組織サーベイは、その会社の特徴や強さを示すと同時に、問題も明確にしてくれます。
心身の健康や人事評価への納得感でスコアが下がっていれば、原因分析と対策に向けた話、そして振り返りは比較的しやすい一方、(全社の)意思決定スピードの早さのスコアが下がっている場合、社内での議論が停滞しがちであることに気づきました。
それはそう、なぜならスタートアップにおける全社の意思決定スピードは経営者・経営陣が主に主語となっているケースがとほとんど。
自分たちの意思決定について「反省」をテーマに振り返ることは苦痛であり、できれば避けて通りたい道です。
それを人事メンバーからの問いによって、原因を特定していくのは至難の業。
そんな場面で読んでほしいのが、本記事です。
原因の主は、トップマネジメントの量と質
意思決定スピードが早い組織と早くない組織を見比べたとき、どんな違いがあるのか。
僕が見てきたケースでは、シンプルなことにトップマネジメントの量と質が違っていたということです。
意思決定スピードが早い組織では、例えば50名ぐらいのサイズで将来の経営幹部候補となり得る人材が5名ほどいます。
1割(10%)といったところでしょうか。
そして、その方々の質(能力、リーダーシップ、専門性、経験、人柄・人間性など)が素晴らしい。
意思決定する場面で、自ら経営の一人として当事者意識をもって対峙することができます。
メンバーは安心してリーダーについていくことができます。
一方、意思決定がスピードが早いとは言えない組織では、同じような50名の組織で、将来の経営幹部候補となり得る人材は2名ほどです。
創業期のリーダー2名でやっているケースもあります。
こういう組織では、問題が起きた際、その2名のリーダー、実際にはCEOが問題解決にいそしみ、「やっぱりCEOは違うな(できる人だな)」という余韻に浸ってしまうことが日常的に起きます。
100名に向けた組織拡張のタイミングで、そのスタイルを貫くことは物理的に不可能になり、トップマネジメントの採用に着手するも、採用がうまく進まず、組織が停滞する場合があります。
これがトップマネジメントの質と量の違いという意味です。
トップマネジメント候補を早めに採用した方がいい理由
30名から100名規模に組織拡張するタイミングでは、どんな組織でも様々な問題が起きます。
メンバーの採用で「ヒトを見極める力」がない組織では、悲惨な問題が起きてしまいますが、まじめに妥協せず、採用に向き合えば、取り返しのつかない問題にまで発展することはありません。
しかし、多種多様な問題が必ず起きるのです。
それに対処するのがトップマネジメント人材です。
30名のときにトップマネジメント人材が採用できていて、この方々に問題解決を任せることで自社のカルチャーや意思決定軸が浮き上がってきたり、トップマネジメント人材の成長を支援する機会にもなります。
もちろん100名だとまったくもって遅いのか、というわけではありませんが、早ければ早いに越したことはないし、時間も空間も密な小規模組織で問題解決に当たれることは「成長」という視点で見れば、贅沢な機会であることは間違いありません。
そして、そうした問題を役割分担できることで経営者の心身への負担も分散でき、俯瞰的に組織を眺めることもできます。
どうしても経営者自身が問題の渦中にいると、本人の特性や好き嫌い、納期によって意思決定がブレてしまうことが懸念されます。
アーリーフェーズでのミスは、負債になりやすいので注意が必要です。
「そんな人、採用できないのでは?」という気持ちが「差」につながる
このような話になると、その時期に「そんな人、採用できないのでは?」と言われることがあります。
確かに難しいです。
しかし、採用できなくはないです。
私は「採用している」ケースを見ています。
そして、そこで「差」がついていることも知っています。
もちろん、そこには運の要素もあるかもしれません。
ただ、そのようなトップマネジメント人材の方とお話していると、そのスタートアップに可能性を感じ、経営陣やメンバーの人柄に惚れてジョインしてくれているということです。
「そんな人、採用できないのでは?」と言っていることは、自社の事業の可能性が不透明で、他社の経営陣やメンバーと比べて人間的魅力が乏しいと言っているのと同義なのかもしれません。
この問題に向き合うことは、自社と自身の深い部分に真正面から向き合うことになります。
生々しい人間味が出てくるところでもあります。
小さく纏まるのか、大きく拡げるのか。
スタートアップが成長できる絶好の機会になることは間違いないと思います。