想定されます。
そういう意味では、③は自社の報酬水準(オファー水準)が上がってくれば自然と使用頻度は下がってくるし、一方で報酬の高いスタープレイヤーへの補填策として柔軟に発動することもできます。
継続性や拡張性、そして組織の納得感という観点に、自分なりの説得力を感じています。