リーダーが行うべき「失敗のマネジメント」の比喩、『どちら側に転ぶべきか』

雑誌を読んでいたら、これ最近どこかで同じようなことを見たな(読んだな)と感じることはありませんか。

たまたま、先日、失敗の仕方について類似のメッセージを読んだので、それをメモ。

 

まずは、HarvardBusinessReview2024年5月号、リクルートホールディングスCEOの出木場氏。

リーダーの仕事は、失敗させないことではなく、失敗の仕方をコントロールして、失敗の総量をマネジメントすることだと思います。子どもに自転車の乗り方を教える時、漕ぎ方をどれだけていねいに伝えてもできるようにはなりません。実際に乗り、転び、なぜ転んだか考えてまた挑戦するという経験を積ませる必要があります。ただ、転ぶ経験を公園の中でさせるか、それとも国道の横でさせるかには大きな違いがあります。公園の中で転べば、すり傷はたくさんできるかもしれませんが、適切な処置をすればすぐに治ります。でも車がたくさん走る道の横で一度でも転んだら、命に係わる大怪我をする可能性があります。個人もチームも実際に失敗してみなければ成長できませんが、チームのリーダーやその上にいる人たちは、自分たちが収拾できない事態を回避するために、失敗の総量をマネジメントすることが大切だと思っています。

https://dhbr.diamond.jp/articles/-/10497

 

「失敗の総量をマネジメントする」って、いい言葉ですね。

本記事は、新しい時代のリーダー論が語られており、大変興味深く読ませていただきました。

スタートアップでリーダーとして活躍中の方には、是非読んでほしい記事です。

 

さて、もう一つは日経ビジネス(No2241)の経営教室より。

マネックスグループ会長の松本大氏が、M&Aを成功させるために大事にしていることの文脈で、自分自身の判断に自信を持つための考え方としてイメージトレーニングについて言及しています。

こちらも引用します。

トレーダーをしていた時、大事にしていたのが「転ぶ時に間違った方向に転ばないこと」でした。例えば、縁石があって右側が車道、左側が歩道で、歩道側には転ぶと痛そうなトゲのある低木が植わっているとします。縁石の上を歩いていてバランスを崩したとき車道側に倒れると車にひかれて死んでしまう可能性がある。歩道側に倒れるとトゲが刺さり、血が流れて痛い思いをするかもしれないが、死ぬことはない。事前にこういた情報が頭にインプットされていれば、人は酔っぱらっていても無意識のうちに歩道側に倒れるでしょう。何も起きていない時から様々なことを知っておかないと、瞬時に反応できない、そういったことをトレーダー時代に体得しているので、私は常日頃からいろんな情報を集め、イメージトレーニングをするようにしています。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00607/051300012

 

前者の出木場氏の話は、自転車に乗る練習ということで、失敗を通じた人材育成の文脈で語られています。

失敗しても取り返しのつく環境を提供し、自ら試行錯誤して成長することをリードしています。

この環境づくりと、敢えて失敗をさせるリードが、失敗の仕方であると理解しました。

 

後者の松本氏の話は、自転車ではなく歩行中の転倒ですが、同じく右か左かの環境を常にイメージしておくことで致命的な失敗を避けることができ、その結果、自分の判断に自信を持つことができると語られています。

 

前者は人材育成や組織マネジメントについて、後者の意思決定プロセスと日ごろのトレーニングについて、わかりやすい比喩を用いて解説されており、似ている内容でしたが、よくよく考えると違った本質が見えてきました。

 

両社とも「先を読む力」、「先見性」と解釈できますが、先を読んだ先に何をやっているのか、まで言及されているので、能力に対して深く考察することができます。

また、どちらにも一定の失敗を許容するスタンスが見えており、チャレンジと不足、そして改善を得た成長というサイクルが常に回り続けていることもわかります。

失敗を拒み、成功体験だけを重ねていると、小さな成長しか遂げることができないというメッセージなのかもしれません。

 

失敗の先にある成功体験も大事ですが、それは1‐2で有り、8-9の失敗体験こそ、本質的な成長につながっているのかもしれません。

 

リーダーとして失敗に対するスタンスを明示することは、組織のカルチャーに強い影響を及ぼすからこそ、失敗の仕方、失敗のマネジメントは意識的に実践していきたいテーマです。 

 

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